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第十六章
まだ甘いぞ
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ワームホールから出てきたスパイダーがハッチを開き、マルガリータ姫が顔を出した。
「カルル。遅くなって済まない。整備に手間取ってな」
手間取ったのは、カルルの仕業だとも知らずに……ある意味可哀想な人だな。
「それで、状況はどうなっておる?」
「は! 現状は……」
カルルが手短に説明する。
「それなら、ミーチャはもうここにいなくても良いのだな。では、妾が安全な場所に連れて行こう」
「お待ち下さい。ミーチャは今、ミクとの交換材料として取引中です」
「何を言うか! ミーチャは妾の弟じゃ! そのような取引に使うなど許さん!」
勝手に弟にされてもなあ。
「しかし、今ミーチャは人質でもあるので、ここから連れて行かれると……」
「ならぬ! 今すぐにでも、連れて行く」
緑のスパイダーは、司令塔にいるミーチャにマニュピレーターを伸ばした。
「させるかあ!」
その時、主砲の陰から飛び出してきたキラの分身体が、緑のスパイダーに体当たりする。
「おのれ。キラ・ガルキナ。邪魔をするな!」
「邪魔します!」
一方、主砲の陰では……
「キラ! 持ち場を離れてはだめよ」
「申し訳ありません、師匠。しかし、ミーチャを取られるわけには」
「もう、あたしの分身体は限界なのよ」
ミールの分身体が一斉に消滅したのはその時……
「チャンス! これで邪魔はなくなった。ミクはいただく」
司令塔の陰から、カルルの赤いスパイダーが駆け出して来た。
「うりゃあ! ブースト!」
同時に主砲の陰から駆け出してきた芽依ちゃんが、赤いスパイダーに殴りかかる。
「おっと!」
芽依ちゃんのパンチを、スパイダーは寸前で避けた。
「カルル・エステスさん。私の事をお忘れですか?」
「危ない危ない。森田芽依。まだおまえがいたか」
芽依ちゃんはショットガンを構える。
「だが、おまえ十分な充電をしていないだろう。しかもその貴重なエネルギーを、溶接に使ったな」
「死になさい! 消えなさい! くたばりなさい!」
カルルの問いに答えず、芽依ちゃんは戦乙女にチェンジする呪文を唱えながら連射。
しかし、スパイダーの素早い動きを捕らえる事はできない。
「エネルギーが尽きる前に。俺を片づけようというのか? はたしてできるかな?」
スパイダーがネットを放つ。
芽依ちゃんは空中へ逃れてネットを避けた。
「ワイヤーガンセット! ファイヤー!」
ワイヤーガンが、スパイダーの足の一本に刺さる。
「ウインチ スタート」
よし! ワイヤーガンで固定すれば、如何に素早いスパイダーでも……いや待て! 確かスパイダーの足って、カタログによると……
「芽依ちゃん、よせ! 罠だ!」
僕の声が届いた時には、すでに手遅れ。
芽依ちゃんは、スパイダーに肉薄して殴り掛かるところだったのだ。
「うりゃあ! ブースト! え?」
絶対に避けられないはずの芽依ちゃんのブーストパンチは、空を切った。
そこにはスパイダー本体はなく、ワイヤーガンの刺さった足があるだけ。
カタログによるとスパイダーの足は、いざとなったら切り離す事ができるようになっていたのだ。
「スパイダーはどこ? きゃ!」
芽依ちゃんの機体に、スパイダーの放ったネットが覆い被さる。
芽依ちゃんは高周波カッターを抜いて脱出を計るが、カルルは次々とネットを被せていく。
「森田芽依。それだけ多くのネットを被っていては、すぐには脱出できまい」
「確かにすぐには動けません。でも、カルル・エステスさん。何かを忘れていませんか?」
「なに? は! しまった!」
カルルが慌てて上を見上げると、そこでは抜き身の日本刀を構えたスミレ色の九九式が、急降下してくるところだった。
「でやあああ!」
橋本晶が刀をふるい、スパイダーの残りの足を切断。
支えを失ったスパイダーの本体は、甲板上に落ちる。
そのまま海に、転げ落ちそうになるところを橋本晶の九九式が支えた。
スパイダーのハッチが開き、カルルが顔を出す。
「橋本晶。おまえの事を、忘れていたわけではなかったよ。一向に動かないので、まだ充電中かと思っていた」
「充電はとっくに終わっていました。ここ一番というタイミングを見計らって、出てきたのですよ」
「なるほど。いいタイミングだったな。しかし、まだ甘いぞ」
「なに?」
カルルは、スパイダーから飛び降りた。
「どっちにしても、スパイダーの力ではあのコンテナをどうこうする事はできない。だが、これならどうかな?」
カルルは、コンテナの方に視線を向ける。
その直後、コンテナの真上にワームホールが出現した。
「カルル。遅くなって済まない。整備に手間取ってな」
手間取ったのは、カルルの仕業だとも知らずに……ある意味可哀想な人だな。
「それで、状況はどうなっておる?」
「は! 現状は……」
カルルが手短に説明する。
「それなら、ミーチャはもうここにいなくても良いのだな。では、妾が安全な場所に連れて行こう」
「お待ち下さい。ミーチャは今、ミクとの交換材料として取引中です」
「何を言うか! ミーチャは妾の弟じゃ! そのような取引に使うなど許さん!」
勝手に弟にされてもなあ。
「しかし、今ミーチャは人質でもあるので、ここから連れて行かれると……」
「ならぬ! 今すぐにでも、連れて行く」
緑のスパイダーは、司令塔にいるミーチャにマニュピレーターを伸ばした。
「させるかあ!」
その時、主砲の陰から飛び出してきたキラの分身体が、緑のスパイダーに体当たりする。
「おのれ。キラ・ガルキナ。邪魔をするな!」
「邪魔します!」
一方、主砲の陰では……
「キラ! 持ち場を離れてはだめよ」
「申し訳ありません、師匠。しかし、ミーチャを取られるわけには」
「もう、あたしの分身体は限界なのよ」
ミールの分身体が一斉に消滅したのはその時……
「チャンス! これで邪魔はなくなった。ミクはいただく」
司令塔の陰から、カルルの赤いスパイダーが駆け出して来た。
「うりゃあ! ブースト!」
同時に主砲の陰から駆け出してきた芽依ちゃんが、赤いスパイダーに殴りかかる。
「おっと!」
芽依ちゃんのパンチを、スパイダーは寸前で避けた。
「カルル・エステスさん。私の事をお忘れですか?」
「危ない危ない。森田芽依。まだおまえがいたか」
芽依ちゃんはショットガンを構える。
「だが、おまえ十分な充電をしていないだろう。しかもその貴重なエネルギーを、溶接に使ったな」
「死になさい! 消えなさい! くたばりなさい!」
カルルの問いに答えず、芽依ちゃんは戦乙女にチェンジする呪文を唱えながら連射。
しかし、スパイダーの素早い動きを捕らえる事はできない。
「エネルギーが尽きる前に。俺を片づけようというのか? はたしてできるかな?」
スパイダーがネットを放つ。
芽依ちゃんは空中へ逃れてネットを避けた。
「ワイヤーガンセット! ファイヤー!」
ワイヤーガンが、スパイダーの足の一本に刺さる。
「ウインチ スタート」
よし! ワイヤーガンで固定すれば、如何に素早いスパイダーでも……いや待て! 確かスパイダーの足って、カタログによると……
「芽依ちゃん、よせ! 罠だ!」
僕の声が届いた時には、すでに手遅れ。
芽依ちゃんは、スパイダーに肉薄して殴り掛かるところだったのだ。
「うりゃあ! ブースト! え?」
絶対に避けられないはずの芽依ちゃんのブーストパンチは、空を切った。
そこにはスパイダー本体はなく、ワイヤーガンの刺さった足があるだけ。
カタログによるとスパイダーの足は、いざとなったら切り離す事ができるようになっていたのだ。
「スパイダーはどこ? きゃ!」
芽依ちゃんの機体に、スパイダーの放ったネットが覆い被さる。
芽依ちゃんは高周波カッターを抜いて脱出を計るが、カルルは次々とネットを被せていく。
「森田芽依。それだけ多くのネットを被っていては、すぐには脱出できまい」
「確かにすぐには動けません。でも、カルル・エステスさん。何かを忘れていませんか?」
「なに? は! しまった!」
カルルが慌てて上を見上げると、そこでは抜き身の日本刀を構えたスミレ色の九九式が、急降下してくるところだった。
「でやあああ!」
橋本晶が刀をふるい、スパイダーの残りの足を切断。
支えを失ったスパイダーの本体は、甲板上に落ちる。
そのまま海に、転げ落ちそうになるところを橋本晶の九九式が支えた。
スパイダーのハッチが開き、カルルが顔を出す。
「橋本晶。おまえの事を、忘れていたわけではなかったよ。一向に動かないので、まだ充電中かと思っていた」
「充電はとっくに終わっていました。ここ一番というタイミングを見計らって、出てきたのですよ」
「なるほど。いいタイミングだったな。しかし、まだ甘いぞ」
「なに?」
カルルは、スパイダーから飛び降りた。
「どっちにしても、スパイダーの力ではあのコンテナをどうこうする事はできない。だが、これならどうかな?」
カルルは、コンテナの方に視線を向ける。
その直後、コンテナの真上にワームホールが出現した。
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