Dear my...

E.L.L

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62章

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「とりあえず、もう暗いから送らせてくれ」

照史は前に立って歩き出した
何だか無性に腹が立った
言い逃げする気なの?
私は始め自分が逃げようとしたことを棚に上げて叫んだ

「ちょっと待ちなさいよ」

照史が驚いた顔をして振り向いた

「私が好きじゃなかったら諦める?
そんな軽い気持ちならもう私の事放っておいてよ!!」

「え!いや、それは…違っ―」

「大体、いつもカッコつけすぎなのよ!!
何が暗いから送らせてくれ、よ!!
散々放ったらかしにして!!
こっちが心配するほどうじうじ悩むくせに、こっちを置いてどんどん先行っちゃうし
人が可愛くなろうと思って甘いもの控えてるのに美味しいお店誘ってくるし
カメラ撮ってる照史が好きなのにカメラ辞めたらとか言ってくるし」

だんだん八つ当たりになってきた

「り、凛花…」

「自由じゃなきゃ、あんたの1番大事なもの無くしちゃうでしょ!」

「…ご、ごめん…ケーキとか好きかと思って…」

謝るとこはそこじゃないし
そこは合ってるのよ
シュンとしないでよ
そういうの弱いんだから
もう
なんでこう大事なとこだけ鈍感なの

私も全然素直になれなかったけど

「…照史」

「ん
はっ?り、」

「今度カメラで遠征行く時はついて行ってあげてもいいわ」

「え?」

「でもその前に、美味しいショートケーキが食べたいわ」

「…お、おう…任せとけ!
あ!この近くにあるけど行くか?」

今泣いて酷い顔してんのよバカ

「…今は嫌よ…」

「あーもう時間遅いもんな
あの…送ってもいいですか?」

「…」

相変わらずなんかズレてるし、素直に答えるのは癪に障る気がした

「凛花、お願い」

私は渋々頷いた
そんな嬉しそうな顔しないでよ
全部馬鹿らしく思えてくるじゃないの
照史がおずおずと手を握ってきたから、私は指を絡ませた
照史の手が一瞬ピクリと動いたけど力を入れてきた
なんだか暑い
周りが暗くてよかった
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