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第十六章

嘘なのだろうか?

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「危ない!」

 芽依ちゃんがとっさに構えた対レーザーシールドに、プラズマボールがぶつかる。

 エラの奴、僕らを待ちかまえていたのか。

 テントウムシにも数発向かうが、装甲に触れないうちにプラズマボールはことごとく弾き飛ばされた。

 ふ! こんな事もあろうかと、テントウムシの装甲には密かに開発していた空間磁……じゃなくて、常温超伝導物質をコーティングしておいたのさ。

 プラズマボールの一発や二発、マイスナー効果で弾き飛ばせる。

 しかし、このまま攻撃を受けていると、テントウムシはガルウイングを開くことができないため、ミクは式神を外へ出せない。

「Pちゃん。テントウムシを環状通路まで後退」
 
 Pちゃんに指示した後、僕も環状通路まで後退して、今まで抱き抱えていたPちゃんを床に降ろした。

「ここで待っていてくれ」

 Pちゃんを残して放射状通路へ戻ったその時だった。

 僕の左腕をプラズマボールが掠める。

 バイザーにエラーメッセージが表示された。

『左腕の増力機構ブーストシステム及び補助機構アシストシステム損傷。修復しますか? このまま使用を続けると深刻なダメージを被る恐れが有ります』

 くそ! 修復を始めたら、左腕は全く動かせなくなるが仕方ない。

 ミクが式神を出してくるまでぐらい、右腕一本で十分だ。

「修復開始」
『修復を開始します。百八十秒お持ち下さい』

 三分か。

 非致死性ゴム弾を装填した拳銃を抜いた。

 エラに向けて射撃!

「無駄だ! カイト・キタムラ。No.7がやられた後に、その武器への対策は立ててある」

 エラの姿を拡大してみると、赤いフルフェイスのヘルメットを被っていた。

 対策していたのか。

「それより、カイト・キタムラよ。もう一度言う。私と取引をしないか?」
「取引には、応じられないと言ったはずだ」
「なぜだ? ここへ来たと言うことは、私が残してきた少年兵達から事情を聞いているのだろう? 私が、おまえに取って有益な情報を握っているという事を?」
「それは聞いた。しかし、こっちも事情が変わったのさ。あの倉庫は、内部に爆薬が仕掛けられていて無理に開けば爆発するそうだ。安全に開くには、あんたを殺すしかないらしい」
「なぜ、そんな事が分かった?」
「倉庫の扉に貼ってある紙に書いてあった」
「ちちい! あの張り紙に、そんな事が書いてあったのか」

 曲がり角から、ミクの式神アクロが姿を現したのはその時。

「そんなわけで、悪いがここであんたには死んでもらう」
「待て! カイト・キタムラ」
「これ以上話すことはない! 行け! ミク」

 アクロはエラに向かっていく。

「ええい! 話を聞け。式神使い! レム神がなぜ私を殺さないでここに配置したと思っている? おまえを誘き出して拉致するためだぞ」
 
 それは知っているし、すでに対策も立ててある。

「ええい! これでも食らえ!」

 エラが連続して放ったプラズマボールが、アクロの左腕を消失させた。

 だが、そんな程度でアクロの動きは止まらない。

「これならどうだ!」

 エラの連射プラズマボールは、アクロの首を消失させる。 

 それでもアクロは止まらない。

「くそ! 奴の憑代はどこに?」
 
 アクロの胸にエラのプラズマボールが穴を穿った時、僕の背後からミクの笑い声が響いた。

「きゃははは! 憑代はそんなところにないようだ」
「おのれ!」

 エラは僕の背後にいるテントウムシに向かって、プラズマボールを連射。

 しかし、プラズマボールは装甲に触れることなくことごとく弾き飛ばされる。

「なぜだ? なぜ、プラズマボールが当たらない?」
「きゃははは! 無駄! 無駄! テントウムシにそんなへなちょこ攻撃利かないようだ」
「式神使いよ。笑っている場合ではないぞ。おまえ、その乗り物から降りないと、大変な事になるぞ」
「はあ? 嘘をつくなら、もっとマシな嘘をついたら。テントウムシから出たら、プラズマボールの餌食じゃないの」

 本当に嘘なのだろうか?

 いや、嘘に決まっているのだが……嘘にしては下手過ぎる。

 まさか……
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