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嫌悪の魔神
ただのウサギではありません
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「ミクちゃん」
樒は、道路の反対側にいるタンハー達を指さした。
「信号が青に変わるまでの間、式神であいつらを牽制しておいてくれない。チビ魔神の奴、私の姿を見たら逃げ出すから」
「うん、分かった。でも、なんて話しかければ怪しまれないかな?」
「僕と最初に会った時のように、道を聞いてみるというのはどうかな?」
「そっか。その手でいく」
そう言ってミクちゃんは、タブレットを僕に渡す。
「優樹君。あたしは式神に集中しなきゃいけないから、これを操作していて」
「ああ、わかった」
道路の向こうで白いウサギ式神が、タンハーに何かを話しかけていた。
タブレットからは、ウサギ式神の音声が聞こえてくる。
『こんにちは。僕の姿が見えますか?』
道路の向こうでは、タンハーと寒太が式神のいる方を向いた。
視線は完全にこっちから反れている。
『ん? なんじゃ? ウサギが喋ったぞよ』
『タンハー様、気をつけろ。こいつ、ただのウサギじゃない』
寒太は式神を警戒しているが、そのせいで横断歩道の向こうで信号待ちをしている僕達には気がついていない。
『はい。僕はただのウサギではありません』
『なに!? ただではない。では、いくら払ったら、モフモフさせてくれるぞよ?』
いや、その「ただ」では……
『いや、モフモフは別に無料でもいいのですが……僕は普通のウサギではなく、ウサギの姿をした式神で……うわ!』
タンハーは、いきなりウサギ式神を抱き上げて頬ずりを始めた。
『モフモフは、無料なのだな。では、思う存分モフモフさせてもらうぞよ』
ミクちゃんが困ったような顔を僕に向ける。
「どうしよう? 道を聞くどころじゃないよ」
「いや……まあ……気を反らす事には、成功したからいいのじゃないかな」
そうしている間に信号は青に変わる。
僕はスマホを操作して母さんにメールを送った。
今頃、母さんは樒の部屋の扉を開きに向かっているはず……
「ミクちゃんはここで待機していて。優樹、行くわよ」
僕と樒は横断歩道上を駆け抜けた。
歩道上に上がったところで、樒は寒太に向かって右手をすっと伸ばす。
同時に僕は懐から退魔銃を抜いた。
樒の右腕が縦横に動き出す。
「臨・兵・闘・者……うわ!」
突然タンハーは抱いていたウサギ式神を、樒に向かって投げつけてきた。
このまま九字を切ると、式神が危ないと思ったのか、樒は九字を中断。
「逃げるぞよ!」
タンハーは寒太の手を握ると、一目散に駆けだした。
「くそ! チビ魔神の奴。優樹! 追うわよ」
「ああ」
僕達はタンハーと寒太を追いかけて走った。
やられた。
どうやら、タンハーは最初からこっちに気がついていたようだ。
ウサギ式神を抱きしめたのも、最初から樒の九字を封じるため……
あいつ、バカのように見えてかなり悪賢い。
待てよ!
という事は、このまま追いかける先に罠があるのでは?
そう思った時、僕らの十数メートル先を走っていた二人が角を曲がった。
は! あの角の先は……
「樒! まずい! 罠だ!」
「え?」
樒が怪訝な顔で僕の方を見た時、タンハーの叫びが聞こえてきた。
「お巡りさん助けてえ! 誘拐される!」
角の先に交番があった。
樒は、道路の反対側にいるタンハー達を指さした。
「信号が青に変わるまでの間、式神であいつらを牽制しておいてくれない。チビ魔神の奴、私の姿を見たら逃げ出すから」
「うん、分かった。でも、なんて話しかければ怪しまれないかな?」
「僕と最初に会った時のように、道を聞いてみるというのはどうかな?」
「そっか。その手でいく」
そう言ってミクちゃんは、タブレットを僕に渡す。
「優樹君。あたしは式神に集中しなきゃいけないから、これを操作していて」
「ああ、わかった」
道路の向こうで白いウサギ式神が、タンハーに何かを話しかけていた。
タブレットからは、ウサギ式神の音声が聞こえてくる。
『こんにちは。僕の姿が見えますか?』
道路の向こうでは、タンハーと寒太が式神のいる方を向いた。
視線は完全にこっちから反れている。
『ん? なんじゃ? ウサギが喋ったぞよ』
『タンハー様、気をつけろ。こいつ、ただのウサギじゃない』
寒太は式神を警戒しているが、そのせいで横断歩道の向こうで信号待ちをしている僕達には気がついていない。
『はい。僕はただのウサギではありません』
『なに!? ただではない。では、いくら払ったら、モフモフさせてくれるぞよ?』
いや、その「ただ」では……
『いや、モフモフは別に無料でもいいのですが……僕は普通のウサギではなく、ウサギの姿をした式神で……うわ!』
タンハーは、いきなりウサギ式神を抱き上げて頬ずりを始めた。
『モフモフは、無料なのだな。では、思う存分モフモフさせてもらうぞよ』
ミクちゃんが困ったような顔を僕に向ける。
「どうしよう? 道を聞くどころじゃないよ」
「いや……まあ……気を反らす事には、成功したからいいのじゃないかな」
そうしている間に信号は青に変わる。
僕はスマホを操作して母さんにメールを送った。
今頃、母さんは樒の部屋の扉を開きに向かっているはず……
「ミクちゃんはここで待機していて。優樹、行くわよ」
僕と樒は横断歩道上を駆け抜けた。
歩道上に上がったところで、樒は寒太に向かって右手をすっと伸ばす。
同時に僕は懐から退魔銃を抜いた。
樒の右腕が縦横に動き出す。
「臨・兵・闘・者……うわ!」
突然タンハーは抱いていたウサギ式神を、樒に向かって投げつけてきた。
このまま九字を切ると、式神が危ないと思ったのか、樒は九字を中断。
「逃げるぞよ!」
タンハーは寒太の手を握ると、一目散に駆けだした。
「くそ! チビ魔神の奴。優樹! 追うわよ」
「ああ」
僕達はタンハーと寒太を追いかけて走った。
やられた。
どうやら、タンハーは最初からこっちに気がついていたようだ。
ウサギ式神を抱きしめたのも、最初から樒の九字を封じるため……
あいつ、バカのように見えてかなり悪賢い。
待てよ!
という事は、このまま追いかける先に罠があるのでは?
そう思った時、僕らの十数メートル先を走っていた二人が角を曲がった。
は! あの角の先は……
「樒! まずい! 罠だ!」
「え?」
樒が怪訝な顔で僕の方を見た時、タンハーの叫びが聞こえてきた。
「お巡りさん助けてえ! 誘拐される!」
角の先に交番があった。
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