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第十六章

できれば動物は殺したくないなあ。

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 地下施設に入る前から、補給を絶たれるという事態になる事を僕はもっとも警戒していた。

 だからこそ第二層では、敵戦力を一掃するしかなかったのだ。後方に少しでも敵戦力を残していくと、補給物資を持ってくるロボットを攻撃される危険があったから。

 ちなみにさっきテントウムシを補給に使ったのは、後方に負傷した捕虜を運んだついでに使っただけで、補給専用のロボットは別にある。

「芽依ちゃん。第五層にドローンは残してあるかい?」
「三機残っています」

 ドローンの一つを傾斜路入り口前に差し向けてみると、動物たちはまだそこに陣取っていた。

 さらに動物たちの後では、一台の四足歩行ロボットが立ち往生している。僕らが使っていた運搬ロボットだが、ここから先へ進めないようだ。

 こうなったら、弾薬がある今のうちに動物達を始末するべきか?

 簡単なことじゃないか。今まで、人間を大勢殺してきて、ヒツジやヤギが殺せないなんて事は……

 ……ないとは思うのだが……いや、甘いとは分かっているのだが……できれば動物は殺したくないなあ。

 人間を散々殺しておいて、今更何を言っている! と怒られそうだけど……

 だが、それをやるとしても問題は動物の数。

「Pちゃん。第四層、第五層を偵察した時のデータから、ヒツジとヤギの総数は分かるかい?」

 六体のミニPちゃんの一体が振り返る。

「しばし、お待ちを……」 

 しばらくしてPちゃんが答えた。

「推定値ですが、八百頭になります」

 八百頭か。ちょっと多いな。

「ただし、それは少なく見積もった場合です。実際にはもっと多いかもしれません」
「では、八百頭だと仮定して、現在僕たちの手元にある弾薬だけで殺し切れるかい?」
「弾薬だけで殺すとなると足りません」

 無理か。弾薬が足りない分は、バッテリーが続く限りブーストパンチで殴り殺すとか、ミールとキラの分身体で……

「若造よ。おぬしまさか、上にいる八百頭のヤギとヒツジを皆殺しにする気か?」

 僕はジジイを睨みつけた。

「悪いか? 言っておくが好きで殺すわけでは……」
「いやいや、わしは別に殺す事が悪いと言っているのではない。すべてを殺す必要はないと言っているのじゃ」
「どういう事だ?」
「傾斜路の前にいる動物はせいぜい百頭にも満たないじゃろう。それを始末すれば十分じゃ」
「何を言っている? 扉の前にいる動物を殺しても、後から補充されてしまうじゃないか」
「いいや。補充はない。レム神にそんな余裕はないのじゃ」

 なに?
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