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第十六章
細胞に脳は理解できない
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レムはさらに話を続けた。
「矢納のコピーが、もう一人どこかに隠れています。このまま私の手で矢納を始末などしたら、そいつに情報を流されてしまいます。だから、手が出せなかったのですが、あなたの手で始末してもらうか、そう錯覚させる事ができればと思いましてね」
「今、それを僕に話してしまっていいのかい? こうなったら、僕は隠れている矢納さんを何が何でも探し出すぞ」
「その危険はありますが、おそらく私の方が先に見つけるでしょう。すでにだいたいの居場所は分かっていますので」
だろうな。そうでもなきゃ、こんな事をペラペラと話すわけがない。
「さて、約束通り事情を話しましたので、ここらで失礼したいところですが、その前に一つ伝えておきたい事があります」
なんだ?
「レアメタル・カートリッジは地下七階にあります。欲しければ取りに来て下さい。ただし、そこにはエラNo.3が待ち構えています。彼女の心臓が止まると倉庫の扉は開くようになっているので、確実に倒して下さい」
その途中でミクを拉致する魂胆か。そうはさせないぞ。
「もう一つ聞きたいことがあるのだが、いいか?」
「なんでしょう?」
「僕はレム神という奴は、かなりいかれた奴だと思っていたのだが、こうして話してみると意外とまともだった」
「それはどうも」
「そんなまともな奴が、なぜこんな事を続ける?」
「こんな事と言うと?」
「恒久的平和を実現したいというのは分かる。だが、全人類の精神を融合するなんて無理だろ。もう、精神融合などやめてもいいのではないのか?」
だが、レムは首を横にふった。
「北村海斗さん。あなたの言いたい事は分かります。だけど、もう止められないのですよ」
「なぜだ?」
「それは私にも分からないのですよ。私はレムであって、レム神ではないので」
「どういう事だ?」
「確かに、レム・ベルキナは最初、恒久的平和を実現するために精神融合を開始しました。その結果、複数の精神が融合してできた精神生命体……いわゆるレム神が生まれてしまったのです。レム神は考えることも、価値観も人間の理解を越える存在です。では、私は何者かというと、レム神の中にある、かつてレム・ベルキナであった要素を継ぎ合わせて作られた疑似人格というべきもの。接続した人間を操作するのには、この疑似人格を使っているのですよ」
「なぜそんなややこしい事を?」
「うまくは説明できませんが、普通の人間の精神はレム神と直接接触すると崩壊してしまうのですよ。だから、仲介する精神体として、私のような疑似人格を作っているのです。例えて言うなら、普通の人間は細胞で、レム神は脳のようなもの。細胞に脳の考えを理解するのは、無理というものです」
「ひょっとして、レム神にとって精神融合とは、食事をするようなものなのか?」
「上手い表現ですね。そうかもしれません。実際に、レム神は精神融合する際、快感を覚えているようです」
という事は、今のレム神は恒久的平和とかどうでもよく、快感を満たすために精神融合を続けているのでないのか?
そうだとすると、やめさせるの無理だ。
それは僕に、酒をやめろと言うに等しい。
いや、ちょっと違うか。
とにかく、レム神にとって、人間は獲物もしくは作物のようなもの。
和解などありえない。
「さて、話はここまでにしましょう。地下施設で、あなたたちが攻めてくるのを待っています」
え?
「おい! 待て! まだ聞きたい事が……」
手遅れだった。
レムと接続されていたキールという少年は、その場で崩れるように倒れる。
口の中を見ると、毒のカプセルを噛み潰していた。
「矢納のコピーが、もう一人どこかに隠れています。このまま私の手で矢納を始末などしたら、そいつに情報を流されてしまいます。だから、手が出せなかったのですが、あなたの手で始末してもらうか、そう錯覚させる事ができればと思いましてね」
「今、それを僕に話してしまっていいのかい? こうなったら、僕は隠れている矢納さんを何が何でも探し出すぞ」
「その危険はありますが、おそらく私の方が先に見つけるでしょう。すでにだいたいの居場所は分かっていますので」
だろうな。そうでもなきゃ、こんな事をペラペラと話すわけがない。
「さて、約束通り事情を話しましたので、ここらで失礼したいところですが、その前に一つ伝えておきたい事があります」
なんだ?
「レアメタル・カートリッジは地下七階にあります。欲しければ取りに来て下さい。ただし、そこにはエラNo.3が待ち構えています。彼女の心臓が止まると倉庫の扉は開くようになっているので、確実に倒して下さい」
その途中でミクを拉致する魂胆か。そうはさせないぞ。
「もう一つ聞きたいことがあるのだが、いいか?」
「なんでしょう?」
「僕はレム神という奴は、かなりいかれた奴だと思っていたのだが、こうして話してみると意外とまともだった」
「それはどうも」
「そんなまともな奴が、なぜこんな事を続ける?」
「こんな事と言うと?」
「恒久的平和を実現したいというのは分かる。だが、全人類の精神を融合するなんて無理だろ。もう、精神融合などやめてもいいのではないのか?」
だが、レムは首を横にふった。
「北村海斗さん。あなたの言いたい事は分かります。だけど、もう止められないのですよ」
「なぜだ?」
「それは私にも分からないのですよ。私はレムであって、レム神ではないので」
「どういう事だ?」
「確かに、レム・ベルキナは最初、恒久的平和を実現するために精神融合を開始しました。その結果、複数の精神が融合してできた精神生命体……いわゆるレム神が生まれてしまったのです。レム神は考えることも、価値観も人間の理解を越える存在です。では、私は何者かというと、レム神の中にある、かつてレム・ベルキナであった要素を継ぎ合わせて作られた疑似人格というべきもの。接続した人間を操作するのには、この疑似人格を使っているのですよ」
「なぜそんなややこしい事を?」
「うまくは説明できませんが、普通の人間の精神はレム神と直接接触すると崩壊してしまうのですよ。だから、仲介する精神体として、私のような疑似人格を作っているのです。例えて言うなら、普通の人間は細胞で、レム神は脳のようなもの。細胞に脳の考えを理解するのは、無理というものです」
「ひょっとして、レム神にとって精神融合とは、食事をするようなものなのか?」
「上手い表現ですね。そうかもしれません。実際に、レム神は精神融合する際、快感を覚えているようです」
という事は、今のレム神は恒久的平和とかどうでもよく、快感を満たすために精神融合を続けているのでないのか?
そうだとすると、やめさせるの無理だ。
それは僕に、酒をやめろと言うに等しい。
いや、ちょっと違うか。
とにかく、レム神にとって、人間は獲物もしくは作物のようなもの。
和解などありえない。
「さて、話はここまでにしましょう。地下施設で、あなたたちが攻めてくるのを待っています」
え?
「おい! 待て! まだ聞きたい事が……」
手遅れだった。
レムと接続されていたキールという少年は、その場で崩れるように倒れる。
口の中を見ると、毒のカプセルを噛み潰していた。
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