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第十六章

後回しにしている問題が増えていくような……

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 部屋の扉を閉めて、ミールのいる方を振り向いた。

「それで、話って?」
「実は、カイトさんとメイさんが《水龍》に行っている間に、《海龍》内で妙な事が起きていたのですよ」

 妙な事?

「アーニャさんがシャワーを浴びている時に、誰かがのぞいていたのです」

 なに?

「他にも、カミラさんがお尻をでられたり、マー艦長の着替えがのぞかれたり。でも、誰がやったか分からないのです。被害にった人は、逃げていく人影をチラっと見ただけで……」

 まるでジジイがまだ艦内にいるみたいだな。

 いやいや! いるはずがない! あいつはアーテミスに置き去りにしたのだ。

「気のせいじゃないのか? 僕もミーチャも《水龍》にいたわけだし……《海龍》に男は一人もいなかったんだぞ」
「カイトさん。いたら、やるのですか?」
「いや、やらないけど」
「ですよね。あたしが鍵を開けているのに、全然夜這よばいいに来てくれないし……」

 なんか、夜這いに行かないのが、悪いように聞こえるのですけど……

「ミーチャも性に目覚める歳かもしれないけど、そんな事はやらないと思います。あの子、女を怖がっているみたいだし……まあ、それはエラが悪いのですけど」
「まさか!? 艦内に同性愛者がいるのか?」

 いや、別に同性愛者を差別する気はないが、同性愛者でも異性愛者でも、セクハラは良くないぞ。

「それはないと思います。今のところ被害に遭っていないのは、あたしとPちゃん、そしてミクちゃん、エラ。お人形さんであるPちゃんが、そんな事をするはずがありません。あたしはもちろん違います」

 ミールが同性愛のはずがないな。同性愛なら、僕とあんな事やこんな事をするはずないし……

「エラは、逆レイプだってやりかねないぐらい男好きです。ミクちゃんだって……」

 そこでミールの言葉に詰まった。

「そう言えば、ミクちゃんって最初会った時、あたしにすり寄ってきましたね?」

 まさか?

「ミクが同性愛? いやいやないだろう。それは……ミールには理解しがたいかもしれないが、地球人には猫耳が異常に好きな人がいるんだ」

 まあ、僕もそうだが……

「そうなのですか?」
「それにミクは、電脳空間サイバースペース白龍パイロン君に恋をしていたし、こっちでもミーチャに……」

 いや待てよ!?

「なあ。ミールの姉弟子さんって、同性愛だったよな?」
「ええ」
「美少年を、女装させて喜ぶような趣味はあったか?」
「いえ。そんな趣味はありません。むしろ、美少年だろうと、男が近づくのを異常にいやがっていました」
「という事はミクも、同性愛ではないな」
「あの。もう一つ心配なのは、あたしの分身体が暴走しているのではないかと」
「暴走? 以前にキラが暴走させていたが、あんな感じかい?」

 ミールが首を横にふった。

「たまにあるのですけど、分身体が術者のコントロールを離れて勝手に動き出してしまう事が。そうなると、術者本人にも分からなくなるのです。そのような野良分身体はたいていすぐに消えてしまうのですが、中には定着してモンスター化するものもあります」
「という事は、ミールのコントロールを離れた分身体が、《海龍》内を彷徨うろついていると?」
「はい。その可能性があります」
「危険なのか?」
「場合によっては、人を襲って生命エネルギーを吸い取ることも」

 それは怖い。

「ですから、着替えやシャワーをのぞいていたのは、生命エネルギーを吸い取ろうとして狙っていたのかも……」
「退治できないのか?」
憑代よりしろを破壊すれば、消えるのですが……まあ、モンスター化するには、かなりの時間がかかるので、今のところは、人に襲いかかるほどの力はないと思います」
「そうか。では、今すぐ対策する必要はないな」
「ええ。ただ、ベイス島の攻略が終わったら、忘れずに分身体を捕まえないと、時間が経つほどやっかいになりますので」
「分かった。作戦が終わったら対策を考えよう」

 なんか、後回しにしている問題が増えているような気がするのだが……

 まあ、今は考えないでおこう。
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