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第十六章
ミーチャはまだ知らない
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ミーチャはまだ、自分が接続されている事を知らない。
知ってしまったら、きっとミーチャは罪悪感に苛まれるだろう。
だから、ミーチャがその事を知らないまま接続を断ってやりたかったのに……
このままでは、ミーチャは気が付いてしまう。
僕とミールは、司令塔の両脇に張り出している潜舵の影に降りた。
ここなら、イリーナたちがいる司令塔の上からは死角になる。
「カイトさん。終わりました」
「よし。行こう」
僕は再びミールを抱き抱えて、甲板から飛び上がった。
司令塔の高さを越えると、ミーチャの首をイリーナたちが押さえつけている様子が目に入る。
「さあ、ミーチャ君。今度はこっちへ顔を向けてね」
「ヤダ! ヤダ やめて!」
涙を浮かべてミーチャは抵抗していた。
「どうして……どうしてこんな事をするの? 僕に何か恨みがあるの?」
頼むからミーチャ、気が付かないでくれ。知らない方が幸せなんだ。
「ごめんね。お姉さんは別にミーチャ君には恨みなんてないのよ。メイ・モリタは恨んでいるけど」
「どうして? メイさんは、優しいお姉さんなのに?」
「君は、子供だから分からないのよ。あの女は、とても腹黒なの。まあ、そんな事より……」
イリーナはミーチャの首を抱え込んだ。
「痛い! やめて!」
「いいから、こっちを向きなさい」
「ううう」
「目を瞑るな!」
「ヤダ! 僕に何をさせたいの? おばさん」
「お……おば……お姉さんと呼びなさい!」
すまん。ミーチャ。すぐに助けてやるから、もう少し我慢していてくれ。
「カイトさん」
声の方を見ると、ミールは僕の腕の中で怒りの形相を浮かべていた。
「あの女、後で八つ裂きにしていいですね?」
「え? いや……ミール……」
「カイトさんがダメだと言っても、やっちゃいますね。あたし、子供を虐待する大人って、許せない性格ですから……」
それは、僕も許せないが……あいつ最初は、マルガリータ姫のお気に入りだからと言って、部下には乱暴をやめさせていたのに……
「あの女を殺すと、カルルの恨みを買うからな。今は敵だが、接続を断てばカルルも味方に……」
「何を言っているのです! カルルだって、あんな性悪女に捕まらなくて済むのですよ」
「それもそうか。とにかく、今は作戦通りに行くぞ」
「はーい」
僕はワームホールの方を見つめた。
「イナーシャルコントロール・プロモーション2G」
ワームホールに向かって僕たちは進んでいく。
やがて、芽依ちゃんと橋本晶がドローン群相手に戦っている様子が見えてきた。
「二人とも大丈夫か?」
「北村さん。そろそろ弾切れです」
「隊長。雷神丸のエネルギーも後僅かで……」
「分かった。今から僕がワームホールに攻撃をかける。可能な限り援護してくれ」
「「はい!」」
僕はドローンの攻撃をかい潜り、ワームホールに向かって突進。
後少しで、ショットガンの有効射程に入ると思ったその時、唐突にワームホールが消滅した。
今まで飛び回っていたドローン群も、ワームホールからの誘導波が途切れて自律飛行になったのか、攻撃をしてこない。
「隊長! 新たなワームホールが!」
橋本晶が刀で指した先にあるのは《海龍》。ロボットスーツのカメラで映像を拡大すると、その後甲板にワームホールが出現していた。
ワームホールから帝国兵たちがわらわらと出てくる。
「隊長、このまま際限なく敵が出てきたら、キラさんの分身体だけでは防ぎ切れません」
橋本晶の言う通りだな。キラの分身体を倒すことは帝国兵にはできないが、それを操っているキラ本人は主砲の影にいる事は敵にも分かっているだろう。
このまま際限なくワームホールから敵が出てくれば、分身体一体では主砲の影にいるキラ本人とミクを守れない。
「北村さん。イリーナさんは私たちを《海龍》から引き離すために、こんな離れたところにワームホールを開いたようですね」
「なかなかいい作戦だ。だが、それは知っている」
「「え?」」
芽依ちゃんと橋本晶の頭上に?マークが浮かんだように見えたのは、僕の気のせいだろうか?
「ミール。やってくれ」
「はーい」
ミールは回復薬を飲み込んだ。
知ってしまったら、きっとミーチャは罪悪感に苛まれるだろう。
だから、ミーチャがその事を知らないまま接続を断ってやりたかったのに……
このままでは、ミーチャは気が付いてしまう。
僕とミールは、司令塔の両脇に張り出している潜舵の影に降りた。
ここなら、イリーナたちがいる司令塔の上からは死角になる。
「カイトさん。終わりました」
「よし。行こう」
僕は再びミールを抱き抱えて、甲板から飛び上がった。
司令塔の高さを越えると、ミーチャの首をイリーナたちが押さえつけている様子が目に入る。
「さあ、ミーチャ君。今度はこっちへ顔を向けてね」
「ヤダ! ヤダ やめて!」
涙を浮かべてミーチャは抵抗していた。
「どうして……どうしてこんな事をするの? 僕に何か恨みがあるの?」
頼むからミーチャ、気が付かないでくれ。知らない方が幸せなんだ。
「ごめんね。お姉さんは別にミーチャ君には恨みなんてないのよ。メイ・モリタは恨んでいるけど」
「どうして? メイさんは、優しいお姉さんなのに?」
「君は、子供だから分からないのよ。あの女は、とても腹黒なの。まあ、そんな事より……」
イリーナはミーチャの首を抱え込んだ。
「痛い! やめて!」
「いいから、こっちを向きなさい」
「ううう」
「目を瞑るな!」
「ヤダ! 僕に何をさせたいの? おばさん」
「お……おば……お姉さんと呼びなさい!」
すまん。ミーチャ。すぐに助けてやるから、もう少し我慢していてくれ。
「カイトさん」
声の方を見ると、ミールは僕の腕の中で怒りの形相を浮かべていた。
「あの女、後で八つ裂きにしていいですね?」
「え? いや……ミール……」
「カイトさんがダメだと言っても、やっちゃいますね。あたし、子供を虐待する大人って、許せない性格ですから……」
それは、僕も許せないが……あいつ最初は、マルガリータ姫のお気に入りだからと言って、部下には乱暴をやめさせていたのに……
「あの女を殺すと、カルルの恨みを買うからな。今は敵だが、接続を断てばカルルも味方に……」
「何を言っているのです! カルルだって、あんな性悪女に捕まらなくて済むのですよ」
「それもそうか。とにかく、今は作戦通りに行くぞ」
「はーい」
僕はワームホールの方を見つめた。
「イナーシャルコントロール・プロモーション2G」
ワームホールに向かって僕たちは進んでいく。
やがて、芽依ちゃんと橋本晶がドローン群相手に戦っている様子が見えてきた。
「二人とも大丈夫か?」
「北村さん。そろそろ弾切れです」
「隊長。雷神丸のエネルギーも後僅かで……」
「分かった。今から僕がワームホールに攻撃をかける。可能な限り援護してくれ」
「「はい!」」
僕はドローンの攻撃をかい潜り、ワームホールに向かって突進。
後少しで、ショットガンの有効射程に入ると思ったその時、唐突にワームホールが消滅した。
今まで飛び回っていたドローン群も、ワームホールからの誘導波が途切れて自律飛行になったのか、攻撃をしてこない。
「隊長! 新たなワームホールが!」
橋本晶が刀で指した先にあるのは《海龍》。ロボットスーツのカメラで映像を拡大すると、その後甲板にワームホールが出現していた。
ワームホールから帝国兵たちがわらわらと出てくる。
「隊長、このまま際限なく敵が出てきたら、キラさんの分身体だけでは防ぎ切れません」
橋本晶の言う通りだな。キラの分身体を倒すことは帝国兵にはできないが、それを操っているキラ本人は主砲の影にいる事は敵にも分かっているだろう。
このまま際限なくワームホールから敵が出てくれば、分身体一体では主砲の影にいるキラ本人とミクを守れない。
「北村さん。イリーナさんは私たちを《海龍》から引き離すために、こんな離れたところにワームホールを開いたようですね」
「なかなかいい作戦だ。だが、それは知っている」
「「え?」」
芽依ちゃんと橋本晶の頭上に?マークが浮かんだように見えたのは、僕の気のせいだろうか?
「ミール。やってくれ」
「はーい」
ミールは回復薬を飲み込んだ。
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