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呪殺師は可愛い男の子が好き

なんで僕が?

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「なんで僕が?」

 その予告状を読み、僕が思わずそう言ったのは、霊能者協会西東京支部での事。

 机の向こうでは芙蓉さんが、悩ましげな顔をして僕を見つめている。

「私が聞きたいぐらいだわ。優樹君。何かこの人に、指名されるような覚えはないの?」
「ありません。そもそも、僕は人から恨まれるような覚えなんて……」
「あるでしょ」

 声の方に顔を向けた。

「樒。君は、僕に何か恨みでもあるのか?」
「私はないけど、あんただって恨みの一つぐらい買っているでしょ。ゲームで、レベル差攻撃したとか」
「あれはギルメンに頼まれて仕方なく……てか、樒も頼んだ一人だろ! それに、たかがゲームの恨みで、こんな事をする奴なんて……」
「いたでしょ。エラが」
「まあ。いないとは言い切れないが……」
「それとさ、あんたここ数日、下駄箱にラブレター入っていたじゃない。ちゃんと返事しているの? 返事をしないで、相手に恨まれているんじゃないの?」

 確かにここ数日、僕の下駄箱にラブレターが入っていた。

 最初は嬉しかったりもしなくはなかったが、連日で入っているとちょっと不気味に思えてくる。

 それに、スマホ全盛の今時に紙のラブレターを下駄箱になんて……

 しかも内容はいつも一言だけ……

 なにより……

「樒。差出人の書いてないラブレターに、どうやって返事をするんだよ」
「え? 書いてなかったの?」

 僕はコクッと頷いた。

「じゃあ、『どっかで会いましょう』とか……」
「そういうのもない」

 内容はいつも『あなたが好きよ』とか『優樹キュン可愛い』とか一言だけ。
 
「とにかく、優樹君は身に覚えないのね?」
「ありませんよ。芙蓉さん」
「そう。ところで、実は今日、権堂氏から正式に護衛の依頼があったのよ。一応、協会としては呪術からの護衛を依頼してきた人は、原因を調べることにしているの。一回や二回なら護衛する事はできるけど、呪術は警察では対応できない。だから、一回や二回防いでも、術者は何度でも呪いをかけてくるわ。やめさせるには、術者と交渉する必要があるの」
「原因を調べたのですか?」
「ええ。協会所属のテレパスとサイコメトラーをつけて聞き取りに行ってきたわ」
「で、どうでした?」

 芙蓉さんは首を横に振った。

「権堂氏に、呪いをかけそうな人を特定できるような情報は得られなかったわ。それにこの人は法律に触れるような事はしていない。まあ、まったくなかったわけではないけど、呪われるような事ではなかったので、このことは協会内部の秘密にすることになったの」
「権堂氏は、何をやらかしていたのですか?」
「樒さん。それはプライバシーに関することなので話せません」

 そうだろうな。

「芙蓉さん。私たちだけなら、話してもいいんじゃないの? それとも、私と優樹がその情報を悪用するとでも?」
「優樹君は、そんな事をする子ではないと信じています」
「私は?」
「やるかもしれません」
「ひどい! そんなに私が信用できないの」
「はい。信用できません」

 いや、どうやったら信用できるんだ。今まで散々不正請求しておいて……

「まあ、それはいいとして」
「よくない!」

 樒の抗議を無視して、芙蓉さんは話を続けた。
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