430 / 893
第十二章
無知ほど怖いものはない
しおりを挟む
さてと……
「芽依ちゃん。このレーザー銃……そこらに置いておくわけにはいかないよな?」
「当然ですよ。ちょっとでも穴が空いたら、周辺が汚染されます」
「僕らが持っていても、邪魔でしょうがないのだが」
「普通は、フッ化水素対策を施した専用トランクに入れて持ち運びするのですが……」
芽依ちゃんは女の子の方を向いた。
「これを保管するトランクがあったはずです? どこにあるのですか?」
「トランク?」
「そうです。普通、これを使うときはフッ化水素漏れが起きた時に、すぐに対処できるよう足下に置いておくはずですが……」
実際、先日のドーム攻防戦で香子が使ったときはそうしていたらしい。
だが……
「え? トランクって、これを入れていた鞄みたいな奴のこと? 重いから武器庫に置いて来ちゃったけど……」
こいつは……
「あなた……これがどんな武器だか分かっているのですか?」
「どんなって? レーザー銃でしょ」
「そうです。そのレーザーを撃つ度に、毒ガスが発生している事は知っていますか?」
「え? なにそれ?」
無知ほど怖いものはない。
芽依ちゃんは頭を押さえ込んで黙り込んだ。
代わりに僕が質問を続ける。
「さっきトランクを武器庫に置いてきたと言ったが、君はレーザーを勝手に持ち出してきたのか?」
「そうだよ。だって、お姉ちゃんは『おまえには十年早い』と言って使わせてくれなかったから……」
ナンモ解放戦線の人たちよ。武器庫の管理はきちんとやっておけ。
「しかし、君はレイラ・ソコロフと一緒に行動していたのだろ? 彼女は君がレーザー銃を持っているのを見て何も言わなかったのか?」
「おばあちゃんには、お姉ちゃんから許可もらったって嘘ついた」
なんて奴だ……
「いいか。よく聞け。この銃から毒ガスが漏れたら、僕達だけでなく君も君の仲間もみんな死んでしまうところだったのだよ」
「ええ!? そうなの? そんなの聞いてないよ」
あなのあ……
「北村さん」
ん? 芽依ちゃんの方を無理向いた。
「今、この人レイラ・ソコロフさんの事をおばあちゃんと言っていましたけど……」
そういえば言っていた。
「ナージャさんの姉妹では?」
え?
「そうだよ。あたいはナージャ姉の妹のキーラ。キーラ・ソコロフ」
確かに、顔が似ている。性格は大分違うが……
「芽依ちゃん。こいつを連行しよう」
「捕虜にするのですか?」
「いや、すぐに解放する」
僕達は、キーラを連れて空中へ飛び上がった。
「ぎゃあ! 降ろせ! あたいをどこへ連れて行く!?」
空中でジタバタしながら、キーラは悲鳴を上げている。
言っておくが、捕虜虐待をしている分けではないぞ。
「キーラさん。暴れると落ちちゃいますよ」
「だから、あたいをどこに連れて行くのさ?」
「北村さん。どこへ連れて行くのですか?」
「さっきの砲兵陣地で解放する」
僕の話を聞いたキーラの顔がさっと青ざめた。
「ぎゃあ! やめろ! 砲兵陣地には姉ちゃんがいるんだあ! レーザー持ち出した事が姉ちゃんにバレたら折檻される!」
キーラにかまわず、僕らは砲兵陣地上空へ飛んだ。
程なくして到着。
スピーカーで地上に呼びかける。
「ナージャ・ソコロフ。話がある」
地上にいたナージャ・ソコロフが上空を向いた。
「また、おまえたちか。何の用だ?」
「捕虜を一人解放したい。今から、下に降りるからくれぐれも銃撃をしないようにしてくれ。僕らは撃たれても平気だが、捕虜はそうはいかない」
「分かった。撃たないから降りてこい」
降りてきた僕らが連れてきたキーラの姿を見て、ナージャは目を丸くする。
「キーラ!? あんたどうして?」
「お……おばあちゃんと、一緒に攻撃に行ったら、捕まっちって……」
「おばあちゃんはどこよ?」
「ええっと……」
「キーラ。ロータスにいた帝国軍は、もう逃げちゃった後なのよ」
「そうなの?」
「今、ロータスにいるのはカルカとリトル東京の軍なの」
軍隊じゃないけどね。
「早くこのことをおばあちゃんに知らせて、戦いをやめさせないとリトル東京とカルカを敵に回しちゃうのよ」
「え?」
キーラは僕達の方を向いた。
「あんたたち、帝国軍じゃなかったの!?」
そういえば、まだ言っていなかったな。
「僕達はリトル東京の者だ」
「ごめんなさい! リトル東京の人だと知らないでレーザー撃ったりして」
分かってもらえればいいんだよ。
だが、今の話を聞いたとたん今度はナージャの表情は険しくなった。
「キーラ。あんた、今何を撃ったって言った?」
「れ……れいざあ……」
「それって、私がリトル東京でもらってきた奴じゃないわよね?」
「それ……だけど……」
「ぬわにい!」
鬼のような表情になったナージャに、芽衣ちゃんがレーザー銃を差し出した。
「これ、お返しします」
「な!? むき出しじゃないの! トランクはどうした!?」
「妹さんが武器庫に置いてきたそうです」
「なんだってえ!?」
「それじゃあ、お返しします」
「ちょ……ま……こんな危ないもの返されても困る」
「私たちも扱いに困っているのです」
「しかし、ガスが漏れたら……」
「応急処置ですが、穴を掘って埋めて置いてはどうでしょう」
「分かった! そうする」
そのまま僕達は、砲兵陣地を後にして再び役所へ向かった。
「芽依ちゃん。このレーザー銃……そこらに置いておくわけにはいかないよな?」
「当然ですよ。ちょっとでも穴が空いたら、周辺が汚染されます」
「僕らが持っていても、邪魔でしょうがないのだが」
「普通は、フッ化水素対策を施した専用トランクに入れて持ち運びするのですが……」
芽依ちゃんは女の子の方を向いた。
「これを保管するトランクがあったはずです? どこにあるのですか?」
「トランク?」
「そうです。普通、これを使うときはフッ化水素漏れが起きた時に、すぐに対処できるよう足下に置いておくはずですが……」
実際、先日のドーム攻防戦で香子が使ったときはそうしていたらしい。
だが……
「え? トランクって、これを入れていた鞄みたいな奴のこと? 重いから武器庫に置いて来ちゃったけど……」
こいつは……
「あなた……これがどんな武器だか分かっているのですか?」
「どんなって? レーザー銃でしょ」
「そうです。そのレーザーを撃つ度に、毒ガスが発生している事は知っていますか?」
「え? なにそれ?」
無知ほど怖いものはない。
芽依ちゃんは頭を押さえ込んで黙り込んだ。
代わりに僕が質問を続ける。
「さっきトランクを武器庫に置いてきたと言ったが、君はレーザーを勝手に持ち出してきたのか?」
「そうだよ。だって、お姉ちゃんは『おまえには十年早い』と言って使わせてくれなかったから……」
ナンモ解放戦線の人たちよ。武器庫の管理はきちんとやっておけ。
「しかし、君はレイラ・ソコロフと一緒に行動していたのだろ? 彼女は君がレーザー銃を持っているのを見て何も言わなかったのか?」
「おばあちゃんには、お姉ちゃんから許可もらったって嘘ついた」
なんて奴だ……
「いいか。よく聞け。この銃から毒ガスが漏れたら、僕達だけでなく君も君の仲間もみんな死んでしまうところだったのだよ」
「ええ!? そうなの? そんなの聞いてないよ」
あなのあ……
「北村さん」
ん? 芽依ちゃんの方を無理向いた。
「今、この人レイラ・ソコロフさんの事をおばあちゃんと言っていましたけど……」
そういえば言っていた。
「ナージャさんの姉妹では?」
え?
「そうだよ。あたいはナージャ姉の妹のキーラ。キーラ・ソコロフ」
確かに、顔が似ている。性格は大分違うが……
「芽依ちゃん。こいつを連行しよう」
「捕虜にするのですか?」
「いや、すぐに解放する」
僕達は、キーラを連れて空中へ飛び上がった。
「ぎゃあ! 降ろせ! あたいをどこへ連れて行く!?」
空中でジタバタしながら、キーラは悲鳴を上げている。
言っておくが、捕虜虐待をしている分けではないぞ。
「キーラさん。暴れると落ちちゃいますよ」
「だから、あたいをどこに連れて行くのさ?」
「北村さん。どこへ連れて行くのですか?」
「さっきの砲兵陣地で解放する」
僕の話を聞いたキーラの顔がさっと青ざめた。
「ぎゃあ! やめろ! 砲兵陣地には姉ちゃんがいるんだあ! レーザー持ち出した事が姉ちゃんにバレたら折檻される!」
キーラにかまわず、僕らは砲兵陣地上空へ飛んだ。
程なくして到着。
スピーカーで地上に呼びかける。
「ナージャ・ソコロフ。話がある」
地上にいたナージャ・ソコロフが上空を向いた。
「また、おまえたちか。何の用だ?」
「捕虜を一人解放したい。今から、下に降りるからくれぐれも銃撃をしないようにしてくれ。僕らは撃たれても平気だが、捕虜はそうはいかない」
「分かった。撃たないから降りてこい」
降りてきた僕らが連れてきたキーラの姿を見て、ナージャは目を丸くする。
「キーラ!? あんたどうして?」
「お……おばあちゃんと、一緒に攻撃に行ったら、捕まっちって……」
「おばあちゃんはどこよ?」
「ええっと……」
「キーラ。ロータスにいた帝国軍は、もう逃げちゃった後なのよ」
「そうなの?」
「今、ロータスにいるのはカルカとリトル東京の軍なの」
軍隊じゃないけどね。
「早くこのことをおばあちゃんに知らせて、戦いをやめさせないとリトル東京とカルカを敵に回しちゃうのよ」
「え?」
キーラは僕達の方を向いた。
「あんたたち、帝国軍じゃなかったの!?」
そういえば、まだ言っていなかったな。
「僕達はリトル東京の者だ」
「ごめんなさい! リトル東京の人だと知らないでレーザー撃ったりして」
分かってもらえればいいんだよ。
だが、今の話を聞いたとたん今度はナージャの表情は険しくなった。
「キーラ。あんた、今何を撃ったって言った?」
「れ……れいざあ……」
「それって、私がリトル東京でもらってきた奴じゃないわよね?」
「それ……だけど……」
「ぬわにい!」
鬼のような表情になったナージャに、芽衣ちゃんがレーザー銃を差し出した。
「これ、お返しします」
「な!? むき出しじゃないの! トランクはどうした!?」
「妹さんが武器庫に置いてきたそうです」
「なんだってえ!?」
「それじゃあ、お返しします」
「ちょ……ま……こんな危ないもの返されても困る」
「私たちも扱いに困っているのです」
「しかし、ガスが漏れたら……」
「応急処置ですが、穴を掘って埋めて置いてはどうでしょう」
「分かった! そうする」
そのまま僕達は、砲兵陣地を後にして再び役所へ向かった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる