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本当の死とは
曇空
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今日、僕は最愛の人から想いを告げられた。だが、突然苦しみ出した空は、頭を抱えて悲痛な叫び声を上げた。そして、やっと治ったと思ったら、夜空を見上げて虚ろな顔をしている。
「空? 大丈夫か?」
僕は近づき、顔を覗き込んだ。すると真顔になり、まるで何事も無かった様に立ち上がった。
そして、振り返った彼女の顔は、今まで見たこともない様な無機質な、まるで仮面でも被っている様な表情だった。
「大丈夫。帰ろう?」
そう言うと彼女は階段へとスタスタと歩き出した。
さっきまであんなに悲鳴を上げて苦しんでいたのに、本当に大丈夫なのか。でも、まあ本人がそう言うなら、それなら告白の返事をしなきゃ……。
さっきまではいきなりの事で呆気に取られていたが、今度は冷静に答えることができる。
今度こそちゃんと言うんだ。お前が大好きだと。
僕は空に駆け寄り、肩に手をかけた。
「空! さっきの返事なんだけど……」
すると、手を振り払う様に肩を揺らすと、とても先ほどと同じ無機質な表情を向けてきた。
目を見ると、僕を見ていると言うよりは、虚空を見つめている様な怖さがある。
「返事? 何の事?
それよりも、もう用事はすんだから。
帰りましょう?」
彼女の言葉には何も感情がこもっていない様に思えた。冷たく、ただ思った事を機械の様に吐き出すだけの様に感じた。
彼女は僕が何も答えないのを確認するとまた、スタスタと歩き出した。
僕は咄嗟に彼女の手を掴んだ。
「え……ちょ、ちょっと待ってよ!
さっき、好きって言ってくれたよね?」
すると彼女は顔だけ僕の方を見ると呟く様に言った。
「好きって、なんです?」
心臓に杭を打ち込まれた様な衝撃だった。人って、あまりにも大きなショックを受けると固まってしまうようだ。体も、頭も動く事を拒絶するように停止した。
「……空」
その後しばらく屋上で星を見上げて放心していたが、気を取り直し屋上を降りた。
階段を降りて一回の玄関まで来ると、人影がある事に気がついた。小走りで近づき、目を凝らすと、そこには腕を押さえてボロボロになっている咲ちゃんとそれを介抱する清志の姿があった。
口と額からは血が垂れていて、あたりにポツポツと血の跡が付いていた。
「おい、どうしたんだ?
咲ちゃん、大丈夫なの?
誰にやられたんだ!?」
すると清志は咲ちゃんを抱き上げると、ゆっくりと僕の方へ顔を向けた。
その顔は、怒りと悲しみが入り混じったような複雑な表情だった。
「……空ちゃんよ」
「え……? 嘘つくなよ!!
空は人を傷つけるような奴じゃない!!
それは俺がよく知ってる!!」
僕は清志に詰め寄って叫んだ。あの虫を殺す事すら躊躇するような優しい空がそんな事をするとは考えられない。
すると、遠くで光がチラチラするのが見えた。どうやら警備員が巡回しに来たようだ。
「話は後よ。
寮に戻りましょう」
清志は歩き出した。僕はギリっと奥歯を噛み締め彼の後に続いた。
寮に着いた頃には、咲ちゃんは気を失っていた。
相当の痛手を負ったのだろう。これは早く手当てしなければ危ないかも知れない。
そもそもあの場で救急車を呼んでおくべきでは無かったのだろうか?
色々なことが一度に起きて頭が回らなかった。
「清志、取り敢えず咲ちゃんを病院に……」
「ダメよ。これはサッキーの意思なの。
黙ってついて来て」
清志の声は静かだが、まるで威嚇するような迫力があった。
僕は黙って彼に付き従った。すると着いたのは、以前僕が使っていた部屋だった。
部屋に入ると、何もなく月明かりだけが部屋を照らしていた。清志は電気もつけずに咲ちゃんをゆっくり寝かせると、上着を脱いで彼女の頭の下に入れた。
僕も上着を脱ぎ、彼女の体にかけた。清志は僕に背を向けるように彼女の横に座り、ハンカチで額の傷を押さえていた。
「清志、取り敢えず何があったか話してもらえるかな?」
すると彼は振り返らずに答えた。
「あの後、私たちは貴方達を玄関で待ってたの。
でも降りて来たのは空ちゃんだけだった。
それを不審に思ったサッキーは空ちゃんに掴みかかったの」
「あんた、先輩はどうしたの?
何であんた一人な訳?」
すると彼女は表情一つ変えず、サッキーの手を振り払った。
「痛いですよ。やめてくれませんか?」
その態度に完全にキレたサッキーは霊衣を纏った。
「なんですその顔。
歯ぁくいしばれ……やッ!?」
その時だった。空ちゃんはサッキーが言葉を言い終えるのも聞かずに刀を抜いて彼女を斬りつけた。
それはさっき見た戦いのものとは比べ物にならない程の速さで、気がついた頃には彼女は吹き飛ばされ壁に激突していた。
「やだ!?
サッキー!?」
私は彼女に駆け寄ると、彼女の意識はもう既に朦朧としていた。さっきの戦いで、ただでさえ疲弊していたのに、不意打ちの強撃で満身創痍になっている。
「ねぇ、サッキー!?
起きてサッキー!! お願いよ!!」
「まだ息があるね」
必死に彼女を揺さぶる私の後ろに、空ちゃんは音もなく近づき、私をの体を片手で吹き飛ばした。
彼女のその顔は今でも覚えている。人をただの物としか思っていない様な、そんな表情だった。
彼女はサッキーに馬乗りになると、顔を執拗に殴り始めた。
最初はサッキーもガードしていたが、次第にガードが下がり殴られるままになった。
あまりの光景に私は我慢できず、空ちゃんにタックルしたがさらりと避けられた。
私はその勢いのままサッキーに覆いかぶさると叫んだ。
「もうやめて!
このままじゃ死んじゃうわ!!
やるなら私を先にやりなさい」
すると空ちゃんは表情を一切崩さず立ち去った。
「ざっとこんな感じよ。
私は許せない。倒した相手に追い討ちするなんて……あの子はあんな事する子じゃないと思ってたのに、そっちこそ何があったの?
どうなったらあんなに人って豹変するのよ!?」
清志は話終えると、太い腕で目をゴシゴシと擦り涙を拭った。よっぽど悔しかったのだろう。そしてやっぱり彼は優しい。友達の事でこんなにも悔しがり、泣けない友達分まで涙を流せるのだから。
「それは……」
僕は屋上であった事を清志に話した。彼は真剣に耳を傾けてくれた。全てを聴き終えた彼は、しばらく黙っていた。
僕も黙り込み、しばらく部屋がしんと静まり返った。
そして、最初に口を開いたのは清志だった。
「呪い……かしら……」
僕はその言葉を聞いて、まるで右ストレートで顎を撃ち抜かれたような衝撃を受けた。あの優しい空の豹変ぶりは呪い以外に考えられない。
「呪い、確かにそうかも知れない……。
でも、どんな呪いなんだ?」
僕は今まで、天鬼の呪いは死に直面するような物だとばかり思っていたが、もしかしたら違うのかも知れない。
「凶暴になるって言うのはどう?
愛する人すら殺してしまう程の好戦的な性格なるから、天鬼家は女性のみの家系なのかも?」
「そう考えると合点がいくかもね。
でも、それなら真っ先に僕に襲いかかっていたんじゃ無いのかな?」
清志は咲ちゃんの処置を終え、僕に向き直った。
「分からないわね。
まずは呪いについて知らないと……。
だれか詳しい人はいないの?」
詳しい人か、愛ちゃんや師匠からはこの前、知っている限りのことを聞いたからこれ以上はないし……。
「あ、そう言えば……空のお婆さんなら何か知ってるかも!!」
それを聞いた清志は、膝を叩いて立ち上がった。
「そうね! 天鬼家の事は天鬼家の人に聞くのが一番の近道ね!
直接本人と話してみるか、あるいはその家系の誰かね」
「そうだよな! よし!
そうと決まれば今から聞きに……うっ」
「待ちなさい!
今何時だと思ってるの? こんな時間に行ったら迷惑よ。
交渉ごとや物を尋ねるときは、礼節を重んじるのは常識よ?
日を改めなさい」
立ち上がり走り出した瞬間、服の襟を掴まれ無理やり止められた。
「……た、確かに……」
僕はその場に座り直し、深呼吸をし自分を落ち着かせた。
それを見た清志も座り直しうんうんと頷いた。
「そう言えば、お前霊が見えるのか?」
僕はさっきから気になっていた。戦闘も目で追ってたし。
「ええ、小さい頃からね。実はあのヤンキー三人もずっと見えてたの!
だから水鉄砲勝負の時も、私とサッキーは動かなかったでしょ?」
「そうだ! 確かにお前ら動かなかった!
完璧な作戦だと思ったのにそう言う事だったのか!!!」
ずっと喉に刺さってた魚の骨がやっと取れた様なスッキリ感だ。
これが世に言うアハ体験という奴なのか!?
いや……違うか。
すると清志は天井を見上げ、虚な顔をした。
恐らく何かを思い出しているのだろう。
「私、よく霊が見える事と、私がオネエだって事でよく虐められたわ。
それをサッキーに相談した時、滅霊士の話を聞いたの」
そうだったのか……ひどい虐めを受けていたと聞いていたが、余り踏み込んではいけないと思い、詳しい事は聞いてなかった。
「だから知ってたんだね」
清志は僕の目を見てこくんと頷いた。
「ええ、それで仲良くなったの。
でもびっくりしたわ、三年間ずっと一緒だったあなたまで滅霊士の関係者だったなんて」
「まあ、関係者になったのほんの最近なんだけど」
僕と清志は笑い合った。さっきまでの険しい雰囲気が嘘の様だ。清志の凄いところは、話を最後まで聞いて、理解しようと努めてくれる所だ。彼のおかげで今まで、どんなに問題が起きても挫けずやってこれたのだと思う。
「ん……?
私、どうして……」
しばらくすると咲ちゃんが目を覚ました。そして僕は彼女を見て驚いた。
パックリと割れていた額が、もう塞がりかけていたのだ。
「咲ちゃん大丈夫なの!?」
僕は彼女の横に座ると傷があった部分の髪の毛を優しくかき上げた。
「ええ!? な、なに積極的っ!!」
その傷はまるで瞳を閉じる様に端から消えている。
「凄い……」
僕が感心していると、咲ちゃんが目を閉じ唇を差し出していた。
「え? な、何してんの!?」
「ちっ、バレたか……」
なんか段々口が悪くなっている様に感じる。
「サッキーずっと猫被ってたもんね?
でも私は素のあなたも素敵だと思うわ」
「ちょっと言わないでよ!
でも私も、ドロシーは素敵な女性だと思うよ」
二人は笑い合い手を合わせた。これが、女同士の友情なのかな。ん? 女同士の……?
それから咲ちゃんにも天鬼家の呪いのことを聞いたが、やはり知っていたのは何かしらの代償を負うかもしくは死ぬとしか知らなかったようだ。
それは恐らく、今まで掟を破った人が居なかったからか、もしくは破った瞬間処罰され消されたかのどちらかだと思う。
結局分かったことは何も無く、俺は今晩はこの部屋で一夜を過ごすことにした。咲ちゃんは清志に送られて女子寮に帰った。
これから一体どうなってしまうのだろうか。僕は不安で余り眠れなかった。
「空? 大丈夫か?」
僕は近づき、顔を覗き込んだ。すると真顔になり、まるで何事も無かった様に立ち上がった。
そして、振り返った彼女の顔は、今まで見たこともない様な無機質な、まるで仮面でも被っている様な表情だった。
「大丈夫。帰ろう?」
そう言うと彼女は階段へとスタスタと歩き出した。
さっきまであんなに悲鳴を上げて苦しんでいたのに、本当に大丈夫なのか。でも、まあ本人がそう言うなら、それなら告白の返事をしなきゃ……。
さっきまではいきなりの事で呆気に取られていたが、今度は冷静に答えることができる。
今度こそちゃんと言うんだ。お前が大好きだと。
僕は空に駆け寄り、肩に手をかけた。
「空! さっきの返事なんだけど……」
すると、手を振り払う様に肩を揺らすと、とても先ほどと同じ無機質な表情を向けてきた。
目を見ると、僕を見ていると言うよりは、虚空を見つめている様な怖さがある。
「返事? 何の事?
それよりも、もう用事はすんだから。
帰りましょう?」
彼女の言葉には何も感情がこもっていない様に思えた。冷たく、ただ思った事を機械の様に吐き出すだけの様に感じた。
彼女は僕が何も答えないのを確認するとまた、スタスタと歩き出した。
僕は咄嗟に彼女の手を掴んだ。
「え……ちょ、ちょっと待ってよ!
さっき、好きって言ってくれたよね?」
すると彼女は顔だけ僕の方を見ると呟く様に言った。
「好きって、なんです?」
心臓に杭を打ち込まれた様な衝撃だった。人って、あまりにも大きなショックを受けると固まってしまうようだ。体も、頭も動く事を拒絶するように停止した。
「……空」
その後しばらく屋上で星を見上げて放心していたが、気を取り直し屋上を降りた。
階段を降りて一回の玄関まで来ると、人影がある事に気がついた。小走りで近づき、目を凝らすと、そこには腕を押さえてボロボロになっている咲ちゃんとそれを介抱する清志の姿があった。
口と額からは血が垂れていて、あたりにポツポツと血の跡が付いていた。
「おい、どうしたんだ?
咲ちゃん、大丈夫なの?
誰にやられたんだ!?」
すると清志は咲ちゃんを抱き上げると、ゆっくりと僕の方へ顔を向けた。
その顔は、怒りと悲しみが入り混じったような複雑な表情だった。
「……空ちゃんよ」
「え……? 嘘つくなよ!!
空は人を傷つけるような奴じゃない!!
それは俺がよく知ってる!!」
僕は清志に詰め寄って叫んだ。あの虫を殺す事すら躊躇するような優しい空がそんな事をするとは考えられない。
すると、遠くで光がチラチラするのが見えた。どうやら警備員が巡回しに来たようだ。
「話は後よ。
寮に戻りましょう」
清志は歩き出した。僕はギリっと奥歯を噛み締め彼の後に続いた。
寮に着いた頃には、咲ちゃんは気を失っていた。
相当の痛手を負ったのだろう。これは早く手当てしなければ危ないかも知れない。
そもそもあの場で救急車を呼んでおくべきでは無かったのだろうか?
色々なことが一度に起きて頭が回らなかった。
「清志、取り敢えず咲ちゃんを病院に……」
「ダメよ。これはサッキーの意思なの。
黙ってついて来て」
清志の声は静かだが、まるで威嚇するような迫力があった。
僕は黙って彼に付き従った。すると着いたのは、以前僕が使っていた部屋だった。
部屋に入ると、何もなく月明かりだけが部屋を照らしていた。清志は電気もつけずに咲ちゃんをゆっくり寝かせると、上着を脱いで彼女の頭の下に入れた。
僕も上着を脱ぎ、彼女の体にかけた。清志は僕に背を向けるように彼女の横に座り、ハンカチで額の傷を押さえていた。
「清志、取り敢えず何があったか話してもらえるかな?」
すると彼は振り返らずに答えた。
「あの後、私たちは貴方達を玄関で待ってたの。
でも降りて来たのは空ちゃんだけだった。
それを不審に思ったサッキーは空ちゃんに掴みかかったの」
「あんた、先輩はどうしたの?
何であんた一人な訳?」
すると彼女は表情一つ変えず、サッキーの手を振り払った。
「痛いですよ。やめてくれませんか?」
その態度に完全にキレたサッキーは霊衣を纏った。
「なんですその顔。
歯ぁくいしばれ……やッ!?」
その時だった。空ちゃんはサッキーが言葉を言い終えるのも聞かずに刀を抜いて彼女を斬りつけた。
それはさっき見た戦いのものとは比べ物にならない程の速さで、気がついた頃には彼女は吹き飛ばされ壁に激突していた。
「やだ!?
サッキー!?」
私は彼女に駆け寄ると、彼女の意識はもう既に朦朧としていた。さっきの戦いで、ただでさえ疲弊していたのに、不意打ちの強撃で満身創痍になっている。
「ねぇ、サッキー!?
起きてサッキー!! お願いよ!!」
「まだ息があるね」
必死に彼女を揺さぶる私の後ろに、空ちゃんは音もなく近づき、私をの体を片手で吹き飛ばした。
彼女のその顔は今でも覚えている。人をただの物としか思っていない様な、そんな表情だった。
彼女はサッキーに馬乗りになると、顔を執拗に殴り始めた。
最初はサッキーもガードしていたが、次第にガードが下がり殴られるままになった。
あまりの光景に私は我慢できず、空ちゃんにタックルしたがさらりと避けられた。
私はその勢いのままサッキーに覆いかぶさると叫んだ。
「もうやめて!
このままじゃ死んじゃうわ!!
やるなら私を先にやりなさい」
すると空ちゃんは表情を一切崩さず立ち去った。
「ざっとこんな感じよ。
私は許せない。倒した相手に追い討ちするなんて……あの子はあんな事する子じゃないと思ってたのに、そっちこそ何があったの?
どうなったらあんなに人って豹変するのよ!?」
清志は話終えると、太い腕で目をゴシゴシと擦り涙を拭った。よっぽど悔しかったのだろう。そしてやっぱり彼は優しい。友達の事でこんなにも悔しがり、泣けない友達分まで涙を流せるのだから。
「それは……」
僕は屋上であった事を清志に話した。彼は真剣に耳を傾けてくれた。全てを聴き終えた彼は、しばらく黙っていた。
僕も黙り込み、しばらく部屋がしんと静まり返った。
そして、最初に口を開いたのは清志だった。
「呪い……かしら……」
僕はその言葉を聞いて、まるで右ストレートで顎を撃ち抜かれたような衝撃を受けた。あの優しい空の豹変ぶりは呪い以外に考えられない。
「呪い、確かにそうかも知れない……。
でも、どんな呪いなんだ?」
僕は今まで、天鬼の呪いは死に直面するような物だとばかり思っていたが、もしかしたら違うのかも知れない。
「凶暴になるって言うのはどう?
愛する人すら殺してしまう程の好戦的な性格なるから、天鬼家は女性のみの家系なのかも?」
「そう考えると合点がいくかもね。
でも、それなら真っ先に僕に襲いかかっていたんじゃ無いのかな?」
清志は咲ちゃんの処置を終え、僕に向き直った。
「分からないわね。
まずは呪いについて知らないと……。
だれか詳しい人はいないの?」
詳しい人か、愛ちゃんや師匠からはこの前、知っている限りのことを聞いたからこれ以上はないし……。
「あ、そう言えば……空のお婆さんなら何か知ってるかも!!」
それを聞いた清志は、膝を叩いて立ち上がった。
「そうね! 天鬼家の事は天鬼家の人に聞くのが一番の近道ね!
直接本人と話してみるか、あるいはその家系の誰かね」
「そうだよな! よし!
そうと決まれば今から聞きに……うっ」
「待ちなさい!
今何時だと思ってるの? こんな時間に行ったら迷惑よ。
交渉ごとや物を尋ねるときは、礼節を重んじるのは常識よ?
日を改めなさい」
立ち上がり走り出した瞬間、服の襟を掴まれ無理やり止められた。
「……た、確かに……」
僕はその場に座り直し、深呼吸をし自分を落ち着かせた。
それを見た清志も座り直しうんうんと頷いた。
「そう言えば、お前霊が見えるのか?」
僕はさっきから気になっていた。戦闘も目で追ってたし。
「ええ、小さい頃からね。実はあのヤンキー三人もずっと見えてたの!
だから水鉄砲勝負の時も、私とサッキーは動かなかったでしょ?」
「そうだ! 確かにお前ら動かなかった!
完璧な作戦だと思ったのにそう言う事だったのか!!!」
ずっと喉に刺さってた魚の骨がやっと取れた様なスッキリ感だ。
これが世に言うアハ体験という奴なのか!?
いや……違うか。
すると清志は天井を見上げ、虚な顔をした。
恐らく何かを思い出しているのだろう。
「私、よく霊が見える事と、私がオネエだって事でよく虐められたわ。
それをサッキーに相談した時、滅霊士の話を聞いたの」
そうだったのか……ひどい虐めを受けていたと聞いていたが、余り踏み込んではいけないと思い、詳しい事は聞いてなかった。
「だから知ってたんだね」
清志は僕の目を見てこくんと頷いた。
「ええ、それで仲良くなったの。
でもびっくりしたわ、三年間ずっと一緒だったあなたまで滅霊士の関係者だったなんて」
「まあ、関係者になったのほんの最近なんだけど」
僕と清志は笑い合った。さっきまでの険しい雰囲気が嘘の様だ。清志の凄いところは、話を最後まで聞いて、理解しようと努めてくれる所だ。彼のおかげで今まで、どんなに問題が起きても挫けずやってこれたのだと思う。
「ん……?
私、どうして……」
しばらくすると咲ちゃんが目を覚ました。そして僕は彼女を見て驚いた。
パックリと割れていた額が、もう塞がりかけていたのだ。
「咲ちゃん大丈夫なの!?」
僕は彼女の横に座ると傷があった部分の髪の毛を優しくかき上げた。
「ええ!? な、なに積極的っ!!」
その傷はまるで瞳を閉じる様に端から消えている。
「凄い……」
僕が感心していると、咲ちゃんが目を閉じ唇を差し出していた。
「え? な、何してんの!?」
「ちっ、バレたか……」
なんか段々口が悪くなっている様に感じる。
「サッキーずっと猫被ってたもんね?
でも私は素のあなたも素敵だと思うわ」
「ちょっと言わないでよ!
でも私も、ドロシーは素敵な女性だと思うよ」
二人は笑い合い手を合わせた。これが、女同士の友情なのかな。ん? 女同士の……?
それから咲ちゃんにも天鬼家の呪いのことを聞いたが、やはり知っていたのは何かしらの代償を負うかもしくは死ぬとしか知らなかったようだ。
それは恐らく、今まで掟を破った人が居なかったからか、もしくは破った瞬間処罰され消されたかのどちらかだと思う。
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