Dear my...

E.L.L

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17章

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「…今日はそろそろ、戻りましょうか」

写真の話と高梨先輩、小笠原先輩の話をした
私は小笠原先輩の後輩、とだけ名乗った

「…あの…」

英司がおずおずときりだした

「また…会いにに来てくれませんか…?」

「櫻野さんもうすぐ退院でしたよね?」

順調に回復してきている彼は1週間ほどで退院予定だ

「あ、そうですね…じゃあ、あの…俺からも会いに行っていいですか?」

「え?」

「もう少し!…あの、何か思い出せそう、なので…」

思わず笑ってしまった
英司はお願い事をするとき、言葉がまとまらないと早口になる
私が焦った時とちょっと似てるって小笠原先輩が言ってたっけ

「何か美味しいもの食べに行きませんか?」

笑いだした私にキョトンとした表情をしたあと、英司は少しはにかんで頷いた

何だか昔に戻ったみたいだな

ベンチから2人で立ち上がる

その瞬間胸部に圧迫感がが走る
まずい
一瞬目の前が真っ白になって心臓を捕まれるような気持ち悪さが来る
もう少ししたら鋭い痛みが走るはずだ
まだ待って

「…私、…少し用事を思い出したので、ここで…」

「氷野さん?!何だか顔色が…?」

「大丈夫、です
大丈夫なので」

英司はあまり納得していないようだった

「あの…これを…」

着ていたカーディガンを私に羽織らせてくれた

「冷えるので、着ていってください
…今日は来てくれてありがとうございました…」

英司はペコりと頭を下げて病院に戻っていく
もう少し
もう少し待って
英司が見えなくなるとほぼ同時に案の定強烈な痛みが走った
ペタンと座り込み、痛みが過ぎ去るのを待つ
英司のカーディガンをギュッと抱きしめた

戻ったみたい
なんて思ったからかな
薬の効き目も少しずつ悪くなってきている
もう、戻れない
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