759 / 897
第十六章

久しぶりの陽光

しおりを挟む
 第一層でエレベーターを降りた僕達は、久しぶりの陽光を浴びた。

まぶしい!」
 
 ミールが眩しそうに、掌で目をおおう。

「私たち、やりげたのですね」

 僕の背後で芽依ちゃんがそう言ったとき、第一層出口前の広場に、ヘリコプターが着陸する。

 降りてきたのはレイホー。

「おにいさん達。迎えに来たね」

 駆け寄って来たレイホーに、陽光を浴びて銀色に輝くシリンダー状の物体……マテリアルカートリッジを僕は差し出した。

「レイホー。最後のカートリッジだ」
「これで、お父さんの治療ができるね?」
「ああ」

 レイホーがカートリッジをいとおしげに抱きしめていると、その背後からアーニャ・マレンコフが近寄る。

「それが、最後のカートリッジなのね。これで、章白龍を助ける事ができるのね」

 アーニャは、目に涙を浮かべていた。

 やはり、彼女は章白龍を愛していたのだな。

「二人とも、嬉しいのは分かるけど先を急ごう。そろそろ、レム神が騙された事に気づくころだから」
「そうね。カルカに戻るまでが遠足だわ。それにしても……」

 アーニャは、僕の方を振り返り笑顔を浮かべる。

「君は本当に人が良いわね」

 どういう事だ?

「悪い意味で言ったわけじゃないのよ。でも、あまりお人好しだと、他人に良いように使われちゃうわ。気を付けてね」
「どういう事です? 僕がお人好しって?」
「私たちにとって、章白龍は大切な人。でも、君にとってはほとんど面識のない他人。他人のために、こんなに頑張るなんてお人好しでしょ」

 その事か。

 確かに、お人好しと思われても仕方ないが、僕はけっして同情だけでこの作戦を実行したわけじゃない。

 あくまでも、自分のためにやった事だ。

 僕が、この惑星でこの先も生きて行くには、帝国軍と戦い続けなければならない。

 そのためには、味方は多い方が良いし、敵が弱くなってくれるとなお良い。

 ここで章白龍を助ける作戦を実行すれば、カルカの人たちからの信頼を勝ち取れて、心強い味方になってもらえる。

 なおかつ、帝国軍がリトル東京から奪ったカートリッジを奪還すれば、奴らを弱体化できて一石二鳥。

 もっとも、今では奴らもカートリッジの再充填が、可能になってしまったらしいが……

 その事をアーニャに話してみた。

「なるほど。あくまでも自分のためにやっていたのであって、章白龍を助けるのは打算という事ね」
「そうですよ。悪いですか」
「嘘ばっかり」

 え? 嘘などついていないが…… 

「君は、困っている人を放っておけない、優しい人なのよ。だから、こんな作戦を実行したのだわ」

 な……何を言ってるんだ?

「そんな事はありません。僕は、冷酷なマキャベリストです」

 そうだよ。僕はそんな善人じゃない。

「冷酷な男なら、ロータスの町を見捨てたと思うな」
「いや……それは……」
「そうね。冷酷な男なら、盗賊に追われている私を助けに駆けつけたりしないね」
「レイホーまでなに言ってんだよ。あんな状況見たら、普通助けに行くだろう」
「北村さんが冷酷だったら、アーテミスで子供たちが虐待されているのを見て、激怒して盗賊退治なんかしないと思います」
「いや、芽依ちゃん。あれは、ダニに賞金が掛かっているとキラから聞いて……なあキラ。あれは君と賞金山分けにするためだよな」

 だが、キラは首を横にふる。

「カイト殿が冷酷な男なら、私は最初に会った時に殺されていたはずだ」
「それはだな……」
「正直、私はあの時死を覚悟していた。勝てない相手にケンカを売ってしまったと後悔もした。だが、カイト殿は私を殺さなかった。最初はバカにされたのかとも思った。だが、今なら分かる。世の中にはカイト殿のように、優しい男もいるのだということも……」
「優しい男なんて、いくらでもいるだろう」
「少なくとも、私の周囲にはいなかった。女を物扱いするような男にしか会ったことがない」

 それは、キラの男運が悪かっただけだと思うけど……

 カチ!

 ヘルメット着脱ボタンの音……こういう事をするのはミールだな。

 振り向くと案の定、ミールが僕のヘルメットを抱えていた。

「カイトさん。みんなに誉められて、照れているのですか?」
「べ……別に、照れてなんか……」
「でも、顔が赤いですよ」
「え?」

 バカな! 酒を飲んでも赤くならない僕の顔が、このぐらいで赤くなるわけ……

「嘘です」

 そう言ってミールは、僕に飛びついて唇を重ねてきた。

 おい……みんなの見ている前で……
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

処理中です...