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第十二章

え? エラが悪い人に見えない?

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「脱着」「脱着」

 ロボットスーツを着脱装置に戻すと『修理完了まで十八時間かかります』というメッセージが表示された。
 芽依ちゃんのスーツはさらにダメージが酷く、二十二時間かかるらしい。

 携帯端末に目をやると、ドローンから送られてきたデータか表示されている。

 状況はあまり良くない。ナンモ解放戦線五千の内、レイラ・ソコロフ直属の正規部隊は五百ほど。

 残り四千五百のほとんどは、この付近で集めた……あるいは勝手に押し掛けてきたゴロツキ連中。当初は、帝国軍との戦闘で少なくとも三千人は戦死ないし戦闘不能になるという計算だったらしい。

 ところが、実際に戦っていたのは僕たちで、早めに停戦したものだから戦死ないし戦闘不能になったのは千人ほど。残り三千五百のうち千人は逃げ出して、五百人は停戦命令に従った。

 だが、残りの二千は戦闘をやめない。

 元々、略奪目的で集まってきたような奴らだ。ロータスという宝の山を目の前にして『今更やめられるか』と言ったところだろう。

 しかし、困った。これを食い止めたいが、僕も芽依ちゃんもしばらく戦えない。

 ミールはというと、実は魔法回復薬には一日に使用できる量が十~十五回までと定められていた。サラとの戦闘でその使用限度を使い切ってしまいもう戦えない。

 ミクもキラも後一~二回が限度。《水龍》《海龍》に積んできた弾薬も尽きかけていた。

 では、今どうやって侵攻を防いでいるかと言うと、エラ・アレンスキーが西の橋でロータス兵の先頭に立って『命令違反は許さん』と言って、かつての仲間を消し炭に変えているのだ。

「できれば、エラにはあまり借りを作りたくなかったのですけどね……」

 町役場の一室に戻った僕の耳に入ったのは、相模原月菜の憂鬱そうな声。

「仕方ありませんね。今、町の中にいる戦力で、戦えるのは彼女だけだから……」

 そう言ったのは、六十代ほどの貴婦人。この人がレイラ・ソコロフ。町長の言うとおり小学校の校長先生のようなイメージだ。

 部屋の中には他に、ミールとアーニャ、それにロータスの町長と議員、ナンモ解放戦線のメンバーなど十数人が集まっていた。リトル東京から来た軍事顧問はここにはいない。

 先日 《イサナ》と通信中に、突然通信機が火を噴いて大火傷を負って、現在アジトで療養中なのだ。今は相模原月菜がその代行を務めている。言うまでもない事だが、通信機が火を噴いた原因はエラだ。

 ちなみに町長の執務室は使える状態ではないので、五階の会議室を使っている。それはともかく……

「相模原さん。エラに借りを作りたくないってどういう事? もうすでに仲間に入っているんじゃないの?」

 その時になって彼女は、僕と芽依ちゃんが部屋に入ってきたことに気がついたようだ。

「北村君。森田さん。ロボットスーツの調子は?」

 僕は首を横にふった。

「今日はもう戦えない」
「そう」

 それを聞いて相模原月菜は顔をしかめた。

「北村君。森田さん。エラはね。数日前にナンモ解放戦線に入れてほしいと言って私たちの元へやってきたのよ。ソコロフさんは受け入れようとした。だけど、リトル東京から来た私たちは、そんな事認められないわ」

 なんで……と、聞くまでもないことだが……あの異常性格者を仲間にしたいと思う人の方が希だ。

「でも、今はエラを頼るしかないのね」
「ええ。ですから、この功績を認めて、エラ・アレンスキーさんをナンモ解放戦線の正式メンバーに……」

 そう言い掛けたレイラ・ソコロフの言葉を、相模原月菜は遮った。

「ソコロフさん! あなたは何も分かっていない! あいつがどんな残虐な女か」
「そうでしょうか? 私にはエラ・アレンスキーさんはそんなに悪い人には見えませんが」

 え?
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