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🌹『翠玉のケエス:芽吹』🌹 本編 💎 The EMPEROR:U 💎
Drop.011『 The EMPEROR:U〈Ⅱ〉』【2】
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「――もう、やめてちょうだいよ。――アタシ。やましい事なんて何もしてないんだから……」
そんな法雨に、楽しげに笑うと、桔流は首を傾げて言った。
「アハハ。なんでそうなっちゃうんですか。――王子様と城下町の“乙女”なんですから、ここは運命的なストーリーでいきましょうよ」
「――やぁよ」
その桔流の提案にツンと口を尖らせると、法雨は続けた。
「――だって、その王子様、“憲兵”が本職なのよ? ――そんな王子様とのストーリーなんて、息苦しくて、自由な暮らしを愛する“乙女”からしたら、願い下げなストーリーよ」
桔流は、その言葉で法雨の意図を理解すると、また楽しげに笑った。
「――あぁ~、ハハハ。――なるほど。なるほど。――それは確かに」
そんな桔流とのやりとりの後――、なんだかんだ言ってその男の正体が気になり始めてしまった法雨は、結局、業務に戻る桔流を見送りつつ、ちらとフロアを覗いた。
そして――、思わず己の目を疑った。
実は先ほど、法雨は念の為にと、例の講演のパンフレットを桔流に見せてもらったのだが――、なんと、そこに掲載されていた警視正の顔は、あの私立探偵――、若いオオカミたちのヒーローでもある――あの“雷”にそっくりだったのだ。
さらには、下の名こそ違えど、そこに掲載された警視正の姓までもが、雷の姓と同じ――“円月”であった。
そして、今、法雨のバーで酒を嗜んでいるそのオオカミ族の客も、あの“雷”に違いなかった。
(一体、どうなってるの……)
一体何が真実なのか、困惑しきりの中ではあったが――、いずれにしても、法雨には、ようやっと店に訪れたあの男に、伝えなければならない事があった。
法雨は、改めて気を取り直すと、雷が注文していた次のオーダーを、自らが運ぶことにした。
💎
「――失礼いたします」
「――あぁ。――どう、も……」
丁寧に断りを入れ、法雨が雷の前に丁寧にグラスワインを据えると、礼を告げながら顔を上げた彼は、しばし驚いた様子で法雨を見た。
その様子に、法雨は静かに苦笑し、改めて挨拶をした。
「お久しぶりです。――で、合っておりますでしょうか」
すると、雷は穏やかな笑みを浮かべて言った。
「ははは。――えぇ。合ってます。――お久しぶりです。――法雨さん」
法雨は、それに同じく微笑んで応じる。
やはり、この店を訪れていたこの男は、法雨が知っている“あの雷”で違いないようであった。
(――やっぱり、間違いなかったわね。――まぁ、アタシの名前を知っていた事には驚いたけれど……、それは多分、探偵だから――と云うよりは、きっと、京たちと話している時にでも知ったんでしょうね)
「――あれから、お加減はどうですか?」
そして、思考を巡らせながらも、法雨が礼を告げようとすると、先に雷が問うた。
法雨は、その不意の問いに、少し驚きながらも笑顔で応じた。
「――あ、えぇ。――お蔭様で、――変わりなく元気です」
雷は、それに安堵したようにして笑む。
そんな法雨に、楽しげに笑うと、桔流は首を傾げて言った。
「アハハ。なんでそうなっちゃうんですか。――王子様と城下町の“乙女”なんですから、ここは運命的なストーリーでいきましょうよ」
「――やぁよ」
その桔流の提案にツンと口を尖らせると、法雨は続けた。
「――だって、その王子様、“憲兵”が本職なのよ? ――そんな王子様とのストーリーなんて、息苦しくて、自由な暮らしを愛する“乙女”からしたら、願い下げなストーリーよ」
桔流は、その言葉で法雨の意図を理解すると、また楽しげに笑った。
「――あぁ~、ハハハ。――なるほど。なるほど。――それは確かに」
そんな桔流とのやりとりの後――、なんだかんだ言ってその男の正体が気になり始めてしまった法雨は、結局、業務に戻る桔流を見送りつつ、ちらとフロアを覗いた。
そして――、思わず己の目を疑った。
実は先ほど、法雨は念の為にと、例の講演のパンフレットを桔流に見せてもらったのだが――、なんと、そこに掲載されていた警視正の顔は、あの私立探偵――、若いオオカミたちのヒーローでもある――あの“雷”にそっくりだったのだ。
さらには、下の名こそ違えど、そこに掲載された警視正の姓までもが、雷の姓と同じ――“円月”であった。
そして、今、法雨のバーで酒を嗜んでいるそのオオカミ族の客も、あの“雷”に違いなかった。
(一体、どうなってるの……)
一体何が真実なのか、困惑しきりの中ではあったが――、いずれにしても、法雨には、ようやっと店に訪れたあの男に、伝えなければならない事があった。
法雨は、改めて気を取り直すと、雷が注文していた次のオーダーを、自らが運ぶことにした。
💎
「――失礼いたします」
「――あぁ。――どう、も……」
丁寧に断りを入れ、法雨が雷の前に丁寧にグラスワインを据えると、礼を告げながら顔を上げた彼は、しばし驚いた様子で法雨を見た。
その様子に、法雨は静かに苦笑し、改めて挨拶をした。
「お久しぶりです。――で、合っておりますでしょうか」
すると、雷は穏やかな笑みを浮かべて言った。
「ははは。――えぇ。合ってます。――お久しぶりです。――法雨さん」
法雨は、それに同じく微笑んで応じる。
やはり、この店を訪れていたこの男は、法雨が知っている“あの雷”で違いないようであった。
(――やっぱり、間違いなかったわね。――まぁ、アタシの名前を知っていた事には驚いたけれど……、それは多分、探偵だから――と云うよりは、きっと、京たちと話している時にでも知ったんでしょうね)
「――あれから、お加減はどうですか?」
そして、思考を巡らせながらも、法雨が礼を告げようとすると、先に雷が問うた。
法雨は、その不意の問いに、少し驚きながらも笑顔で応じた。
「――あ、えぇ。――お蔭様で、――変わりなく元気です」
雷は、それに安堵したようにして笑む。
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