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第十七章

観測装置

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 敵ドローン撃墜を確認してから、僕はワームホール内へ送り込んであった偵察ドローン彩雲から送られてくる映像をバイザーに映した。

 相変わらず粉塵が酷くて、鮮明な映像が得られない。

 赤外線観測に切り替えると、粉塵の中で横たわっている人間が十数人見つかった。

 死んでいるのか、重傷を負っているのか、ほとんど動くことはない。

 いずれにしても、これだけ濃密な粉塵の中では防護服無しには活動できないだろう。

「高度をもう少し上げてくれ」
「はい」

 しかし、高度が上がっても視界は回復しない。

 時空穿孔機や時空管を動かすロボットアームが、どうなっているかそれだけでも知りたいのだが……

「近接レーダーが天井を感知しました。これ以上上昇するのは危険です」

 天井一杯まで上昇しても視界は晴れないか。

「着陸することはできるかい?」
「やってみます。ところで、着陸してどうするのですか?」
「自動観測モードにして、視界が晴れるのを待つ」
「敵に鹵獲ろかくされた場合は?」
「その時は、AIの判断で自爆させるしかないな」
「分かりました」

 後は、粉塵が治まるのを待つしかないか。

 それよりも、ワームホールが出現したと言うことは近くに接続者がいるはず。

 僕は通信機でアスカを呼び出した。

「アスカ。君には、プシトロンパルスの観測装置は装備されているか?」

 これがあれば、接続者を見つける事ができるのだが……

『私本体には、装備されておりません』

 だめか。

『しかし、私の搭載ドローン彩雲には装備されています』

 なに!?

「それなら彩雲を出撃させて、近くにいる接続者を探すことはできるかい?」
『可能です』
「ではやってくれ」

 そうだ! 彩雲にそれがあるなら、地下施設にいる接続者の居場所も見つけられるはず。

 僕は橋本晶の方を振り向く。

「橋本君。彩雲にはプシトロン観測装置が装備されているそうだ。確認してくれ」
「しばしお持ちを」

 そう言って彼女は、何もない空中で左右の手を走らせた。 

 僕には見えていないが、橋本晶の目には彩雲を操作するための仮想バーチャルコンソールが見えているはず。

「隊長。観測装置がありました」
「使えるかい?」
「大丈夫です。出発前にプシトロン観測装置の取説を、ブレインレターで学習インストールしておきましたので」

 そう言ってから、橋本晶は観測装置の操作を開始した。

「隊長。接続者を見つけました」

 着陸していた彩雲を再び発進させた。

 視界は回復しないが、接続者に近づけば赤外線か近接レーダーでわかるはず。

 しかし、接続者に近づくと壁に阻まれてしまった。

「別の方向から、近づいてみてくれ」
「はい」

 しかし、どの方向から近づいても近接レーダーが壁を感知する。

 どうやら、ここにはドーム状の構造物があり、接続者はその中に隠れているらしい。

 まあ、そうでもなかったら、この粉塵の中で無事でいられるはずがない。

「簡易シェルターでも、持ち込んだのでしょうか?」
「いや、橋本君。これはおそらく、時空穿孔機の保護カバーだ」
「保護カバー? そんなものがあったのですか?」
「以前にスーホから聞いたんだ。時空穿孔機の心臓部は、一度壊れたら簡単に修復できないらしい。だから、時空穿孔機に危険が生じたらドーム状の保護カバーに覆われるそうだ」
「では、このドームがそうなのですか?」
「おそらく」

 アスカから接続者発見の報告が届いたのは、この時だった。
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