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第十七章

砲撃要請

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 ワームホールからは、続々と小型ドローンが出てきていた。

 時折、OL10も出てくる。

 これ以上増えられたら厄介だな。早いとこ《はくげい》と連絡を取らないと……

 ミールを抱き抱えたまま、僕は通信機を操作した。

 しかし、片手だと操作し難い。

 おっと! また、押し間違えた。

「ごめんなさい。あたしを抱えているせいで、通信機が上手く使えないのですね」
「気にしなくていいよ、ミール」
「でも……」
「僕にとって一番大切な事は、ミールを守ることだ」
「え?」
「そのぐらいなら、この程度の事……」

 と、言ってる側から操作をミスった。

 連絡を取れないと、ミールを守ることもできないのだが……

「カイトさん。なぜ、ロボットスーツの通信機を使わないのですか?」
「ああ。スーツの通信機は、どうも帝国軍に盗聴されているらしいのだよ。だから、この量子暗号通信機を使っている」
「そうですか。でも、あたしを抱えたままじゃ使いにくいですよね?」
「まあ、そうだが……なんとかするさ」
「それ、ちょっと貸して下さい」
「いや、ミールに操作はできないだろう」
「ええ、操作できませんが、支えるぐらいならあたしにもできます」
「そっか」

 ミールに通信機を渡すと、彼女は通信機の操作盤を僕の方へ向けてきた。

「さあ、カイトさん。これなら使いやすいでしょ」
「ありがとう。ミール」

 ミールが支えてくれている通信機を操作した。

 今度は、誤操作なしで《はくげい》の呼び出しに成功。

「長津田艦長。至急、支援砲撃をお願いします」
『北村二佐。済まないが、対空砲弾はさっきの戦いで撃ち尽くし……』
「いえ。目標は、ドローンではありません」
『なに?』
 
 ワームホールの映像を送った。

「砲撃の目標は、これです」
『ワームホール? 無理だ。こんな小さな標的に直撃させるのは』
「直撃の必要はありません。ワームホール周辺に、着弾させていただければ結構です」
『周辺に着弾?』

 長津田艦長はしばし考え込む。

『なるほど。水攻めですね』

 どうやら、長津田艦長は僕の意図を理解してくれたらしい。

 今回のワームホールは、水面ギリギリに開いてしまった。

 そのせいでこれ以上ワームホールを広げると、地下施設に水が流れ込んでしまう。

 だから、大きさが制限されているのだ。

 この大きさでは偵察ドローンOL10はぎりぎり通れるが、S131は主翼が引っかかって通れない。

 苦肉の策で、小型の攻撃ドローンを送り込んできたのだろう。

「周辺で、派手に水柱をあげてやればワームホールの向こうに大量の水を送り込めます」

 それで敵がワームホールを閉じてくれるかは分からないが、ひっきりなしに大量の水が押し寄せてきたら、危なくて自爆ドローンなど送り込めない。

 そうやって時間を稼げば、その間に小机准尉の疾風はやてが到着して、ワームホールを直接攻撃できる。

『分かりました。水攻めに使えそうな強力な弾丸を装填するので、一分ほど待っていて下さい』
「了解。待っています」

 通信を切ってから、後ろを振り返る。

 すぐ後ろに、機動服中隊の面々が集合していた。

「一分後に支援砲撃が来る。それまで持ちこたえよう」
「隊長。その前によろしいですか?」
「なんだい? 古淵」
「我々の弾薬は残り僅かです。そこで攻撃をOL10のみに絞ってみてはどうでしょう?」
「小型ドローンは無視するというのか? なぜだ?」
「詳しく話している時間はありませんが、おそらくOL10を落とせば、小型ドローンは無力化できる可能性があります」

 なぜだ? いや、聞いている時間はなさそうだな。

 すでに十機ほど出てきた小型ドローンが、こっちへと向かって来ている。

「分かった。古淵を信じよう」

 小型ドローンとは違い、OL10は百メートル上空に待機していた。

 その数は四機。

 こっちへ向かってくる様子はない。

「突撃!」

 僕達は上空に待機するOL10に向かっていった。
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