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無責任の答え
もう一人の
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私はあっくんの家にお返しを持ってきたつもりが、何故か凄く突っかかってくる女の子と睨み合いをするとこになり、そして何故かその女の子とお菓子を買いに行くことになった。
なんで私なんだろう……恐らくこの子は私の事が好きではないだろう。
はっ……まさか、誰もいない所に連れ出して私を脅迫する気なのかも!!
私は咄嗟に身構えた。
さあどっからでも来なさい!
私はそこそこ強いんだから、簡単にはやられないよ?
「あの聞いていいですか?」
彼女は私の腕を離し、立ち止まった。
「な、なにかな?」
私はファイティングポーズを取った。
すると彼女は私の方に振り向いた。
「単刀直入に聞きます!
先輩のこと、どう思ってるんですか?」
「えっ! ちょっと……いきなりそんなこと言われても……。
あっくんは幼馴染みで、家族同然で……」
彼女の直球な問いかけに思わずたじろいでしどろもどろになってしまった。
「はぐらかさないでくださいよ。
私は先輩が好きです。
あの人が望むなら私はなんだって出来ます!
中途半端な気持ちで先輩を振り回さないでください!」
私の心臓は鷲掴みされたようにギュッと縮こまった。私が……あっくんを振り回してるの?
でも、私だって……。
「で、どうなんですか?
好きなんですか?
そうじゃないなら……」
「好きだよ!!!!」
自分でも驚くほど大きい声を出してしまった。今までうちに秘めていた気持ちが、彼女に責められたことにより溢れ出てしまった。
「……え?」
彼女は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。
「ご飯を食べてる時も、修行してる時も、大好きなお風呂に入ってる時も、片時もあっくんの事を考えない日はない!!
何をしててもあっくんの顔が浮かぶの!」
気持ちが溢れて止まらない。口から次々と言葉が出てくる。
「じゃあなんで先輩を振ったんですか!?
それなら付き合ってあげればいいじゃないですか!?
貴女のその中途半端な態度で、先輩がどんなに傷ついてるか分かってます!?」
彼女も負けじと食い下がってくる。
て言うか……え……?
私があっくんを振った? 何のこと?
「待って待って!
私、あっくんを振って無いよ?」
「え? だって先輩が……」
「確かに告白されたけど、返事は……まだ……」
自分で言ってて申し訳ない気持ちで一杯になってしまった。忘れていたとはいえ私は彼の気持ちを蔑ろにしていたのだ。
「まだってなんですか!
キープのつもりなんですか!?
それなら早く振ってあげてくださいよ!
先輩は貴女に縛られているんですよ?」
縛られている……その言葉が私の心に深く突き刺さった。
「……なにも……知らないで……」
言葉が詰まってうまく話せない。いつの間にか頬に涙が伝っていた。悔しくて、悲しくて、自分へのどうしようもない怒りが涙となって溢れた。
「何も知らないくせに勝手なこと言わないでよ!」
私は涙で濡れた瞳で彼女を睨みつけた。何の事情も知らない人にそんな事を言われる筋合いはない。
すると彼女は、急に視線を落とし、拳をギュッと握りしめた。
「……知ってますよ。
だって私も……」
「えっ……わっ?」
聞き返そうとしたその時、突然彼女の体を光が包んだ。
そして私は思わず目を見開いた。そこには黒い着物を身にまとい、体よりも大きい薙刀を携えた彼女の姿があった。
「私も、滅霊士だから」
「嘘……だって貴女は……」
すると彼女は霊衣を解くと、ふぅと一息ついて私に向き直った。
「やっぱり、貴女もそうなんですね。
貴女だって名字の名前、変えてたでしょ?
鬼の文字を変えて、天の木と書いて天木と。
私もそう、結城の本当の字は、幽霊の幽に鬼と書いて『幽鬼』と読むの」
「じゃあ貴女は、北海道の幽鬼家の人なの?」
滅霊士の一族は全部で七家あり、そのうちの一つが幽鬼家である。一族は普段、不吉な文字である鬼を違う字に変えて生活している。
「そうよ。
だからこそ、天鬼家にかかる呪いも知ってる」
天鬼家は男性と交わる事を禁じられている。だからこそ女性のみの一族なのだ。
その呪いがどのようなものかは知らないが、最悪の場合死ぬのだろう。
「じゃあ何で私を責めるの?
滅霊士なら貴女もそうなんでしょ?」
すると彼女はふふっと笑った。
「私たちは違うわ。
その呪いを受けているのは天鬼家だけよ」
「嘘……」
「ええ、私たちは普通に結婚して子供も作れるの。幽鬼家の滅霊士達は今も沢山いるの」
「…………」
私は言葉を失った。唇を噛み俯くしかなかった。私と彼女の境遇の違いに私は嫉妬していた。
だけどこれは私が選んだ道だ。後悔はない……と言いたいが、あっくんを想うと気持ちがぐらつく。
いっその事こと、彼と離れた方が良いのかもしれない……。
「もしかして、自分から身を引こうとか思ってます?」
「え?」
私は顔を上げ彼女を見た。彼女は腕を組んで睨みをきかせていた。
「貴女逃げてばかりですね。
私だったら例え抗えない運命でも、命が尽きる最後までもがき続ける!!」
彼女は私に指を差し叫んだ。
「わ、私がライバルと認めた貴女がそんな腑抜けじゃ、張り合いがないって言うか……ああもう!」
顔が段々と赤くなってきて急にテンパりだした。もしかして彼女は私を励ましてくれてるのかな?
「あんた自分の気持ちを押し殺して死んでくつもり?
いつ死ぬかわからない仕事なんだから、呪いぐらいなんだって言うの!?
私だったらどうせ死ぬなら好きな人に気持ちを伝えて、思いっきり抱きしめて、彼の腕の中で死んでやる!!」
私は彼女の話を聞いてハッとした。確かにそうかも知れない。好きな人を諦めて生きていく人生にどれ程の価値があるのか。
だけど、私が居なくれば天鬼の守護地域は誰が守っていくのか……
「やっぱり……」
「心配しなくても、貴女が死んだらここは幽鬼家が引き継ぐわ。
私の一族は天鬼家と違って、古臭い一子相伝に拘るような前時代的な掟はないから。滅霊士は沢山いるしね」
何か励ましてるのか、早く死ねと言われているのかどっちか分からないけど、とりあえず分かったことがある。
この人は、凄く良い人だ……。
「ありがとう……励ましてくれて」
「なっ……ば、馬鹿じゃないの?
そんなつもりこれっぽっちもないよ!
ただ、先輩が好きな人が、こんなに腑抜けた人なのが嫌なだけだよ」
彼女は顔を真っ赤にしながら両腕をバタバタさせている。可愛い。
「私、決めた。
運命を受け入れた上で、あっくんに気持ちを伝える。
後のことは、任せるね?
この仕事も……あっくんも……」
あっくんを任せられるのは彼女しか居ないかも知れない。それ程までに彼女が彼の事を語る顔は真剣そのものだった。
「空さん……」
「やっと名前、呼んでくれたね?
幽鬼さん?」
「ななっ!?
えっと…………きでいいよ」
彼女はぼそっと言った。
「え? 何?」
「咲で良いって言ってるんです!
それよりも、私負けませんから!
空さんが振られた瞬間、私がかっさらいますからね!」
「ふふふ、うんそれでいいよ!
さっ、早くお菓子買いに行こう!」
「え、ちょっと……」
私は彼女の腕を取り、コンビニへと走った。さっき部屋から連れ出された時とは逆だと思って、自然と笑みが溢れた。何故だろう彼女とは仲良くなりそうな気がする。
適当なお菓子を買い集めると、今度は二人横並びで歩いて帰っていた。そう言えば彼女は何の為に戦ってるんだろう……。
聞いても大丈夫かな?
「あの……咲ちゃん聞いても良い?」
「いいですよ。
何でもではないですが」
彼女の表情はさっきとは打って変わって柔らかい。
「あっじゃあ……咲ちゃんは何で戦ってるの?
滅霊士がいっぱいいるなら、咲ちゃんが戦う必要はないんじゃないかなって」
すると、彼女は立ち止まって両拳をギュッと握りしめた。
「両親を殺した奴を、殺す為です」
えっ、両親を……殺された?
「ごめん。嫌なこと思い出させちゃったね。
無理に言わなくていいよ」
そうか、彼女も悪霊に大切な人を殺されていたのか。これ以上聞くのは野暮だね。
「いいんです。
一つ聞かせてください。
いや、正確には確認させて欲しいんです」
「え、何かな?」
「天鬼宗麟って知ってます?」
「天鬼……宗麟……
何でその名前を?」
すると彼女は表情に怒りを滲ませていった。
「そいつが、私の両親を目の前で食いやがった!
私はそいつを殺す為死に物狂い修行した!
そしてやっとの思いで調べあげたの……天鬼宗麟と言う存在を!」
目に涙を浮かべている。相当辛かったのだろう。目の前で両親が食われるなんて、私だったらとても耐えられそうにない。
「天鬼の苗字を名乗っているのなら、貴女にも関係があるんじゃないかと思いまして。
どうなんですか? 返答次第では今ここで貴女を殺します」
彼女の目は本気だ。
「私自身には関係ないけど、一族を辿れば無関係とは言えない。ごめん……」
「いえ、思った通りの答えでホッとしました」
殺気が消えた。どうやら納得してもらえたようだ。
「天鬼宗麟は私にとっても倒さなきゃいけない相手なの。
私のもう一人の幼馴染みを殺した真犯人だから、絶対許さない」
私は奥歯を噛み締めた。怒りが心を包んでいくのがわかる。
「そうですか、空さんも……。
分かりました。そいつに関しては私は協力を惜しみません。
先輩に関しては全くと言っていい程協力しませんが!」
彼女は軽くウインクすると、悪戯に笑った。
可愛い……女の私でもドキッとしてしまった。これは強力なライバルだな、勝てるかなぁ……。あっくん、茶髪が好きなのかな。染めようかな……。
「髪、伸ばそうかな……」
彼女は髪をいじりながら言った。
「え?」
「な、何でもないっ!
行こう空さん!」
彼女は私の手を取り、あっくんの家に向かい走り出した。
なんで私なんだろう……恐らくこの子は私の事が好きではないだろう。
はっ……まさか、誰もいない所に連れ出して私を脅迫する気なのかも!!
私は咄嗟に身構えた。
さあどっからでも来なさい!
私はそこそこ強いんだから、簡単にはやられないよ?
「あの聞いていいですか?」
彼女は私の腕を離し、立ち止まった。
「な、なにかな?」
私はファイティングポーズを取った。
すると彼女は私の方に振り向いた。
「単刀直入に聞きます!
先輩のこと、どう思ってるんですか?」
「えっ! ちょっと……いきなりそんなこと言われても……。
あっくんは幼馴染みで、家族同然で……」
彼女の直球な問いかけに思わずたじろいでしどろもどろになってしまった。
「はぐらかさないでくださいよ。
私は先輩が好きです。
あの人が望むなら私はなんだって出来ます!
中途半端な気持ちで先輩を振り回さないでください!」
私の心臓は鷲掴みされたようにギュッと縮こまった。私が……あっくんを振り回してるの?
でも、私だって……。
「で、どうなんですか?
好きなんですか?
そうじゃないなら……」
「好きだよ!!!!」
自分でも驚くほど大きい声を出してしまった。今までうちに秘めていた気持ちが、彼女に責められたことにより溢れ出てしまった。
「……え?」
彼女は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。
「ご飯を食べてる時も、修行してる時も、大好きなお風呂に入ってる時も、片時もあっくんの事を考えない日はない!!
何をしててもあっくんの顔が浮かぶの!」
気持ちが溢れて止まらない。口から次々と言葉が出てくる。
「じゃあなんで先輩を振ったんですか!?
それなら付き合ってあげればいいじゃないですか!?
貴女のその中途半端な態度で、先輩がどんなに傷ついてるか分かってます!?」
彼女も負けじと食い下がってくる。
て言うか……え……?
私があっくんを振った? 何のこと?
「待って待って!
私、あっくんを振って無いよ?」
「え? だって先輩が……」
「確かに告白されたけど、返事は……まだ……」
自分で言ってて申し訳ない気持ちで一杯になってしまった。忘れていたとはいえ私は彼の気持ちを蔑ろにしていたのだ。
「まだってなんですか!
キープのつもりなんですか!?
それなら早く振ってあげてくださいよ!
先輩は貴女に縛られているんですよ?」
縛られている……その言葉が私の心に深く突き刺さった。
「……なにも……知らないで……」
言葉が詰まってうまく話せない。いつの間にか頬に涙が伝っていた。悔しくて、悲しくて、自分へのどうしようもない怒りが涙となって溢れた。
「何も知らないくせに勝手なこと言わないでよ!」
私は涙で濡れた瞳で彼女を睨みつけた。何の事情も知らない人にそんな事を言われる筋合いはない。
すると彼女は、急に視線を落とし、拳をギュッと握りしめた。
「……知ってますよ。
だって私も……」
「えっ……わっ?」
聞き返そうとしたその時、突然彼女の体を光が包んだ。
そして私は思わず目を見開いた。そこには黒い着物を身にまとい、体よりも大きい薙刀を携えた彼女の姿があった。
「私も、滅霊士だから」
「嘘……だって貴女は……」
すると彼女は霊衣を解くと、ふぅと一息ついて私に向き直った。
「やっぱり、貴女もそうなんですね。
貴女だって名字の名前、変えてたでしょ?
鬼の文字を変えて、天の木と書いて天木と。
私もそう、結城の本当の字は、幽霊の幽に鬼と書いて『幽鬼』と読むの」
「じゃあ貴女は、北海道の幽鬼家の人なの?」
滅霊士の一族は全部で七家あり、そのうちの一つが幽鬼家である。一族は普段、不吉な文字である鬼を違う字に変えて生活している。
「そうよ。
だからこそ、天鬼家にかかる呪いも知ってる」
天鬼家は男性と交わる事を禁じられている。だからこそ女性のみの一族なのだ。
その呪いがどのようなものかは知らないが、最悪の場合死ぬのだろう。
「じゃあ何で私を責めるの?
滅霊士なら貴女もそうなんでしょ?」
すると彼女はふふっと笑った。
「私たちは違うわ。
その呪いを受けているのは天鬼家だけよ」
「嘘……」
「ええ、私たちは普通に結婚して子供も作れるの。幽鬼家の滅霊士達は今も沢山いるの」
「…………」
私は言葉を失った。唇を噛み俯くしかなかった。私と彼女の境遇の違いに私は嫉妬していた。
だけどこれは私が選んだ道だ。後悔はない……と言いたいが、あっくんを想うと気持ちがぐらつく。
いっその事こと、彼と離れた方が良いのかもしれない……。
「もしかして、自分から身を引こうとか思ってます?」
「え?」
私は顔を上げ彼女を見た。彼女は腕を組んで睨みをきかせていた。
「貴女逃げてばかりですね。
私だったら例え抗えない運命でも、命が尽きる最後までもがき続ける!!」
彼女は私に指を差し叫んだ。
「わ、私がライバルと認めた貴女がそんな腑抜けじゃ、張り合いがないって言うか……ああもう!」
顔が段々と赤くなってきて急にテンパりだした。もしかして彼女は私を励ましてくれてるのかな?
「あんた自分の気持ちを押し殺して死んでくつもり?
いつ死ぬかわからない仕事なんだから、呪いぐらいなんだって言うの!?
私だったらどうせ死ぬなら好きな人に気持ちを伝えて、思いっきり抱きしめて、彼の腕の中で死んでやる!!」
私は彼女の話を聞いてハッとした。確かにそうかも知れない。好きな人を諦めて生きていく人生にどれ程の価値があるのか。
だけど、私が居なくれば天鬼の守護地域は誰が守っていくのか……
「やっぱり……」
「心配しなくても、貴女が死んだらここは幽鬼家が引き継ぐわ。
私の一族は天鬼家と違って、古臭い一子相伝に拘るような前時代的な掟はないから。滅霊士は沢山いるしね」
何か励ましてるのか、早く死ねと言われているのかどっちか分からないけど、とりあえず分かったことがある。
この人は、凄く良い人だ……。
「ありがとう……励ましてくれて」
「なっ……ば、馬鹿じゃないの?
そんなつもりこれっぽっちもないよ!
ただ、先輩が好きな人が、こんなに腑抜けた人なのが嫌なだけだよ」
彼女は顔を真っ赤にしながら両腕をバタバタさせている。可愛い。
「私、決めた。
運命を受け入れた上で、あっくんに気持ちを伝える。
後のことは、任せるね?
この仕事も……あっくんも……」
あっくんを任せられるのは彼女しか居ないかも知れない。それ程までに彼女が彼の事を語る顔は真剣そのものだった。
「空さん……」
「やっと名前、呼んでくれたね?
幽鬼さん?」
「ななっ!?
えっと…………きでいいよ」
彼女はぼそっと言った。
「え? 何?」
「咲で良いって言ってるんです!
それよりも、私負けませんから!
空さんが振られた瞬間、私がかっさらいますからね!」
「ふふふ、うんそれでいいよ!
さっ、早くお菓子買いに行こう!」
「え、ちょっと……」
私は彼女の腕を取り、コンビニへと走った。さっき部屋から連れ出された時とは逆だと思って、自然と笑みが溢れた。何故だろう彼女とは仲良くなりそうな気がする。
適当なお菓子を買い集めると、今度は二人横並びで歩いて帰っていた。そう言えば彼女は何の為に戦ってるんだろう……。
聞いても大丈夫かな?
「あの……咲ちゃん聞いても良い?」
「いいですよ。
何でもではないですが」
彼女の表情はさっきとは打って変わって柔らかい。
「あっじゃあ……咲ちゃんは何で戦ってるの?
滅霊士がいっぱいいるなら、咲ちゃんが戦う必要はないんじゃないかなって」
すると、彼女は立ち止まって両拳をギュッと握りしめた。
「両親を殺した奴を、殺す為です」
えっ、両親を……殺された?
「ごめん。嫌なこと思い出させちゃったね。
無理に言わなくていいよ」
そうか、彼女も悪霊に大切な人を殺されていたのか。これ以上聞くのは野暮だね。
「いいんです。
一つ聞かせてください。
いや、正確には確認させて欲しいんです」
「え、何かな?」
「天鬼宗麟って知ってます?」
「天鬼……宗麟……
何でその名前を?」
すると彼女は表情に怒りを滲ませていった。
「そいつが、私の両親を目の前で食いやがった!
私はそいつを殺す為死に物狂い修行した!
そしてやっとの思いで調べあげたの……天鬼宗麟と言う存在を!」
目に涙を浮かべている。相当辛かったのだろう。目の前で両親が食われるなんて、私だったらとても耐えられそうにない。
「天鬼の苗字を名乗っているのなら、貴女にも関係があるんじゃないかと思いまして。
どうなんですか? 返答次第では今ここで貴女を殺します」
彼女の目は本気だ。
「私自身には関係ないけど、一族を辿れば無関係とは言えない。ごめん……」
「いえ、思った通りの答えでホッとしました」
殺気が消えた。どうやら納得してもらえたようだ。
「天鬼宗麟は私にとっても倒さなきゃいけない相手なの。
私のもう一人の幼馴染みを殺した真犯人だから、絶対許さない」
私は奥歯を噛み締めた。怒りが心を包んでいくのがわかる。
「そうですか、空さんも……。
分かりました。そいつに関しては私は協力を惜しみません。
先輩に関しては全くと言っていい程協力しませんが!」
彼女は軽くウインクすると、悪戯に笑った。
可愛い……女の私でもドキッとしてしまった。これは強力なライバルだな、勝てるかなぁ……。あっくん、茶髪が好きなのかな。染めようかな……。
「髪、伸ばそうかな……」
彼女は髪をいじりながら言った。
「え?」
「な、何でもないっ!
行こう空さん!」
彼女は私の手を取り、あっくんの家に向かい走り出した。
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