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第十二章

式神vs電磁能力者

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 アクロの接近に気がついたエラは、輝く掌をアクロに向けた。

「さっきから、しつこく攻撃してくる式神か。でかけりゃいいというものではないぞ」

 エラはアクロに向かってプラズマボールを連続で放つ。

 アクロの巨体にボコボコとクレーターの様な穴が空いていくが、すぐに再生されてしまった。

「くそ! でかくなったせいで、憑代の位置が……」

 やはり憑代の位置が分からないようだ。まぐれで二~三発は当たるだろうけど、その程度ではカーボンナノチューブの憑代は破壊できない。

 詰んだな。エラ……

「きゃははは! 全然利かないよ。おばちゃん」

 上空からミクがエラをからかう。

「術者は、そこかあぁ!」

 ミクの乗っているオボロに向かって、エラはプラズマボールを放つ。
 
 式神を倒せないなら、それを操っている陰陽師を倒せばいいと考えたのだろう。そのエラの判断は間違ってはいない。

 しかし、アクロを操っているミクは空中という安全圏にいた。

 エラが次々と放つプラズマポールを、ミクは余裕でひょいとひょいと躱している。ミールとキラが振り落とされないか心配だが……

「きゃはははは! 遅い! 遅い! おそーい! 遅くて欠伸が出るよ。おばちゃん」
「ぐぬぬ……降りてこい! 卑怯者!」
「ひきょうお? ほめてくれてありがとう」
「ほめてない!」

 エラは歯ぎしりして悔しがる。

 それはいいのだが、なぜさっきからアクロの動きが止まっている?

「ミクちゃん。遊んでいますね」

 あ! やっぱり……

 芽依ちゃんがミクの方に向かって叫ぶ。

「ミクちゃん。遊んでいないで、早く片づけて下さい」

 芽依ちゃん……そのセリフはまるで悪役の幹部だな……『遊んでないで、さっさと片づけろ』と幹部から命令された悪役が『へ! あっさりやっつけたら、つまらないじゃないか。もう少し楽しませろよ』とか言って油断しまくっている間に、ヒーローにやられてしまう事のなんと多いことか……
 
 この場合、ミクが悪役で芽依ちゃんが幹部でエラがヒーローという構図だが……

 ミクの奴このまま油断していると、エラの逆襲を食らいそうだな……いや、それより心配なのは……ん?

 芽依ちゃんは僕の方を振り向き、小声で言った。

「早くしないと、あの人を味方にしなきゃならなくなります」

 それだよ。心配なのは……

「ミク。早く片づけてくれ」
「分かったよ。お兄ちゃん」

 そのやりとり聞いていたエラは、ミクを指さした。

「貴様! 今まで、私で遊んでいたというのか!?」
「そうだよ。でも、これ以上遊んでいたら怒られるから、そろそろフェニッシュ行くね。おばちゃん」
「私をおばちゃん呼ばわりするな!」
「じゃあ、おばあちゃん」
「よけい悪い! お姉さまと呼べ」
「ええ……やだ」

 アクロが動き出した。拳を大きく振り上げる。

「くそ!」

 悪態を付きながら、エラはバルコニーの手すりに密着するように屈み込む。

 アクロは手すりごとエラを叩き潰そうと拳を振り下ろした。
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