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事故物件
イヤな予感
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番組を見ていて僕が出ていた事に気が付いた教師……氷室先生から、呼び出しを受けて指導室に入ったのは放課後の事。
「社君。うちの学校ではバイトは禁止されていないけど、事前にバイト先を届け出なければならない事は知っているわね?」
「はい。知っていますが」
「では、これは何?」
そう言って、氷室先生はスマホを出す。
そこには『六道魔入の怪奇レポート』の録画が出ていた。
「霊能者協会のバイトは届け出があったけど、テレビの仕事の届け出は出ていないわね。まだ、このことは私のところで止めているけど……」
なんか誤解されているなあ……
「今なら、私しか気が付いていないわ」
そう言って先生は用紙を差し出した。
「今、ここに必要事項を書き込んでくれたら、私が数日前に君から受け取って、担任の先生に渡すように頼まれていたのを忘れていた事にして上げるから」
氷室先生、優しいなあ。でも、これは……
「先生違うんです、これは……」
僕は経緯を説明した。
「じゃあ、あくまでも霊能者協会の仕事で行っただけで、テレビ番組の仕事だとは知らなかったのね?」
「ええ。後になってテレビ番組の取材と分かったけど、僕と樒の顔は出さないと約束してくれたのに……」
「分かったわ。じゃあこの事は、テレビ局に抗議しなきゃ」
「すでに協会の方からも、文書で抗議が送られたそうです」
「私からも、抗議しておくわ」
「先生、そこまでしなくても……」
「いいえ。可愛い教え子の肖像権が侵害されたのよ。謝罪させないと。もし、謝罪に応じない時は、呪いをかけて……」
「え? 呪い?」
先生も霊能力があるのは知っていたけど、呪いもかけられるのだろうか?
だが、先生は慌てて否定した。
「ああ! いや、私が呪うのではなくて、呪殺師ヒョーに依頼して……」
「先生! それだけはやめて!」
「え? どうして?」
「僕……あの人、怖いんです。関わりたくないんです」
「そ……そうなの? 社君がそんなに怖がるのなら、やめておくわね」
「ていうか、先生はあの人とコンタクトが取れるのですか?」
「え? まあ……一応、依頼をする方法は知っているから。私は……依頼したことはないけど」
「どうやって依頼するのですか?」
「それは言えないわ。言ったら、私の身が危ないから」
「そうですよね……」
スマホの着信音が鳴ったのはその時……
「すみません。マナーモードにしていなかった」
電話を切ろうとして僕の動きは止まる。
相手は千尋さん?
「社君。誰から?」
「その……芸人さんからです」
「ちょうどいいわ。電話に出なさい」
電話に出た。
『ごめんなさい。社さん。こんな事になって』
「千尋さん。どうしてこんな事になったのです?」
『それがね。言いにくいのだけど、これは事故じゃないと思うの』
事故じゃない?
『実は番組のプロディーサーが、君の事を気に入ってしまって、レギュラーで出てほしいと……』
「はあ? そんなの、ダメに決まっているでしょ」
『そうよねえ。私もそう言ったのだけど、うちのプロディーサーは強引で……今回の件も、事故に見せかけて君の顔を出して、反応を見ようという魂胆だと思うの』
「いったい、僕のどんな反応を期待していたのです? その人は?」
『私もよく分からないけど……おそらく顔を出して、なんの抗議もなければ、話を進めようとかいうつもりだったのだと思うわ』
「それじゃあ抗議します。すでに協会から文書で抗議が送られていると思うけど、ちょうど学校の先生も抗議してくれると言っているし……」
僕は先生の方を振り向く。
「先生。今でもいいですか?」
先生はにっこりと微笑んでくれていた。
「私は、いつでもいいわよ」
「それじゃあ、今から先生と代わります」
『ちょっと待って! 私もプロディーサーと代わるから、抗議はそっちにお願い』
先生の方を向く。
「と、言っておりますが」
「良いわよ。ただ、私が抗議する時はスゴく怖い声を出すの。社君が怖がるといけないから、ベランダでやるわね」
先生は僕のスマホを受け取ってベランダへ出ていった。
しかし、怖い声って、どんなことを言うのだろう?
『おんどりゃあ! うちの生徒に、なんちゅうことさらすんじゃ! ぼけ! しばくぞ! ごらあ!』
というようなことでも言うのかな?
いやいや、あの女神のような先生が、そんなヤクザ言葉なんて使うわけないよ。
先生がベランダから戻ってきたのは数分後。
「社君。話は付いたわ。プロディーサーが後で謝罪すると言っているわよ」
「先生ありがとうございます」
「レギュラー入りの件も諦めさせたわ」
よかった。
「ただ、六道魔入さんが、今後も指名依頼する事があるけれど、それは受けてあげてね」
え? ちょっとイヤかも……
「指名料は倍出すと言っているわ。それと、素顔は絶対出さないと約束させたわ」
「それなら、良いですけど……また今回みたいに、事故に見せかけてモザイクを外すなんてやらないでしょうね?」
「そういう事ができないように、当日は君だとばれないようなメイクしてからカメラを回すと言っていたわ」
「そうですか」
でも、なんかイヤな予感が……
「社君。うちの学校ではバイトは禁止されていないけど、事前にバイト先を届け出なければならない事は知っているわね?」
「はい。知っていますが」
「では、これは何?」
そう言って、氷室先生はスマホを出す。
そこには『六道魔入の怪奇レポート』の録画が出ていた。
「霊能者協会のバイトは届け出があったけど、テレビの仕事の届け出は出ていないわね。まだ、このことは私のところで止めているけど……」
なんか誤解されているなあ……
「今なら、私しか気が付いていないわ」
そう言って先生は用紙を差し出した。
「今、ここに必要事項を書き込んでくれたら、私が数日前に君から受け取って、担任の先生に渡すように頼まれていたのを忘れていた事にして上げるから」
氷室先生、優しいなあ。でも、これは……
「先生違うんです、これは……」
僕は経緯を説明した。
「じゃあ、あくまでも霊能者協会の仕事で行っただけで、テレビ番組の仕事だとは知らなかったのね?」
「ええ。後になってテレビ番組の取材と分かったけど、僕と樒の顔は出さないと約束してくれたのに……」
「分かったわ。じゃあこの事は、テレビ局に抗議しなきゃ」
「すでに協会の方からも、文書で抗議が送られたそうです」
「私からも、抗議しておくわ」
「先生、そこまでしなくても……」
「いいえ。可愛い教え子の肖像権が侵害されたのよ。謝罪させないと。もし、謝罪に応じない時は、呪いをかけて……」
「え? 呪い?」
先生も霊能力があるのは知っていたけど、呪いもかけられるのだろうか?
だが、先生は慌てて否定した。
「ああ! いや、私が呪うのではなくて、呪殺師ヒョーに依頼して……」
「先生! それだけはやめて!」
「え? どうして?」
「僕……あの人、怖いんです。関わりたくないんです」
「そ……そうなの? 社君がそんなに怖がるのなら、やめておくわね」
「ていうか、先生はあの人とコンタクトが取れるのですか?」
「え? まあ……一応、依頼をする方法は知っているから。私は……依頼したことはないけど」
「どうやって依頼するのですか?」
「それは言えないわ。言ったら、私の身が危ないから」
「そうですよね……」
スマホの着信音が鳴ったのはその時……
「すみません。マナーモードにしていなかった」
電話を切ろうとして僕の動きは止まる。
相手は千尋さん?
「社君。誰から?」
「その……芸人さんからです」
「ちょうどいいわ。電話に出なさい」
電話に出た。
『ごめんなさい。社さん。こんな事になって』
「千尋さん。どうしてこんな事になったのです?」
『それがね。言いにくいのだけど、これは事故じゃないと思うの』
事故じゃない?
『実は番組のプロディーサーが、君の事を気に入ってしまって、レギュラーで出てほしいと……』
「はあ? そんなの、ダメに決まっているでしょ」
『そうよねえ。私もそう言ったのだけど、うちのプロディーサーは強引で……今回の件も、事故に見せかけて君の顔を出して、反応を見ようという魂胆だと思うの』
「いったい、僕のどんな反応を期待していたのです? その人は?」
『私もよく分からないけど……おそらく顔を出して、なんの抗議もなければ、話を進めようとかいうつもりだったのだと思うわ』
「それじゃあ抗議します。すでに協会から文書で抗議が送られていると思うけど、ちょうど学校の先生も抗議してくれると言っているし……」
僕は先生の方を振り向く。
「先生。今でもいいですか?」
先生はにっこりと微笑んでくれていた。
「私は、いつでもいいわよ」
「それじゃあ、今から先生と代わります」
『ちょっと待って! 私もプロディーサーと代わるから、抗議はそっちにお願い』
先生の方を向く。
「と、言っておりますが」
「良いわよ。ただ、私が抗議する時はスゴく怖い声を出すの。社君が怖がるといけないから、ベランダでやるわね」
先生は僕のスマホを受け取ってベランダへ出ていった。
しかし、怖い声って、どんなことを言うのだろう?
『おんどりゃあ! うちの生徒に、なんちゅうことさらすんじゃ! ぼけ! しばくぞ! ごらあ!』
というようなことでも言うのかな?
いやいや、あの女神のような先生が、そんなヤクザ言葉なんて使うわけないよ。
先生がベランダから戻ってきたのは数分後。
「社君。話は付いたわ。プロディーサーが後で謝罪すると言っているわよ」
「先生ありがとうございます」
「レギュラー入りの件も諦めさせたわ」
よかった。
「ただ、六道魔入さんが、今後も指名依頼する事があるけれど、それは受けてあげてね」
え? ちょっとイヤかも……
「指名料は倍出すと言っているわ。それと、素顔は絶対出さないと約束させたわ」
「それなら、良いですけど……また今回みたいに、事故に見せかけてモザイクを外すなんてやらないでしょうね?」
「そういう事ができないように、当日は君だとばれないようなメイクしてからカメラを回すと言っていたわ」
「そうですか」
でも、なんかイヤな予感が……
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