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第十六章

夫婦?

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 レムのオリジナル体と、僕と芽依ちゃんのオリジナル体が過去に出会っていた?

 いや、待て! その前にこいつ、サラっと、とんでもないことを言わなかったか?

 僕と芽依ちゃんが夫婦?

「夫婦って、どういう事ですか?」

 芽依ちゃんが顔を赤らめて質問する。

「そのままの意味です。オリジナル体のあなたたちは、結婚していたのですよ」
「ええええええええ! そんな! ちょっと! 嬉しい! いやいや!」

 あかん。芽依ちゃん、すっかり混乱している。

「芽依ちゃん。落ち着いて!」
「は! すみません。その……つい、取り乱して……」

 芽依ちゃんはキッ! とレムの方を睨む。

「そんな事言って、私を混乱させようという作戦ですね」
「いや……作戦も何も、事実ですし……」
「では、私たちは、どんな夫婦でした?」
「そりゃあ、仲睦なかむつまじい夫婦でしたよ」
「本当に!?」
「ええ。いわゆる、おしどり夫婦でしたね」
「でも、話だけでは信じられません。私の得意料理は分かりますか?」
「オムライスです」
「なぜ……それを……」

 そう言えば、芽依ちゃんが料理をしているところを見たことないけど……

「芽依ちゃん。当たっているの?」

 芽依ちゃんは、コクッと頷く。

「ただし、私はこの惑星に降りてから、ほとんど料理をしていません」

 だとすると本当なのか? 地球に残った芽依ちゃんのオリジナル体は、僕と結婚していたというのか?

 芽衣ちゃんは、その後も続けていくつか質問した。質問の内容は、地球で芽衣ちゃんに会っていなければ分からない事だが、レムはすべて正解したのだ。

「いいでしょう。それが事実であるかは、後で《イサナ》のデータベースで確認します。それより、私たちは顔を見せましたよ。約束通り、二つ目の理由を話して下さい」
「良いでしょう。二つ目の理由は、矢納は、知ってはならない秘密を知ってしまったからですよ」

 知ってはならない秘密? やはり、レムの犠牲者を解放する方法か?

「もちろん、知ってはならない秘密ですから、ここで内容まで話せませんが……」
「分かった。その内容については聞かないが、これだけは教えてほしい。あんたは矢納さんと取引をしていたようだが、矢納さんを嫌っていたのなら、どうして取引に応じた?」
「こちらも、背に腹は変えられない状況でしてね。私のシステムを維持しようにも、地球から持ち込んだカートリッジは枯渇寸前。この惑星の資源を利用しようにも、マトリョーシカ号のコンピューター内にあった技術者のデータが消えてしまうなんてトラブルもあって……」

 トラブルだと思っていたのか? ジジイの仕業だとは、気がついていなかったのだな。

「そんな時に《イサナ》のクルーが、無線で取引を持ちかけて来たのですよ。『《イサナ》を、裏切る用意がある。自分を仲間に加えてくれるのなら、カートリッジを都合してやってもよい』と。その時点で、それが矢納だと分からなかったし、罠かもしれないとは思いましたが、その話に乗らないと私はシステムを維持できなくなる。一か八かその話に乗ってしまったわけです。その結果、矢納にはいろいろとこっちの情報を知られてしまって」
「矢納さんを、接続しようとはしなかったのか?」
「あんなウザい人を接続するなんて嫌ですよ」

 接続しない理由がウザいからって……

「まあ、矢納との取引のおかげでカートリッジは確保できたし、リトル東京の技術者を何人か接続して確保できたのは確かです。ですが、そうなったらあの男は用済みです。だから、始末しようかと思っていたのですがね」

 それはそれでヒドい話だが……
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