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第十六章

乱戦

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 マルガリータ姫がドローンと同士討ちをやっている間に、橋本晶は足に絡まったネットを外し終えていた。

「おのれ! わらわの足を引っ張りおって」

 その様子を見たマルガリータ姫は、悔しそうにドローンの残骸を蹴り飛ばす。

 いやいや、足を引っ張ってなんかいないだろう。

 あんたがドローンと連携プレーを取っていれば、橋本晶は詰んでいたかもしれない。

 まあ、敵が間抜けである事は、こっちにとってありがたいが……

「でやぁぁ!」

 そんなマルガリータ姫に向かって、橋本晶は雷神丸と風神丸の二刀流で切りかかっていく。

「何の!」

 マルガリータ姫の投げた鎖分銅が、風神丸に絡みつく。

「やあ!」「とう!」

 ガチ!

 切りかかってくる雷神丸を、マルガリータ姫は鎌で受け止め、降着状態となった。

 その様子を僕は、ぼうっと見ていた分けではない。

 チラチラと様子を見ながらも、ワームホールにロケット砲を向けているところだった。

 最初に装填した弾は、対空誘導弾。

 この一発で、ワームホール前に集結しているドローン群を吹き飛ばしてから、ワームホールに突入して時空穿孔機を破壊するつもりだ。

 狙いを定めてトリガーを引く。

 ロケット弾は、吸い込まれるようにワームホールに突入していった。

 直後、ワームホールから爆風が吹き出す。

 紫雲からの映像によると、ドローン群の中で爆発が起きていた。

 しかし、自爆型カミカゼドローンのように誘爆は起きない。

 落とせたのは三機だけで、残った十数機のドローンは、巣をつつかれて怒り狂ったスズメバチのごとく、ワームホールから飛び出して来る。

 その中の二機が、僕に向かって撃ってきた。

 一発の銃弾が脇腹を掠める。

 掠めただけなのにかなりの衝撃だ。こりゃあ直撃食らったらアウトだな。

 しかし、その分反動が大きいのか、ドローンはバランスを大きく崩していた。

 そのまま墜落するという事は無かったが、バランスを取り戻すのに数秒かかっている。

 なるほど。対物アンチマテリアルライフル搭載ドローンが連射しない理由はこれか。

 連射しないのではなく、反動が強すぎて連射できないんだ。

「司令官殿!」

 エラの声が聞こえた方へ目を向けると、主砲の前でエラが両手を前方に突き出し、高周波磁場を展開していた。

 その後にミールたちが待避している。

 ドローンはエラに向かって射撃するが、弾丸はことごとく高周波磁場に捕まってプラズマ化していく。

 高周波磁場を回り込もうとするドローンは、芽依ちゃんがショットガンで撃墜し、正面から迫るドローンをナージャがレーザーで撃墜していた。

「司令官殿! こちらの守りは大丈夫だ。心おきなくワームホールを」
「了解!」

 味方にすると厄介なんて思っていたが、以外とエラは役に立ってくれている。

 僕はロケット砲を構えると、群がるドローンを蹴散らしながらワームホールに向かった。

 しかし……

「くそ!」

 僕が飛び込む寸前でワームホールは閉じた。
 
 しかし、ワームホールが閉じればドローンの誘導波も途切れるはず。

 それなのにドローンは戦闘を継続していた。

 見ると《海龍》司令塔の上にワームホールが開いている。

 さっき一度閉じたワームホールを開きなおしたのか。

 それなら、紫雲ともコンタクトできるはず。

 紫雲を呼び出すと、ワームホール前に帝国兵数十名が集結しているところだった。

 させるか!

 僕の放ったロケット弾はワームホールを抜け、集結中の兵士たちのど真ん中で炸裂した。
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