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🌹『瑠璃のケエス:芽吹』💎本編🌹
Drop.007『 Ice and a litttle water〈Ⅱ〉』【3】
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「――あのさ、桔流君」
「はい?」
沈黙の中、不意に名を呼ばれた桔流は、首を傾げ、きょとんとした表情で花厳に応じた。
花厳は、そんな桔流を見つめて思う。
(たとえ、一生寄り添える恋人になれなかったとしても、せめて俺が、桔流君の思い込みを変えるきっかけだけでも作れたら……)
そして、そんな思いを胸に、花厳は、不思議そうに見返してくる桔流を改めて見据え、言った。
「――もし、君さえ良ければ、なんだけど、――俺と、そういう関係になってみるのはどう?」
「………………え?」
桔流は、その予想外の提案に、しばし目を見開いた。
しかし、言葉の意を解すと、すっと目を逸らしては目を伏せ、ゆっくりと言った。
「――……やめておいた方が、いいと思います」
そんな桔流に、
「俺じゃ、見合わない?」
と、花厳が言うと、桔流は慌てて首を振る。
「――まさか! ――花厳さんは素敵な人だと思います。――それこそ、俺には勿体ないくらいに」
そして、そんな咄嗟の言葉を紡いだ桔流だったが、すべて紡ぎ終えたところで、一度上げた顔も目も再び伏せると、今度は耳も下げてしまった。
しかし、そんな桔流を前にしても、花厳は引かなかった。
「それは俺もだよ。桔流君」
花厳は、優しい声色で、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「――桔流君みたいな素敵な子は、俺なんかには勿体ないと思う。――でも、どうやらそんな君も、俺を素敵だと思ってくれてるみたいだ。――建前で言ったんじゃないなら、君は俺の事を“勿体ない”とまで言って、高く評価してくれてる。――なのに、それでも、“やめておいた方がいい”って言うのは、どうしてかな」
「それは……」
花厳の問いに、桔流は戸惑う。
「――うん」
花厳は、そんな桔流に穏やかに頷き、優しく見守った。
そんな花厳に見守られ、しばしの沈黙を挟んだ桔流は、しばらくして、おずおずと言葉を紡いだ。
「――……俺はきっと、あなたを好きにはなれないから」
花厳は、そんな桔流に優しく問い返す。
「どうして、そう思うんだい」
桔流はそれに、ぎこちなく紡ぐ。
「俺は、これまで……、どんなに努力をしても、好きだと言ってくれた人を、“恋愛的に”好きになる事ができなかった……。――だからきっと、今回もそうだと思うんです。――たとえ、“人間的に”は好きになれても、“恋愛的に”好きになる事は、たとえ花厳さんであっても、きっとできないと思うんです……。――それに」
桔流はひとつ区切ると、更に俯く。
そして、苦しげな表情を浮かべると、弱弱しく続けた。
「――せっかく、――せっかくこうしてお食事したり、お話ししたりできるようになったのに……。――一度でも恋人になってしまったら、もう二度と、友人には戻れなくなっちゃうじゃないですか……」
「――………………」
花厳は、その桔流の言葉に、黙したまま、しばし目を細める。
そんな花厳に見詰められながら、桔流は更に続ける。
「俺は、これからも、花厳さんと色々なお話がししたいです。――だから……ここで花厳さんとお付き合いしてしまって、最後まで恋愛感情をもてなかった結果、花厳さんと二度とお話しできないような、花厳さんの元恋人――なんて事になるのは……、――俺は……嫌です……」
「………………なるほど」
そして、桔流が思いの丈を紡ぎ終え、花厳がそれに幾分かの間を置いて頷くと、桔流は頭を下げた。
「はい?」
沈黙の中、不意に名を呼ばれた桔流は、首を傾げ、きょとんとした表情で花厳に応じた。
花厳は、そんな桔流を見つめて思う。
(たとえ、一生寄り添える恋人になれなかったとしても、せめて俺が、桔流君の思い込みを変えるきっかけだけでも作れたら……)
そして、そんな思いを胸に、花厳は、不思議そうに見返してくる桔流を改めて見据え、言った。
「――もし、君さえ良ければ、なんだけど、――俺と、そういう関係になってみるのはどう?」
「………………え?」
桔流は、その予想外の提案に、しばし目を見開いた。
しかし、言葉の意を解すと、すっと目を逸らしては目を伏せ、ゆっくりと言った。
「――……やめておいた方が、いいと思います」
そんな桔流に、
「俺じゃ、見合わない?」
と、花厳が言うと、桔流は慌てて首を振る。
「――まさか! ――花厳さんは素敵な人だと思います。――それこそ、俺には勿体ないくらいに」
そして、そんな咄嗟の言葉を紡いだ桔流だったが、すべて紡ぎ終えたところで、一度上げた顔も目も再び伏せると、今度は耳も下げてしまった。
しかし、そんな桔流を前にしても、花厳は引かなかった。
「それは俺もだよ。桔流君」
花厳は、優しい声色で、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「――桔流君みたいな素敵な子は、俺なんかには勿体ないと思う。――でも、どうやらそんな君も、俺を素敵だと思ってくれてるみたいだ。――建前で言ったんじゃないなら、君は俺の事を“勿体ない”とまで言って、高く評価してくれてる。――なのに、それでも、“やめておいた方がいい”って言うのは、どうしてかな」
「それは……」
花厳の問いに、桔流は戸惑う。
「――うん」
花厳は、そんな桔流に穏やかに頷き、優しく見守った。
そんな花厳に見守られ、しばしの沈黙を挟んだ桔流は、しばらくして、おずおずと言葉を紡いだ。
「――……俺はきっと、あなたを好きにはなれないから」
花厳は、そんな桔流に優しく問い返す。
「どうして、そう思うんだい」
桔流はそれに、ぎこちなく紡ぐ。
「俺は、これまで……、どんなに努力をしても、好きだと言ってくれた人を、“恋愛的に”好きになる事ができなかった……。――だからきっと、今回もそうだと思うんです。――たとえ、“人間的に”は好きになれても、“恋愛的に”好きになる事は、たとえ花厳さんであっても、きっとできないと思うんです……。――それに」
桔流はひとつ区切ると、更に俯く。
そして、苦しげな表情を浮かべると、弱弱しく続けた。
「――せっかく、――せっかくこうしてお食事したり、お話ししたりできるようになったのに……。――一度でも恋人になってしまったら、もう二度と、友人には戻れなくなっちゃうじゃないですか……」
「――………………」
花厳は、その桔流の言葉に、黙したまま、しばし目を細める。
そんな花厳に見詰められながら、桔流は更に続ける。
「俺は、これからも、花厳さんと色々なお話がししたいです。――だから……ここで花厳さんとお付き合いしてしまって、最後まで恋愛感情をもてなかった結果、花厳さんと二度とお話しできないような、花厳さんの元恋人――なんて事になるのは……、――俺は……嫌です……」
「………………なるほど」
そして、桔流が思いの丈を紡ぎ終え、花厳がそれに幾分かの間を置いて頷くと、桔流は頭を下げた。
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