Dear my...

E.L.L

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38章

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英司と最後に会ってから1週間
新しい治療法を試すため、私は来週入院する
これから入退院を繰り返すだろうから入院セットを作っておく

今日は英司のお母さんが家に来る
渡したいものがあるって言ってたけど何だろう

約束の時間通り春子さんが来た

「ごめんなさいね、もしかして忙しかった?」

「いえ!もう準備は大体できてるので」

「そうなのね
何か困った時は、私に出来ることがあるなら言ってね」

「ありがとうございます」

春子さんは確かフレイバーティーが好きだったはずだ
次家でゆっくりするのはいつか分からないから

「これなんですけど…」

未開封のフレイバーティーを差し出す
桃の香りとほんのりした甘さのお気に入りのものだ

「良かったら、貰って貰えませんか?」

「あら!これ私も大好きよ!すぐ売り切れちゃって中々手に入らないわよね!」

春子さんが嬉しそうに笑う

「でも、これは結子ちゃんに入れてもらいたいな」

「…」

「私も英司も結子ちゃんの入れてくれる紅茶好きなのよ
だから、また飲みに来るわ」

「…」

英司に酷いことを言ったのも春子さんは分かっているはずなのに
嘘に嘘を重ねていく私をそれでも見捨てないでくれる
もし長生きできるとしたらきっとこんな女性になりたいだろうと思う

「それは貰えないわ
それとね」

春子さんは白い封筒を出して私に渡した

「これ、渡して欲しいって頼まれたのよ」

春子さんから受け取った封筒を開けると写真とカードが出てきた

カードは古風な感じの花柄が型押しされていて真ん中にDearと印字されている
本来ならその後名前が書かれるはずなのだろうが空白になっている
正確に言えば、何か書こうとしたのだろう黒い点が書いてあるだけだった

写真を見た瞬間目頭が熱くなった
本当に口で話すより、写真で伝えてくる男だ
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