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第十六章

岩を挟んで、敵味方がいたとは

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 イワンの電磁砲レールキャノンを食らい、岩は木端微塵こっぱみじんに砕け散った。

 ただし僕らが隠れている岩ではなく、ここから数百メートル離れたところにある岩だけど。

 しかし、カルルはあそこに何か動く物が見えたと言っていたな。

 動物でもいたのかな?

 ん?

 確かに動く物がいるが……

 あれって、帝国軍兵士では?

 カルルの奴、間違えて味方を撃ったのか。

 五人ほどの兵士が、ズダボロになりながらも何とか立ち上がって、イワンに向かって抗議する。

「エステス殿! なぜ我々を攻撃するのですか?」

 イワンの装甲に丸い穴が開き、スピーカーが出てきた。

 そこからカルルの声が流れる。

「君たち。そこで、何をしていたのだ?」
「対空砲陣地の構築ですよ。エステス殿がドローンに苦戦しているようですので、生き残った対空砲をここいら辺に設置して援護しようと……」
「こりゃまた失礼」
「気を付けて下さい。このあたりの岩影には、我々以外の者もいますので」
「分かった。気を付ける。ところで、犠牲者は出なかったか?」
「幸い軽傷者だけで済みましたが、運んできた対空砲がオシャカです」
「そうか、済まない。対空砲は何門残っている?」
「我々の対空砲がつぶれたので、残り四門です。すでにこのあたりの岩影に配備してあります」
「分かった。ではここに陣取って、奴を迎え撃とう」

 迎え撃つも何も、すでにここにいるのだが……

「ところで、この辺りには岩が多いが、敵は隠れていなかったか?」
「我々が来たときには、特には……」

 偵察が不十分だな。

「まあ、いい。奴の攻撃目標は俺だからな。ここにイワンがいれば、すぐにやってくるだろう」

 そのままイワンは、五十メートルほど移動して停止。

 僕らが隠れている岩から、二百メートルほどの位置だ。

「北村さん。ちょっとまずいです」
「どうした? 芽依ちゃん」
「今気がついたのですが、岩の反対側に帝国軍兵士がいて、対空砲を設置しています」
「なに?」

 岩影から、鏡を出すと、確かにそこに帝国軍兵士が五人ほどいた。

 ううむ。大きな岩を挟んで、敵味方がいたとは……

「でも、これってチャンスではないでしょうか」
「え? チャンス」
「ここから、イワンを攻撃すれば、イワンは味方が邪魔で攻撃できません」
「人質を取るのか。それは卑怯では……」
「何を言っています。戦いに卑怯もへったくりもないと、いつも言っていたのは北村さんではないですか」

 そうだった。ん?

 鏡に映っている帝国軍兵士の様子がおかしい。

 兵士の一人が、僕たちのいる方向を指さして何か叫んでいる。

 どうやら、向こうもこっちに気がついたようだな。

「芽依ちゃん。どうやら気づかれたようだ。迷っている時間はない。今すぐ攻撃する」
「はい」

 僕たちはロケット砲を構えた。

 いかに劣化ウラン弾でも、イワンの真芯まっしんに当てなければ効果が期待できないので、狙いは慎重に定めないと……

 狙いを定めている間に、岩向こうにいる帝国軍兵士の一人がイワンに向かって駆け出した。

 どうやら、このことを報告に行くらしい。

 そんな事をしなくても、さっきみたいに大声を出せばイワンに聞こえると思うが……

 そうか。向こうの帝国軍兵士たちは、まだ僕たちに見つかっている事に気がついていないのだな。

 撃つなら今しかない。

「芽依ちゃん。準備は?」
「いつでも撃てます」

 おあつらえ向きにイワンは静止している。

ー!」

 二発のミサイルが同時に放たれた。

 まっすぐ、イワンに突き進む。
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