兄妹戦争

東雲乙春

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兄妹戦争

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0:この台本には丸出し要素やパロディなどが数多く含まれています、あらかじめご了承ください。
0:改変アドリブ何でもやってください。ゆるーく行きましょう!
0:登場人物紹介 
0:妹・兄に依存気味ボケとツッコミこなします 
0:兄・丸出しの誠意ボケとツッコミをこなします
 :
0:このシナリオを選択してくださった貴方に感謝と憐憫を――


妹:ねえお兄ちゃん、話があるんだけど。
兄:……何だ藪から棒に、俺もう寝ようと思っていたんだが。
妹:黙ってそこに土下座して、早く。
兄:あぐらじゃダメ?
妹:ダメ、誠意っていうものがあるでしょ。
兄:ほう、いいだろう。
妹:あれ、だいぶ聞き分けが良――あ、ちょっと、何でおもむろに服を脱ごうとしているのさ。
兄:いや、誠意をね?
妹:どんな誠意よ。
兄:丸出しの誠意。
妹:黙れおいやめろパンツに手をかけるな思いとどまれ。
兄:止めるな!俺は何やったかわかんないけどお前を怒らせたんだ!
妹:意味も解らないままパンツ脱ごうとするな!
兄:ええい離せ!脱が――ぬがせろ!!
妹:そんな汚い謝罪求めてないんだけど!ちょ、力強っ。
兄:俺はお前と仲直りしたいんだ、家族と隔たりがあるのは嫌だろう!?
妹:今まさに!
妹:妹の前でパンツ脱ごうとしてこれ以上ない最悪のやり方で隔たりを作っているっていう自覚はある!?
兄:俺は何でも形から入るタイプなんだよ。
妹:ねえお願い、会話しよ?ていうかパンツ下ろそうとする力を地味に強めないで。
兄:今こそ布一枚の隔たりを脱ぎ捨てる時!
妹:それは砦なんだってば!
妹:人間としての尊厳を守ってる最後の砦なの!だから力を抜いて!
兄:はぁぁぁぁんっ(裏声)
兄:はいっ!丸出しの誠意!
妹:……ああ、うん。もういいからそのまま土下座してくれる?
兄:はい。
妹:……で、なんで私がこんなに怒っているかわかってる?
兄:この惨状見りゃわかるだろう、ありのままだ。脱いだから、怒った。
妹:そう、自覚はあるんだね。よかったお兄ちゃんが常識人で。
兄:兄を裸に剥いて土下座させる妹に言われると照れるな。
妹:喧嘩売ってんのか。
妹:ていうか、私が怒っているのはそれに対してだけじゃないんだけど。
兄:確かに、脱ぐ前から怒ってたな。でも今日は何もしてないぞ。
妹:とぼけないで!!
兄:とぼけてない!!(食い気味)
妹:私、知ってるよ。
兄:あ、スルーですかそうですか。
妹:お兄ちゃん、今日夕飯いらないって言ってたよね、友達と食べるからって。
兄:そうだな。
妹:友達と食べるからって!
兄:強調するね。
妹:だから私ね、せっかく作ったご飯をお兄ちゃんに食べてもらいたいのを我慢して送り出したんだよ?

妹:――なのにっ!
兄:急に叫ぶな。
妹:お兄ちゃん、本当は沙也加さんとご飯食べに行ってたんだぁ。
妹:家が隣なのをいいことに家の前であのメンヘラスイーツ女と待ち合わせして、楽しそうに出かけていって――
妹:おかしいよね。私に、嘘ついてるよね?
兄:嘘なんかついてな―
妹:嘘だっ!!
妹:ただの友達とかいうつもり?
妹:ただの友達と会うだけなのに、おしゃれして出かけたんだ?
妹:お兄ちゃん普段は中学ジャージしか着てないのに!黒ジャケット白シャツ青クロップドパンツってなに!
兄:俺の外出時の格好は中学ジャージしか許されないんですかそうですか。
妹:あのメンヘラ女も媚びたひらひらな服着て!
妹:メイクも気合入りまくって厚化粧になってたし!
兄:歌舞伎町とかにいる夜の蝶って感じだったな。
妹:あれは蝶を通り越して蛾だよ!
妹:瞬きする度にまつ毛からバサバサ鱗粉まき散らしてるんだよ!
兄:蛾とか失礼だろうが!せめて美輪明宏みたいって言えよ!
妹:黙れ小僧!それはそれでなんか美輪さんに失礼でしょう!
兄:そうだな、作者の代わりに謝らせてもらうわ、すまん!
妹:どうせシャレオツパンケーキ店で甘ったるいひと時を過ごしてきたんでしょ!
妹:一口づつ交換して食べさせあってそれをインスタに乗せてドヤるんだ!
兄:いや、パンケーキなんか食ってないぞ。大体夕飯に甘いモノとかあり得んし。

妹:嘘だっ!(同時)
兄:嘘だっ!(同時)

兄:っていうんだろ、知ってたわ。
兄:でも本当にパンケーキ店とか行ってないぞ、誘われはしたが。
妹:……じゃあ、何食べに行ったのさ。
兄:ラーメンだ。俺の行きつけの店。
妹:お兄ちゃんの行きつけのラーメン屋って……あぁ、背脂伝説?
兄:そうだ。
妹:ドカ盛りの?
兄:そうだ。
妹:あの脂が固形で浮いてるやつ?
兄:そうだ。
妹:美輪さんメイクの人と?
兄:そうだ。
妹:沙也加さん、湯気とか汗とか大丈夫だったの?
兄:顔が溶けてた。
妹:いや、さすがに同情を禁じ得ない。
兄:でも沙也加、最後の方は笑いながらスープ飲み干してたぞ。
兄:飲んでるスープ見たことない色してたけど。
妹:明らかにやけくそだよねそれ、正常な状態でファンデーションスープすするわけないでしょ。
兄:いや、あれは赤かった。
兄:飲み終えたとき沙也加の唇が取れてたから、ファンデーションも入っていたんだろうが、あのスープの主成分は  口紅だな。
兄:よって、口紅スープと表現するべきだ
妹:どうでもいいわ!
妹:ていうかさっきから聞いていれば顔が溶けただの唇取れただの、何でラーメン屋でスプラッタ映像垂れ流しているのさ。
兄:そう言えば、隣でラーメン食ってたおっさんも開いた口からラーメン垂れ流してたぞ。
妹:引いてるんだよ!
妹:顔面ドロドロで笑いながらスープすすってる女と、それ見てニコニコしてる男の変態サイコカップルにドン引きしてるんだよ!
兄:ちょ、やめろよカップルだなんて。
妹:照れるな!恥じろ!
兄:今俺はどっちの感情で赤くなってるでしょーうか。
妹:圧倒的前者……こんな兄をもって、私顔真っ赤だよ。
兄:照れんなよ。
妹:恥じてんだよ!
兄:いやすまんすまん、そう怒るなって少しからかい過ぎた。
妹:はぁ…ていうか、あのメンヘラスイーツがよくラーメンなんて選択したね。
兄:いや、パンケーキは嫌だって言ったら沙也加が「じゃあ君の好きなところでいいよ」っていうから。
妹:なるほどね、だからってメンヘラスイーツに背脂は酷だと思うよ?
妹:あいつら食べ物も恋愛も基本的に糖度高めで生きてるから。
兄:それはかなり偏見があると思うぞ。ていうか、そういうお前はどうなんだよ。
妹:私はがっつり重めが好きだから何も問題ないよ?
兄:……
妹:……
兄:恋愛じゃなくて、食事に関しての話をしているんだよな?そうなんだよな?
妹:うん、私は背脂ラーメン好きだから別に問題ないよ。
兄:そうか、なら今度一緒に行くか。
妹:約束だよ!お兄ちゃんと一緒にご飯行くなんて久しぶりだから楽しみ!
兄:そうだな、俺も楽しみだ。当日は化粧薄めにな。じゃあお休み!
妹:それで、メンヘラスイーツと付き合ってるの?
兄:ねえ、文脈って知ってる?
妹:丸出しの誠意とかいう意味不明用語を使うやつに私の語学力についてとやかく言われたくない。
兄:はい、黙ります。
妹:黙るな、質問に答えろ。
兄:……いや、付き合ってはいないけど、まだ。
妹:ふーん、『まだ』ねぇ?
兄:昔、約束したんだよ俺が沙也加をずっと守ってやるって。
兄:沙也加が困ってたらお前が好きな御伽噺の王子様みたいに白馬に乗って助けに行ってやるって
妹:現在、脂質異常の豚に乗ってきた王子様が笑いながらお姫様の顔を溶かしている模様。
兄:そしたらあいつ、すごく喜んで将来は君のお嫁さんになるって言ってくれてな。
妹:まさか、それがこの先続く苦難の日々、その序章であるとは思ってもいなかった。
兄:今でこそそんなこと言わないが、きっと心の底では俺のことを。
妹:自分にした仕打ちを忘れ、あいつはまだ俺のことを好きなはずだと語るDV男。
妹:哀れ!沙也加の明日はどっちだ!
兄:うるせえ!途中に妙なナレーションを挟むな!
妹:お兄ちゃん気づいてる?現状お兄ちゃんが沙也加さんと付き合える確率、限りなく0だよ?
兄:嘘だっ!
妹:……は?
兄:あの、お前もやったネタだからね?少しは反応するとか――
妹:ゲームだったら好感度ゼロ、実質のゲームオーバー。
妹:話しかけても「ごめん、今忙しいの」しか言わなくなる奴だよ。
妹:後に残るのは友達ケツエンドか妹ルートだけだよ!
妹:お兄ちゃんの残りの人生ケツ掘るかシスコンしかないんだよ!
兄:女に振られて出てくるのがその二択ってどんな人生歩んできたんだ俺は。
妹:ろ過された人生。
兄:つまった排水溝みたいな人生だよそんなん。
妹:妹にしておきなってお兄ちゃん。
兄:そんなに軽く禁断の愛をすすめるなよ。
妹:今ならお兄ちゃんが頭撫でてくれるだけでついてくるよ!
兄:そんなに安く禁断の愛を売るなよ。
妹:今ならお兄ちゃんを一生甘やかしてあげるよ!
兄:そんなに優しく禁断の愛を勧めるなよ、意思が揺らいじゃうだろ?
妹:今のはイエスと受け取ってもいいの?
兄:若干偏りかけたがお前に甘えまくる脂ギッシュ30代中年よだれかけ姿のリアルな描写が頭に浮かんで自分に自分でドン引きしたのでノーだ。
妹:はぁ……。
兄:俺はフレッシュに年が取りたいんだ、わかってくれ。
妹:そんなに
兄:あん?
妹:そんなに沙也加さんがいいんだぁ。
兄:ホモ達(だち)か妹か幼馴染なら俺は迷いなく幼馴染をとるね。
妹:そっか、そうなんだ。今まで黙って見ていたけどもう限界。
妹:……完全に毒されちゃってるんだ。
兄:自己紹介か?
妹:ホモかシスコンを選ばないお兄ちゃんなんてお兄ちゃんじゃない!
兄:お前にとっての兄・兄じゃないの定義は修羅の道を行くか否かなのか。
妹:そんなお兄ちゃんだめだよ、だめ。だめだめだめだめだめだめだめだめ。
兄:すぅーーー……。(ひと呼吸)
兄:さあ、始まりました第一回お兄ちゃん狩りRTA。
兄:解説と実況は不肖この(貴方の名前)が務めさせていただきます!
妹:だめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめ
兄:ハンターサイド、虹彩の失せた瞳で妹はヤンデレエンジンをいつもより多めにふかしております!
兄:呪詛のように吐かれるだめだめモーター音に私、冷や汗が止まりません。
妹:…………。
兄:さて、エンジンの調子を整え――おおっと!これは綺麗なクラウチングスタートの体勢だ!
兄:話の流れ的に今まで入れることができませんでしたが、妹は現在陸上部に所属しています!
兄:日焼けした健康的な肢体、しかしところどころに混在する競技服に守られた白磁のような肌!
兄:白と茶色、二色のコントラストが織りなしてできるその光景は、まさしくトラックの奇跡!
兄:夜も更けた閑静な住宅街を舞台に、今宵も彼女はその奇跡を見せてくれるのでしょうか!
兄:さあ、その短パンの先から覗くカモシカのような美しく鍛えられた足に、今力が籠められました!
妹:お兄ちゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!
兄:スターターピストルと呼ぶにはあまりにも大砲じみている怒号と共に、今!戦いの火ぶたは切って落とされました!
妹:ねえ何で逃げるの!私何にもしないよ!お兄ちゃんを元に戻すだけだよ!まずね!腕と足を落としてその後喉と目を潰すの!そうすれば私の元から離れていかないもんね!他の女を見ないもんね!ずっと一緒にいられるもんね!
兄:喜々として兄の四肢を捥ぐ算段を付ける妹、さっきまで人のことをサイコパスとかなんとか抜かしていた女と同一人物とは思えません!
兄:さあまずは階段を降りて行きます!築三十年、踏むたびにミシミシ悲鳴を上げるそれを降りた先には居間が!
兄:そこを抜けた先に玄関がありますが、カギとドアロックがしっかりかけてあり、戸締り万全となっております!
兄:そこで私はここを選択します!そおおおい!
妹:おおっと!こことかじゃ分からないでしょ!
妹:我が兄は何と!窓を突き破りました!築三十年がたがたの窓枠に収まり、その薄さからは考えられぬほどの長い年月雨風をしのいできた我が家最大の功労者を血も涙もなく無残に破壊しましたあああああああああ!
兄:実況感謝!あばよ!
妹:逃がすかああああああああ!
兄:さて、実況戻りまして私ですがただいま閑静な住宅街を走っております!
兄:後ろからはキッチンから拾ってきたであろう三徳包丁を振り回しながら猛襲してくるサイコパス女の叫びが聞こえてきます。
兄:間違いなく近所迷惑です!
妹:ギャルゲあるあるみたいに海外出張に行っているお母さんとお父さんにあの窓のことなんて説明するんだよおおおおおおおおおお!お前が説明しろよおおおおおおお!
兄:もう若干私を追いかける趣旨が違っているような気も致しますが取り敢えず逃げましょう!
兄:家を出て南へ数キロ走っていけば公園があります、しかし、そこにたどり着くには数々の難所を突破しなければなりません!
兄:早速第一の関門、急な下り坂!長距離のペース配分を崩される厄介な難所です!
妹:私下り坂嫌い!
兄:という事ですが、いかがですか?解説の……解説も私ですね。あー、身体を後ろ向きにして降りると楽だぞ!
妹:あ、ほんとだ!
兄:でも暗いからちょくちょく後ろは確認して気を付けて下りろよ?
妹:はーい!
兄:さあ、下り終えると第二の関門!
妹:難所が出てくるスパン短っ。この後はしばらく平地だよね?
兄:ここはドが付くほどの田舎!周りは田んぼ!道沿いに立つ街路灯!
妹:はっ!?まさか!
兄:そうだ!街路灯の光に誘われて大量の虫が集まってくる!
妹:ひぃっ!
兄:決して口を開けて走るなよ……バッタとディープキスしたくなきゃな!
妹:……したの?
兄:奴は中々に激しくて濃厚だったぞ、お口の中蹂躙されちゃった。
妹:私もう一生お兄ちゃんとキスできないかも。
兄:そりゃよかった。さて!口を閉じて駆け抜けろ!
妹:う、うん。
兄:行くぞおお!うおおおおおおおおおおおおおおおおお!?あああああああああああああああああああ!ぺっぺっぺえ!
妹:くちあけてんだよなあ……
間:
兄:おええええええ、目の前に突如現れた茶色い物体、気づいた瞬間には私の咥内にすっぽり収まっていました、まず感じるのが多少の苦みと何といってもその独特の臭さおええええええええ!
妹:おいやめろ身を削ってまで誰も得しない汚い解説するな!
兄:はあっ…はあっ…さあ、蟲床(田んぼゾーン)を抜け、更に進みますと、最後の関門が見えてまいりました!
兄:ぺえっ!畜生足が残ってやがった!
妹:あれは……
兄:そう、心臓破りの坂!全長1.5km、傾斜角20度勾配36.4%という文面では非常にわかりにくいですが実際地獄のような坂となっております。
兄:何でこんなところに公園を立てたのか!ともかく、ペース配分を考えて登らなければ持たないでしょう!
妹:坂道苦手なんだけどな……
兄:頑張れ頑張れやればできる!お前はできるんだよ!信じろよ自分を!お米食べろ!
妹:暑苦しいなぁ。
兄:ほら行くぞ、お兄ちゃんも頑張るから。
妹:うん…わかった。
間: 
妹:はぁっ、はぁっ、もう、だめかも……
妹:(かれこれ30分は登り坂を走っている)
妹:(とうに足は限界を迎え、足の感覚が薄れ始めている。
妹:何度も何度も体勢を崩しそうになりながらも私は兄の背中を必死に追い続ける)
兄:はぁっ、っあ、あぎらめるなぁぁあ!あと、もう少しだぞ!
妹:(兄が私を励ますが、本当にやばそうなのは兄の方だ。兄は運動部ではないし特にこれといって運動をしているところを見たことがない)
妹:(だからこそ、何が兄をここまで駆り立てているのかはわからないが、頑なに私に追いつかれまいとしていることだけはわかる)
妹:(ああ、ていうか私の方もそろそろ限界……)
妹:も、無理…だよぉ
妹:(思わず弱音が漏れ出た)
兄:大丈夫だ、昔、やくそく、したろ……っ!
妹:(私の泣き言に、兄はよくわからないことを言ってくる。)
妹:(約束?何かしたっけ?)
妹:(私は思い返そうとするが、酸欠で頭が回らずそれをやむ無く中断した。)
妹:はぁっ、はぁ、え?なん、だっけ。
妹:(私の呟きに、先を走り続ける兄は此方を振り向く)
兄:俺が、お前の前を走る。
兄:お前が、嫌いなこと、出来ないこと!俺が先に全部やって、お前に道を示してやる!だから、俺の後ろを、ついて来いって!
兄:お前は、じゃあお兄ちゃんが前にいる限り、諦めたりしないって、ずっとついていくって!言って!くれたろ!
兄:俺が今こうしてお前の前を走り続けている限り、お前は大丈夫だ!
妹:(その言葉で思い出した、昔、困難が立ちはだかるたびに諦めて泣いてばかりだった私に兄が言ってくれた言葉だ、とても勇気づけられた事を憶えている。この状況では根性論過ぎて若干の殺意を憶えるが。)
妹:っ!そんな……昔の、事!
兄:覚えて、いるさ!俺は、お前のお兄ちゃんだからな!
妹:(雲間から覗く月光に照らされ、兄の顔が見える。息も絶え絶えなその表情は然し、笑顔だった。)
妹:(あ、昔と同じ笑顔)
妹:お兄ちゃん……
妹:(ああ、この人はあの時から何も変わっていない。)
妹:(兄はどれだけ環境が変わろうと、どんな人とかかわろうと、私の兄であることをやめていなかった。)
妹:(それに比べて私は……)
妹:(自分を守るために兄に依存して、歪んで、束縛して、思い通りにいかなかったら拗ねて……変わってしまったのは私の方なのかもしれない)
妹:(そんなことを考え思わず苦笑が漏れた)
妹:(あーあ、これじゃあお兄ちゃんの事何も言えないや)
兄:兄たるものおおおおおおおおおおおおおお!妹に背中で示してなんぼだあああああああああああ!ラストスパートいくぞおおおおおおお!
妹:(馬鹿みたいに大声を上げて汗を垂らし、それでもよたよた走っていく兄の後姿を眺める)
妹:お兄ちゃん!
妹:(そう、私のお兄ちゃんは……)
兄:見とけよ!これがお前の兄の勇士だああああああああああ!
妹:お兄ちゃん!ここもう公園の近くだから街路灯が――
兄:うおおおおおおおおお!あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?ぺっぺええええええええ!
妹:(絶妙に、かっこ悪かった)
間: 
妹:はーっ、もう、無理……でも、登り切った!
兄:ヒューッ……ヒューッ……触角が……触角が……まだ口の中で動いてる……
妹:お兄ちゃん、大丈夫?
兄:お兄ちゃん、だいじょばない、しぬ、うごけない。
妹:かっこつけるからだよ、かっこよくないくせにさ。
兄:ばっか、世界一カッコいいお兄ちゃんだろ。
妹:……沙也加さんの事。
兄:……
妹:応援してあげよっか?うまくいくように。
兄:どういう風の吹き回しだ。
妹:べつに、何となくだよ。
兄:なんか企みがありそうで怖いわ。
妹:ちょ、酷い!人を腹黒みたいに!
妹:ふんだ、あそこの自販機で頑張ったお兄ちゃんにジュース買ってきてあげようと思ったけどやめよっかな!
兄:あー嘘嘘、妹マジ天使、女神!
妹:もう、調子いいんだから……
兄:俺――
妹:オレンジジュースでしょ、知ってるよ。そこのベンチにでも座って待ってて。
妹:(兄の返事を聞かずに自販機へと向かう。長年兄妹をやっているのだ、好みくらいはわかる。)
妹:(自販機に硬貨を入れオレンジジュースのボタンを押す。もう一個オレンジジュースを買おうとして、やめた。)
妹:(今日はグレープフルーツジュースにしよう)
妹:(後味少し苦めで苦手だけど、今日は何だか飲みたい気分だった)
妹:(私はオレンジジュースとグレープフルーツジュースを持ち、兄の座っているベンチへ歩く)
妹:(それにしても今日は色々と兄に振り回された気がする)
妹:(私も人のことは言えない気がするが、目の前でパンツを脱がれたり、窓を割られたり、意味もなく長距離走をやらされたりと、思い返せば色々と兄はやりすぎだった)
妹:(あ、いいこと思いついた!)
妹:(散々振り回されたことを考えれば、ムカムカも一入だ。悪戯の一つもしてやらなければ気が収まらない)
妹:(私はこっそりベンチでくつろぐ兄の背後に回り、ジュースをその首筋に当ててやろうと――)
兄:いや―それにしてもこんなにうまくいくとはな!公園まで走ってうやむやにしよう大作戦!
兄:追いつかれたら殺されると思って追いつかれないように全力で走って疲れたけど、なんか知らんが最終的に沙也加との仲まで応援してくれるっぽくなったし!
兄:きつい目に遭わせて、適当にそれっぽいこと言って励ましただけなのにな!
兄:あーあ!我が妹ながら単純で助かったわ!はっはっは!はひょう!?冷たっ!
妹:……
兄:……はぁん(小さく裏声)
妹:お兄ちゃん、話があるんだけど
兄:…………
妹:土下座
兄:はい
妹:(私は、兄を踏みつけながらオレンジジュースをごくごくと飲み干した)
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