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第十三章
交渉1
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日は沈み、周囲はすっかり暗闇に包まれていたが、ロボットスーツの暗視機能のおかげでミクの様子を見ることはできた。
どこも怪我をしている様子はない。意識を失っているだけのようだ。
「ミク! 大丈夫か!? しっかりしろ!」
僕の腕に抱かれたまま、目を閉じていたミクはゆっくりと目を開いた。
「お兄ちゃん。あたし……あのおばんやっつけたよ」
「うん。よくやったぞ」
「えへ……もっとほめて……」
「いくらでもほめてやるから、もう無茶をするなよ」
「うん……」
ミクは再び目を閉じた。
眠ったようだ。
下に目を向けると、分身達の増援が、次々と《アクロ》に飛び移っていた。
『女の子は、無事でしたか?』
声の方に目を向けると、銀色のロボットスーツが空中に浮いていた。
「ああ。今は眠っている」
『それはよかった。ところで北村さん。中の人から、あなたにメッセージがあります』
メッセージ?
『フーファイターの修理はまだ終わっていないが、燃料の反物質はまだ残っている。《アクラ》を制圧したら、直ちにこれをすべて対消滅させると言っております』
「おい……そんな事をしたら……」
『言っておきますが、僕も成瀬さんも命は惜しいのでそんな事はしたくありません。ただ、《アクラ》を制圧したら、中の人が否応なく爆破するそうです』
くそ! レムの奴、なぜ今頃になって……ミクの能力を確認するという目的を達成したからか?
『だから、ここは見逃して欲しいのですが、タダとは言いません。見逃してくれたら、そちらの欲しい物を差し出すと中の人は言っております』
「欲しい物?」
『北村さんは、何か我々が持っている物が欲しくて追いかけてきたのでしょう? だから、《アクラ》を撃沈するのではなく拿捕しようとしている。違いますか?』
確かにその通りだが……話がうますぎる。
「それでは、フーファイターを渡してもらおうか」
『それはダメです。そもそも、北村さんが追撃をかけてきた時点で、我々にはフーファイターは無かった。何か他にあるのでしょ? もし、成瀬さんに結婚を申し込みに来たというなら、本人は喜んで行くと言っていますが』
「ちっがーう!」
『冗談ですよ。そんな思い切り否定しなくても……成瀬さんが聞いたら傷つきますよ』
「と……とにかく、追いかけてきた理由は……」
『マテリアルカートリッジですね?』
「なぜ分かった?」
『他に考えられませんからね。あなたはおそらく、プリンターで何かを作ろうとした。だけど、カートリッジのどれかが足りなくなった。そこでそれを持っている可能性がある我々を追いかけてきた。違いますか?』
僕は無言で頷いた。今更、隠しても意味がない。
『そこまで必死になって、何を作りたいのですか? 武器なら十分あると思いますが……』
「武器ではない。ナノマシンだ」
『ナノマシン?』
「病人の治療にナノマシンが必要なんだ」
古淵はしばらく黙り込んだ。
『今、中の人から質問がありました。その病人とは、章 白竜の事ではないか? と』
レムは章 白龍を知っているのか?
どこも怪我をしている様子はない。意識を失っているだけのようだ。
「ミク! 大丈夫か!? しっかりしろ!」
僕の腕に抱かれたまま、目を閉じていたミクはゆっくりと目を開いた。
「お兄ちゃん。あたし……あのおばんやっつけたよ」
「うん。よくやったぞ」
「えへ……もっとほめて……」
「いくらでもほめてやるから、もう無茶をするなよ」
「うん……」
ミクは再び目を閉じた。
眠ったようだ。
下に目を向けると、分身達の増援が、次々と《アクロ》に飛び移っていた。
『女の子は、無事でしたか?』
声の方に目を向けると、銀色のロボットスーツが空中に浮いていた。
「ああ。今は眠っている」
『それはよかった。ところで北村さん。中の人から、あなたにメッセージがあります』
メッセージ?
『フーファイターの修理はまだ終わっていないが、燃料の反物質はまだ残っている。《アクラ》を制圧したら、直ちにこれをすべて対消滅させると言っております』
「おい……そんな事をしたら……」
『言っておきますが、僕も成瀬さんも命は惜しいのでそんな事はしたくありません。ただ、《アクラ》を制圧したら、中の人が否応なく爆破するそうです』
くそ! レムの奴、なぜ今頃になって……ミクの能力を確認するという目的を達成したからか?
『だから、ここは見逃して欲しいのですが、タダとは言いません。見逃してくれたら、そちらの欲しい物を差し出すと中の人は言っております』
「欲しい物?」
『北村さんは、何か我々が持っている物が欲しくて追いかけてきたのでしょう? だから、《アクラ》を撃沈するのではなく拿捕しようとしている。違いますか?』
確かにその通りだが……話がうますぎる。
「それでは、フーファイターを渡してもらおうか」
『それはダメです。そもそも、北村さんが追撃をかけてきた時点で、我々にはフーファイターは無かった。何か他にあるのでしょ? もし、成瀬さんに結婚を申し込みに来たというなら、本人は喜んで行くと言っていますが』
「ちっがーう!」
『冗談ですよ。そんな思い切り否定しなくても……成瀬さんが聞いたら傷つきますよ』
「と……とにかく、追いかけてきた理由は……」
『マテリアルカートリッジですね?』
「なぜ分かった?」
『他に考えられませんからね。あなたはおそらく、プリンターで何かを作ろうとした。だけど、カートリッジのどれかが足りなくなった。そこでそれを持っている可能性がある我々を追いかけてきた。違いますか?』
僕は無言で頷いた。今更、隠しても意味がない。
『そこまで必死になって、何を作りたいのですか? 武器なら十分あると思いますが……』
「武器ではない。ナノマシンだ」
『ナノマシン?』
「病人の治療にナノマシンが必要なんだ」
古淵はしばらく黙り込んだ。
『今、中の人から質問がありました。その病人とは、章 白竜の事ではないか? と』
レムは章 白龍を知っているのか?
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