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第十三章

出撃準備

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 ジェットドローン菊花きっかを一機ずつ釣り下げた飛行船ドローン四機が《海龍》から発進した。

 なんで飛行船で菊花を吊るすのかというと、航続距離の短い菊花の燃料を節約するため。

 速度は遅いが航続距離の長い飛行船で菊花を運び、《アクラ》に近づいた時点で切り離す予定だ。

 作戦が終わって戻って来た菊花は、再び飛行船で回収する事になっていた。

 視線を《水龍》の方に目を向けると、同じ様に菊花を釣り下げた飛行船ドローンが二機発進している。

 合計六機のドローンはみるみる高度を上げていき、《アクラ》のいる方向へ飛んでいった。本来こういうときは水面ギリギリの高度で飛行してレーダーを躱すものだが、今回はドローンを敵に発見させてその出方を見るのが目的。だから、今回はあえて高度を上げたのだ。

 時計はカルカ時間で午前七時を示している。

 この調子だと、午前十時頃には《アクラ》を菊花の戦闘行動半径に捕らえる事ができる。

 十一時頃にはブースターを装備した九九式の戦闘行動半径に《アクラ》が入るはず。

 出撃は四時間後だな。

 下に視線を戻すと、甲板上に置いたテーブルを《海龍》の乗員全員で囲んで朝食を取っている真っ最中だった。

 できれば《水龍》の乗員も招きたかったのだが……

 ちらっと、五十メートルほど離れて並走している《水龍》に目を向けると、やはり甲板上にテーブルを置いて四人で囲んでいた。

 一人はレイホーだが、後の三人はロータスから乗り込んできた。一人はレイラ・ソコロフの孫娘ナージャ・ソコロフ。ベイス島で暮らしていた経験があるので、もしベイス島を攻略するなら彼女の知識が役に立つので同行してもらった。

 もう一人は薬師であるカミラ・マイスキー。

 そして、もう一人が問題。エラ・アレンスキーだ。

 こいつを《海龍》に来させない事を条件に同行を認めたのだが、食事時に《水龍》にエラを一人切りにするのも心配だ。

 従って《水龍》の乗組員をこっちに招くわけに行かない。エラ一人を残して他の三人を招くというも、さすがに気が引けるし……

「カイトさん。どうしました? ご飯が冷めますよ」

 背後からミールが声をかけてきた。

「ああ、今行く」

 ミールの隣に座った。

「やはり、気になりますか? エラの事が」
「ああ。あいつが向こうで大人しくしてくれていたらいいが……」
「カイトさんは、キラとミーチャに気遣って、エラをこっちの船には来させない事にしたのですね?」
「ああ」
「実は、映像ならいいかなと思って、昨夜レイホーさんに《水龍》での様子を通信機で送ってもらったのです」
「キラに見せたのか?」
「ミーチャにも見せました」
「大丈夫だったのか? 二人は」
「ミーチャが少し怖がっていたけど、大丈夫でしたよ。こっちの船にいなければ問題ありません」
「そっか。よかった」
「それより、二人はエラの映像を見て驚いていました」
「どう驚いていたのだ?」
「カミラさんとレイホーさん、それにナージャさんを交えて女四人でテーブルを囲んで飲み物を飲んでいたのですが」
「それでどうだった?」
「エラが普通にガールズトークをしていたという事です」
「それって、すごいことなのか?」
「キラもミーチャもこんな光景見たことないと言っていました。帝国軍には女性兵士も多いのですが、みんなエラを怖がって近づきません。食事はいつもエラ一人」

 ぼっち飯か。まあ、学生時代は僕もそうだったが……今から、あの辛さには耐えられないだろうな。

 この惑星に降りてから最初の頃は、Pちゃんと食事を共にしていた。Pちゃん自身は食事の必要は無いけど、会話の相手になってくれた。

 それにミールが加わって、食事時は少し賑やかになってきた。

 そうしているうちに、キラ、ミク、ダモンさん、ミーチャ、芽衣ちゃんが加わって大所帯になってきた。

 この艦隊で出航するときには、ダモンさんが抜けて、レイホー、アーニャ、馬 美玲が加わってかなり賑やかになっていた。

「カイトさん。どうしました? ぼうっとして」

 ミールに話しかけられハッと我に返った。

「いや、ちょっと考え事を……エラって、ずっと一人ぼっちだったのだなと思うと、ちょっと可哀想かなって……」
「だからって同情してはだめですよ。あの女は寂しくて性格が歪んだのではなくて、元々歪んでいたから誰にも相手にしてもらえなくなったのですから」
「分かっている、分かっている」

 エラが独りぼっちだったのは、自業自得。人の嫌がることばかりやっていれば、誰からも相手にされなくなって当然。

 しかし、このエラ……《水龍》甲板上での振る舞いはどう見ても、淑女にはほど遠いが普通のオバさんだ。

 ミーチャに暴行していたエラとはやはり違う。

 もちろん、これが表面的な事だというのは分かっている。

 あいつの本音は竜車の中で聞いたし、ホテルではミールとちょっといちゃついただけで電撃を食らった。

 残忍性は心の中に残している。その本性をいつ現すか……とりあえず、このことはレイラ・ソコロフに送るレポートにまとめておくか。
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