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第十六章

中央広場にあるもの?

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 式神を操っているミクを乗せたテントウムシは、傾斜路入り口前に待機させた。

 傾斜路の第六層側ではミールとキラ、そして橋本晶が警戒しているので、帝国軍に背後から襲われる心配はない。

 そしてテントウムシの左右では、僕と芽依ちゃんの九九式が警戒していた。

 そのテントウムシは、僕が抱き上げているPちゃんがコントロールしている事になっている。

 今のところ第七層には、エラ以外に僕たちと敵対する戦力は存在しない。

 後は、ミクの式神がエラを始末すれば終わりだ。

 だが、何かを見落としているような気がするのは、なぜだろう?

「のお、若造」

 パイプ椅子に腰掛けてくつろいでいたジジイが声をかけてきたのは、そんな事を考えている時のこと……

「あのエラとかいう姉ちゃんを、倒すとか言っていたのう。おまえ、女は殺さない主義ではなかったのか?」

 またその話か。

「よくそう言われる。だが、本当は少し違う」
「少し違う? 殺さないのは、若い女限定ということか? おばさんなら殺してもいいというのか?」
「そうじゃない!」
「ではなんじゃ?」
「主義で殺さないのではなく……殺せないのだよ」
「なぜじゃ?」
「ジジイは、人を殺した事はあるのか?」
「んん……わしは女にエロい事はやっても、人を殺した事はないのう」
「人を殺すのは……いやなものなのだよ。それでもなんとか帝国兵を殺してはいたが、女の子の恐怖に震える顔を見てしまったら、引き金が引けなくなるんだ」

 こればかりは、理屈じゃどうにもならないんだよな。

 最初の頃は、レットドラゴンだって殺すのには躊躇ちゅうちょした。

 帝国兵と最初に戦った時も、かぶとで顔が隠れていなければ撃てなかったかもしれない。

 そのうち男性兵士相手なら、顔を見ていても撃てるようになったが……

 キラと初めて会った時は、女といえ帝国兵。殺さなければいけないと、理屈では分かっていた。

 実際、最初は殺すつもりでいた。

 しかし、結局は女を殺す罪悪感に耐えられなくて、川に放り込むだけでやめてしまった。

 結果から考えると、キラはその後仲間になるのだから、あのとき殺さなくて良かったわけだが……

「なるほと。殺さなきゃいけないと頭では分かっていても、女の顔を見ると、引き金が引けなくなるというのじゃな?」
「まあ、そんなところだ」
「じゃが、あのエラとかいう女は平気で撃てるのか?」
「平気ではないが、エラならなぜか撃てるし、実際に撃った」
「そうか。わしじゃったら、あの姉ちゃんだって殺せんぞ」
「電撃を食らったのにか?」
「美女からの電撃は、わしにとってご褒美ほうびじゃ」

 こいつはそっちの趣味か。

 橋本晶からの通信が入ったのはその時……

「橋本君。何かあったのか?」
『第六層の帝国軍に、動きがありました』
「こっちへ向かってきているのか?」
『いえ。それが、傾斜路ではなく、中央広場の方へ向かっているのです』
「中央広場へ? 地雷原は、どうなっている?」
『地雷を処理しようとはせず、天井を移動するスパイダーに掴まって地雷原を越えました。スパイダーはその兵士たちを降ろした後、陣地へ戻っていきました』
「スパイダーで運ばれた人数は?」
『六人です。あ! 奴らが中央広場に入りました』
「分かった。引き続き監視を続けてくれ。傾斜路の方へ向かってこないなら、手を出さなくてもいい」
『了解』

 中央広場に、いったいなんの用だろ?

 僕たちが陣を引き払った後は、何も残していないと思うが……

 それとも、中央広場からこっちへ向かってくるのか?

 来たところで、六人では何もできないぞ。

 やはり、中央広場で何かをする気か?

 中央広場にある物と言ったら……まさか!?
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