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第十四章

南ベイス島上陸

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 程なくして、ベイス島から迎撃機が上がってきた。

 映像を拡大すると、それがフーファイターだと分かる。

 こっちは飛行船ドローン三機だけだというのに大げさだな。
 
 フーファイターはドローンの方へ向かって行くが、ベジドラゴンに乗っている僕たちには、気がついていないようだ。

 一機のドローンが、レーザーを食らって落とされた。

 その直後にフーファイターから通信が入り、スピーカーから矢納課長の声が流れる。

『北村! それで隠れたつもりか!?』

 まさか、こっちに気がついたか? 

『一機だけ高いところを飛ばせて、残りの二機を低空から進入させようという魂胆こんたんらしいが、そうはいかないぜ』

 どうやら、こっちに気がついたわけではないようだ。

 もちろん、ドローンは囮だが真っ正直に正面から突っ込ませたら囮だとばれる。

 だから、二段階、三段階の囮を用意した。

 三機のドローンのうち一機を高度千メートルからベイス島に近づけ、残り二機は高度三十メートルの低空から接近させたのだ。

 こうすれば、高いところから来るドローンを囮にして、低高度から本命のドローンを進入させようとしていたと思われるだろう。

 実際に、矢納課長はそう思ってくれたようだ。

 実はどちらも囮だけど……
 
 しかし、小淵ならこれでも騙せそうにないだろうな。

 だから、もう一つ囮を用意した。

「ご主人様。飛行船ドローン二号機、三号機落とされました」
「水中ドローンは?」
「落とされる前に切り離しました」

 低高度から進入させたドローンには、水中ドローンを搭載していたのだ。ただし、これは水中を動くだけの玩具のような物。

 島に近づいても上陸はできないし、電池も三十分しかもたない。

 ただし、向こうにはそれが分からない。

 水中から何かが近づいてくるとなったら、迎撃せざるをえないだろう。

『なるほど。飛行船ドローンは囮で、水中ドローンが本命というわけか。小賢こざかしい奴め』

 どうやら、水中ドローンにも気がついたようだ。

 気がついたとしても、水中ではフーファイターのレーザー砲は通用しない。

 となると、あれを使うだろうな。

 その前に、こっちも避難しておかないと……

 眼下を見下ろすと、南ベイス島の海岸が見えた。

 三十メートルはありそうな岸壁が連なっている。

 岸壁の上はびっしりと樹木に覆われているが、一カ所だけ岩がむき出しになっている広場があった。

「エシャー。あそこの広場に降りられるかい?」
「エエ、大丈夫ヨ。降リラレルワ」
「じゃあ、あそこに降りるように、みんなに伝えてくれ」
「分カッタワ。カイト」

 エシャーが岸壁の上に降り立つと、すぐ後にルッコラとロット、レタスが降りてくる。

「みんな! 姿勢を低くして。爆風が来る」

 僕が叫んだ数秒後。ドーン! という大きな音が響きわたった。

 続いて強風が吹き付けてくる。

 予想通りだ。矢納課長は対消滅爆雷を使ってきたな。

 小さな水中ドローンを葬るのに大げさと思うが、フーファイターでは水中の敵を攻撃する手段が他にないのだから仕方がない。

 程なくして、津波が押し寄せてきたが岸壁の上まで届くほどの勢いはなかった。

 さてと……

 周囲を見渡すと、僕たちの降りた広場は意外と広い。バスケットボールコートぐらいの広さがある。

 広場の三方は鬱蒼うっそうとした広葉樹林に覆われていた。

「なんで、ここだけ木がないんだろ?」

 僕の何気ない呟きにナージャが答える。

「伐採したからよ。自然に、こうなったわけじゃないわ」
「なるほど。ここは見張り台かなにかというわけか」
「そう。お婆ちゃん達が南島に渡った後、通りかかる船を見つけるためにやったの。以前は見張り小屋もあったけど、二年前に火事でね」

 ナージャの指さす先に、小屋の土台のような物が残っていた。

 まあとにかく、無事にベイス島へ到着したようだな。
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