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🌹『瑠璃のケエス:芽吹』💎本編🌹
Drop.010『 Stir〈Ⅲ〉』【2】
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花厳は、自分に暗示をかけるようにして、続けた。
「あぁ。そうだ。それと。――桔流君。君は美人さんなんだから。ああいう可愛い誘い文句も、あまり気軽に言わない方がいいよ」
そして、相変わらず黙したままの桔流に、
「――さ。じゃあ、ベッドまで案内するよ。――肩を貸すから、おいで」
と、花厳が言うと、桔流は、
「……はい。ありがとうございます」
と、素直に頷き、花厳の肩を借りて立ち上がった。
肩を貸して立ち上がると、桔流の体温が、今まで以上にはっきりと感じられた。
桔流と出会ってから、最も近い距離で桔流の存在を感じる事となった花厳は、己の欲心が甘く囁くのを感じた。
しかし、そんな甘い囁きも理性で払いのけながら、花厳は、桔流を寝室まで連れてゆく。
そして、寝室に到着すると、桔流を自身のベッドの淵に座らせた。
桔流はそこで、改めて礼を言う。
「ありがとうございます……。――でも、この服のままベッド使っちゃっていいんですか?」
しばし時間が経った事で酔いが醒めてきたのか、桔流の口調は、未だゆるりとしていながらも、普段の調子に戻りつつあった。
そんな桔流に微笑むと、花厳は言った。
「あぁ。大丈夫だよ。そういうの、あまり気にしないから。桔流君さえ問題なければ、そのまま休んで」
すると、柔らかなシーツの感触を確かめるようにした桔流は、またひとつ礼を言った。
「すいません。ありがとうございます」
花厳はそれに、
「いいえ」
と、笑むと、次いで、
「――あぁ。そうだ」
と言い、自身もベッドに片膝を付くようにして乗るなり、ベッドボードに置かれたスタンドライトに手を伸ばした。
そして、スタンドライトを点け、好みの照明具合を尋ねようとしたところで、ふと動きを止めた。
己の服が、何かにつんと引かれるのを感じたからだ。
その感覚を不思議に思い、花厳がふと自身の腰元を見やると、白く美しい指が、花厳の服の裾を掴んでいるのが見えた。
花厳は、それを一目してから、桔流を見た。
「……桔流君?」
そんな桔流は、目を伏せ、幾本かの流線を描いたシーツに視線を落としている。
状況が呑み込めず、花厳は、そのままの状態で、今一度桔流に尋ねる。
「……どうしたの?」
すると、やんわりと暖色に照らされた流線を見つめたまま、桔流は言った。
「そういうトコで押さないから、逃がしちゃうんですよ。――花厳さん」
その言葉に、花厳は黙す。
「――………………」
そんな花厳をよそに、桔流は、つんと引いていた花厳の服の裾を、親指と人差し指で擦るようにしながら弄ぶと、続けた。
「――そうやって、相手のためばかりを考えて、本当の自分の気持ちは後回しにして、後回しにした事すら相手に伝えないまま我慢して、――ただただ、それを繰り返して――。――それじゃあ相手は、花厳さんの気持ちなんて一生分からないし、気遣いをしてもらった事すら、一生知らないまま過ごす事になっちゃうんですよ。――もしかしたら相手は、その時。――花厳さんと同じような気持ちで居るかもしれないのに……」
桔流は、そこでひとつ区切ると、ようやっと顔を上げた。
次いで、花厳と視線を交えるなり、さらに紡ぐ。
「あぁ。そうだ。それと。――桔流君。君は美人さんなんだから。ああいう可愛い誘い文句も、あまり気軽に言わない方がいいよ」
そして、相変わらず黙したままの桔流に、
「――さ。じゃあ、ベッドまで案内するよ。――肩を貸すから、おいで」
と、花厳が言うと、桔流は、
「……はい。ありがとうございます」
と、素直に頷き、花厳の肩を借りて立ち上がった。
肩を貸して立ち上がると、桔流の体温が、今まで以上にはっきりと感じられた。
桔流と出会ってから、最も近い距離で桔流の存在を感じる事となった花厳は、己の欲心が甘く囁くのを感じた。
しかし、そんな甘い囁きも理性で払いのけながら、花厳は、桔流を寝室まで連れてゆく。
そして、寝室に到着すると、桔流を自身のベッドの淵に座らせた。
桔流はそこで、改めて礼を言う。
「ありがとうございます……。――でも、この服のままベッド使っちゃっていいんですか?」
しばし時間が経った事で酔いが醒めてきたのか、桔流の口調は、未だゆるりとしていながらも、普段の調子に戻りつつあった。
そんな桔流に微笑むと、花厳は言った。
「あぁ。大丈夫だよ。そういうの、あまり気にしないから。桔流君さえ問題なければ、そのまま休んで」
すると、柔らかなシーツの感触を確かめるようにした桔流は、またひとつ礼を言った。
「すいません。ありがとうございます」
花厳はそれに、
「いいえ」
と、笑むと、次いで、
「――あぁ。そうだ」
と言い、自身もベッドに片膝を付くようにして乗るなり、ベッドボードに置かれたスタンドライトに手を伸ばした。
そして、スタンドライトを点け、好みの照明具合を尋ねようとしたところで、ふと動きを止めた。
己の服が、何かにつんと引かれるのを感じたからだ。
その感覚を不思議に思い、花厳がふと自身の腰元を見やると、白く美しい指が、花厳の服の裾を掴んでいるのが見えた。
花厳は、それを一目してから、桔流を見た。
「……桔流君?」
そんな桔流は、目を伏せ、幾本かの流線を描いたシーツに視線を落としている。
状況が呑み込めず、花厳は、そのままの状態で、今一度桔流に尋ねる。
「……どうしたの?」
すると、やんわりと暖色に照らされた流線を見つめたまま、桔流は言った。
「そういうトコで押さないから、逃がしちゃうんですよ。――花厳さん」
その言葉に、花厳は黙す。
「――………………」
そんな花厳をよそに、桔流は、つんと引いていた花厳の服の裾を、親指と人差し指で擦るようにしながら弄ぶと、続けた。
「――そうやって、相手のためばかりを考えて、本当の自分の気持ちは後回しにして、後回しにした事すら相手に伝えないまま我慢して、――ただただ、それを繰り返して――。――それじゃあ相手は、花厳さんの気持ちなんて一生分からないし、気遣いをしてもらった事すら、一生知らないまま過ごす事になっちゃうんですよ。――もしかしたら相手は、その時。――花厳さんと同じような気持ちで居るかもしれないのに……」
桔流は、そこでひとつ区切ると、ようやっと顔を上げた。
次いで、花厳と視線を交えるなり、さらに紡ぐ。
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