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第十六章

エラがいない

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 中央広場に、僕達は何も残さなかった。

 しかし、あそこにはタウリ族の残した時空穿孔機がある。

 地球人にはどうにもできない異星人のメカなんて、単なるオブジェに過ぎないだろうと思って放置していたが……

 僕はジジイの方を向いた。

「中央広場にある時空穿孔機って、まだワームホールを開くのに使えるのか?」
「スーホは、壊れてはいないと言っておったぞ。まあ、わしは実際にあれが動くところを見たことはないが」
「あれは、簡単に使える物なのか?」
「操作は簡単だと言っていた。制御盤にいくつかのキーをはめ込んで、行きたい場所を思い浮かべればよいと」

 思考制御って事か。だから、プシトロンパルスをさえぎる必要があったのだな。

「実際にわしは制御盤を見たことがあるが、スイッチやレバーの類はなかったのう。キーをはめ込むためのくぼみがいくつかあっただけじゃ」
「窪み? それにキーをはめ込めば作動するのか?」
「そうじゃ。時空穿孔機に限らず、この地下施設にあるタウリ族のメカは、たいていそうやって使われておる」
「キーってどんなの?」
「手のひらサイズの透明な板じゃ。クリスタルの様に見えるが材質は知らん。キーの形はいろいろとあってのう。四角形、三角形、五芒星形、六芒星形……ん?」

 ジジイは突然押し黙って考え込んだ。

 どうしたのだろう?

「おお! 思い出した」
「何を?」
「さっき、少年兵がエラに透明な六芒星の板を見せていたじゃろ」
「ああ。それが、何か?」
「あれがキーじゃ」
「なんだって!」
「以前にスーホが、わしらが出た後の地下施設を調べたところ、保管場所に置いてあったキー類がごっそり無くなっていたと言っていた。だから、スーホが最初にわしと会った時に聞かれたのじゃ。『地下施設で、こんな物を見かけなかったか?』と、キーの映像を見せられた」
「それが、さっき少年兵が持っていた六芒星板だと?」
「六芒星だけでない。いろんな形の透明な板があった。おそらく、レム神の先遣隊が、わしらを地下施設内に入れる前に回収していたのであろう」
「しかし、なんのために? レム神は、異星人のメカの使い方が分かるのか?」
「この惑星にいるタウリ族は、スーホだけではないぞ。他のタウリ族から聞き出した可能性もある。いや、わざわざ保管場所からキーを持ち出したという事は、知っていると考えた方がよいじゃろう」

 なるほど。どうやったか分からないが、レム神はタウリ族のメカを扱えるらしい。

 だが、今考えなければならない問題は、エラがキーの一つを手に入れたという事。

「エラは、時空穿孔機を動かして逃げる気か?」
「その可能性はあるのう」

 時空穿孔機でワームホールを開ければ、どこへだって逃げることができる。

 エラが僕に取引を持ちかけてきたのは、時空穿孔機のある第六層までたどり着くためだとしたら……

 不意にテントウムシのガルウイングが開いて、ミクが顔を出した。

「お兄ちゃん! エラがどこにもいないよ」

 なに!? 
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