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第十四章

異星人は地球人だけではなかった。

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「異星人だって? 地球人以外にも、この惑星に降りた異星人がいたというのか?」

 あれ? 僕は何か、おかしな事を言ったのだろうか?

 爺さんがニヤニヤしている。

「おぬしは、まだ知らないようじゃな。この惑星の土着の知的生命体は、ナーモ族だけだという事を」
「なんだって?」
「この惑星の知的生命体は、猫耳ヒューマノイドのナーモ族と蜥蜴《トガゲ》型ヒューマノイドのプシダー族がほとんどじゃが、他に鳥人のルフ族、半人半馬のタウリ族などがおるのは知っておるか?」
「知っているけど……」

 鳥人や半人半馬の種族は、ロータスの町でも見かけたし……ただ、それが、ルフ族とかタウリ族という名前があるのは初めて聞いたが……

「この内ルフ族は、千年前にこの惑星に不時着した宇宙船の乗組員の子孫じゃ。世代交代していくうちに、科学文明を失ってしまったようじゃな」
「プシダー族は?」
「数百年ほど前に、この惑星に漂着した流浪の民がプシダー族の先祖じゃ。最初はナーモ族からこの惑星を奪おうとしていたらしいが、同時期に漂着したタウリ族が、ナーモ族の味方について侵略を阻止したらしい。おぬしら日本人や台湾人が、帝国軍の侵略を阻止しているようにな」

 プシダー族も侵略者だったって?

「そしてプシダー族も、世代交代していくうちに科学文明が後退してしまったのじゃ。それでも、ナーモ族との間に緩い敵対関係が続いていた。そこへマトリョーシカ号が到着してしまったのじゃ」
「その後は?」
「知らん」
「は?」
「わしは、マトリョーシカ号がこの惑星に着いた後、この島からずっと離れておらん。だから、大陸で起きている事情など知らん」
「だったら、なんでこの惑星の歴史は知っているのだ?」
「ふむ。さっき北島地下施設はタウリ族が作ったと言ったじゃろ」
「ああ」
「わしらが来たときには、施設はもぬけの殻だった。だが、南島の森の中に、一人だけタウリ族の子孫が暮らしていたんじゃ」
「なんで一人だけ? 大陸にもタウリ族はいるだろう?」
「知らん。彼には彼の事情があるのじゃろう。わしと同じで、仲間とそりが合わなかったのかもしれんな。わしも南島に渡ってから、仲間とよくケンカをして……」

 ケンカの原因は、セクハラだろうな。

「一人で森の中に逃げ込む事がよくあった。そんな時にスーホに出会ったのじゃよ」
「スーホ?」
「森の中で一人暮らしていたタウリ族の名じゃ。スーホは森の中で怪我して動けなくなったわしを連れ帰り手当してくれてな、以来わしらは友達になったのじゃ」
「じゃあ、スーホからこの惑星の歴史を聞いたのかい?」
「そうじゃ。最初は意志疎通に難儀したがな」
「そうか。ところで、スーホとは今でも会えるのか?」
「いや。今は無理じゃ。半年前に、ふらっとこの島から出て行ったきり帰ってこない。大方、仲間に会いにいったのだろう」
「仲間に? だって仲間とはソリが悪かったのでは」
「そうだが、一応北島の地下施設に何かあったら報告に行く義務があったらしくてな。わしらが住み着いたときもそうしたらしい」
「あんたらが勝手に使っていたのに、タウリ族は何もしなかったのか?」
「そうらしい。なぜ何もしなかったのかは知らん。それよりあんた。地下施設の図面を用意しているようじゃが、これから潜入でもしようというのか?」
「そのつもりだが」
「ふむ。それなら、一つよいことを教えてやろう」
「よいこと?」
「秘密の穴をな」

 まさか!? 帝国軍に見つからないで入れる抜け穴があるのか?

 爺さんは図面の一カ所を指さした。

「ここを拡大するのじゃ?」
「ああ」

 映像を拡大する。

 なんの変哲もない部屋が出た。爺さんはその部屋の壁を指さす。

「よいか。若者よ。わしが地下施設にいた頃、この部屋のこの壁に額縁を掛けておいた。その額縁をずらすと……」
「額縁の裏に、抜け穴があるのか?」
「抜け穴? いやいやそんな穴はない。あるのは小さなのぞき穴じゃ」
「のぞき穴?」
「うむ。ここから、となりの女風呂を……おい! 何をするのじゃ、若者よ」
 
 問答無用で、僕は爺さんの首根っこを捕まえた。

「ミール、扉を」
「はーい」

 ミールが開いた扉の向こうに、爺さんの身体を放り投げる。

「こりゃ! か弱い年寄りに何をする。今ここで外へ出されたら、娘たちに見つかって……」

 爺さんがそこまで言ったとき、外から女性たちの声が響いた。

「いたわよ! エロジジイが」
「しまった! 見つかった」

 部屋に戻ろうとする爺さんの目前で僕は扉を閉める。

「あ! こりゃ! 若者よ。中に入れてくれ!」
「このエロジジイ!」「覚悟しろ!」

 時間を無駄にしたぜ。
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