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第十六章
十数日前、リトル東京では……
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話は十数日ほど遡る。
海斗達が北ベイス島に山頂基地を設営した頃、リトル東京では……
リトル東京防衛隊第二作戦会議室は、地下深くに作られている。
そこには、森田指令を始め数名の幹部が集合しており、その中には額に入れ墨を入れられた三人目の海斗と、一緒にカルカから帰還したばかりの鹿取香子の姿もあった。
彼ら彼女らの見つめている大型プロジェクターには、巨大なクレーターが映っている。クレーターの底はかなりの高温なのか、激しく煙を吹き上げていた。
オペレーターの一人が報告する。
「ただいまドローンを地中に潜り込ませています。まもなく、結果が判明するかと……」
「報告を待つまでもないですね」
諦め気味にそう言ったのは香子。
「衛星軌道から精密誘導弾二発を投下。さらにドローンから地中貫通弾七発を投下したのです。レム神のコンピューターセンターは、跡形もないでしょう」
「そうだな」
そう言った海斗の顔も、失望を隠せていない。
海斗と香子だけでなく、ここにいる全員が失望の色を隠していなかった。
「カルカから提供された情報を元に、最後のコンピューターセンターを攻撃して完全に破壊した。それなのに……」
「レム神の影響は、消えていないわね」
影響が消えないのは、破壊したはずのコンピューターセンターがまだ生き残っているからという可能性もあった。
そこで確認のためにドローンを送り込んで偵察を試みたのであるが、コンピューターセンターは完全に機能を停止しているという事実を確認する結果となった。
「つまり、ここは最後のコンピューターセンターではなかったという事か」
「おそらく、カルカが核攻撃を受けた時点では、ここが最後だったのだわ。だけど、レム神が二十五年の間に何もしないはすがない。予備のコンピューターセンターを作っていたのよ」
「まあ、当然そうするだろうな」
「《天竜》は、熱源探知でコンピューターセンターを見つけたのよ。今からでも……」
「衛星軌道からの熱源探知なら、とっくにやったよ。奴は熱源をカモフラージュしたようだ。まったく見つからない。熱源探知がダメだとすると、どうやってこの広大な惑星から見つけ出すんだ」
諦めムードの漂う中、森田指令が厳かに発言する。
「諸君。失望するのはまだ早い。我々にはまだ手段が残されている」
「指令。プシトロンパルスの事ですか? だけど観測装置を作れるルスラン・クラスノフ博士を、もう一人の僕がアーテミスの町へ置き去りにしやがった。捜索隊が町中をくまなく探したのに見つからない。南ベイス島に帰ったという報告もない。いったいどこに行ったのか? 指令、もう一人の僕が申し訳ないです」
「海斗、しょうがないでしょ。報告によるとルスラン・クラスノフ博士ってとんでもないスケベジジイで、芽衣ちゃんもミールちゃんもセクハラ被害に遭っているのよ。海斗だったら許せるの?」
「いや、許せない」
オペレーターがメールの着信を報告したのはその時の事。
「カルカ艦隊からメールだと? して、なんと」
「はい。リトル東京への亡命希望者が、《海龍》に密航していたそうです」
「そんな事は、ここで処理すべきことではないだろう」
「そうなのですが、亡命希望者の名前を見て指令に判断を委ねたいと……」
「誰なのかね?」
「それが、今話題に上がっていたルスラン・クラスノフ博士と……」
「「「「ぬわにいぃぃぃ!」」」」
森田指令は、メールの文面に目を走らせてから、オペレーターに指示を出した。
「直ちに、北村君に返信を送れ」
「はい。文面はどのように?」
「ルスラン・クラスノフ博士を、リトル東京へ丁重にお連れしろと……」
「了解しました」
そして十数日後。
リトル東京のヘリポートに、二機のヘリコプターが降り立ったのだった。
(第十六章終了)
海斗達が北ベイス島に山頂基地を設営した頃、リトル東京では……
リトル東京防衛隊第二作戦会議室は、地下深くに作られている。
そこには、森田指令を始め数名の幹部が集合しており、その中には額に入れ墨を入れられた三人目の海斗と、一緒にカルカから帰還したばかりの鹿取香子の姿もあった。
彼ら彼女らの見つめている大型プロジェクターには、巨大なクレーターが映っている。クレーターの底はかなりの高温なのか、激しく煙を吹き上げていた。
オペレーターの一人が報告する。
「ただいまドローンを地中に潜り込ませています。まもなく、結果が判明するかと……」
「報告を待つまでもないですね」
諦め気味にそう言ったのは香子。
「衛星軌道から精密誘導弾二発を投下。さらにドローンから地中貫通弾七発を投下したのです。レム神のコンピューターセンターは、跡形もないでしょう」
「そうだな」
そう言った海斗の顔も、失望を隠せていない。
海斗と香子だけでなく、ここにいる全員が失望の色を隠していなかった。
「カルカから提供された情報を元に、最後のコンピューターセンターを攻撃して完全に破壊した。それなのに……」
「レム神の影響は、消えていないわね」
影響が消えないのは、破壊したはずのコンピューターセンターがまだ生き残っているからという可能性もあった。
そこで確認のためにドローンを送り込んで偵察を試みたのであるが、コンピューターセンターは完全に機能を停止しているという事実を確認する結果となった。
「つまり、ここは最後のコンピューターセンターではなかったという事か」
「おそらく、カルカが核攻撃を受けた時点では、ここが最後だったのだわ。だけど、レム神が二十五年の間に何もしないはすがない。予備のコンピューターセンターを作っていたのよ」
「まあ、当然そうするだろうな」
「《天竜》は、熱源探知でコンピューターセンターを見つけたのよ。今からでも……」
「衛星軌道からの熱源探知なら、とっくにやったよ。奴は熱源をカモフラージュしたようだ。まったく見つからない。熱源探知がダメだとすると、どうやってこの広大な惑星から見つけ出すんだ」
諦めムードの漂う中、森田指令が厳かに発言する。
「諸君。失望するのはまだ早い。我々にはまだ手段が残されている」
「指令。プシトロンパルスの事ですか? だけど観測装置を作れるルスラン・クラスノフ博士を、もう一人の僕がアーテミスの町へ置き去りにしやがった。捜索隊が町中をくまなく探したのに見つからない。南ベイス島に帰ったという報告もない。いったいどこに行ったのか? 指令、もう一人の僕が申し訳ないです」
「海斗、しょうがないでしょ。報告によるとルスラン・クラスノフ博士ってとんでもないスケベジジイで、芽衣ちゃんもミールちゃんもセクハラ被害に遭っているのよ。海斗だったら許せるの?」
「いや、許せない」
オペレーターがメールの着信を報告したのはその時の事。
「カルカ艦隊からメールだと? して、なんと」
「はい。リトル東京への亡命希望者が、《海龍》に密航していたそうです」
「そんな事は、ここで処理すべきことではないだろう」
「そうなのですが、亡命希望者の名前を見て指令に判断を委ねたいと……」
「誰なのかね?」
「それが、今話題に上がっていたルスラン・クラスノフ博士と……」
「「「「ぬわにいぃぃぃ!」」」」
森田指令は、メールの文面に目を走らせてから、オペレーターに指示を出した。
「直ちに、北村君に返信を送れ」
「はい。文面はどのように?」
「ルスラン・クラスノフ博士を、リトル東京へ丁重にお連れしろと……」
「了解しました」
そして十数日後。
リトル東京のヘリポートに、二機のヘリコプターが降り立ったのだった。
(第十六章終了)
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