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🌹『瑠璃のケエス:芽吹』💎本編🌹
Drop.020『 Shake〈Ⅱ〉』【5】
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「――花厳さんは……本当に……俺なんかでいいんですか……」
そんな桔流に、ゆっくりと近付くと、手を伸ばせば触れられるほどの距離で、花厳は言った。
「――“君でいい”じゃなくて、君じゃないと駄目なんだよ。桔流君。――桔流君は、俺の前の恋人の事も知ってるから、この言葉を信じてもらうには、時間がかかるかもしれない。――でも、俺は、君に告白したあの日よりも前から、ずっと君の事が好きだった。――君を好きになったその時から、俺は、君以外見えなくなった。――俺にはもう、君しか見えないんだ。――だから、俺には、君じゃないと駄目なんだ」
桔流は、それに、問う。
「……それ、本当に……信じて……いいですか?」
花厳は、明瞭に紡ぐ。
「もちろん」
桔流は、さらに問う。
「後悔……しないですか?」
花厳は、揺らぎない声で紡ぐ。
「しないよ」
桔流は、その花厳の言葉を噛みしめるようにすると、ひとつ、震えた息を吐いた。
そして、恐る恐る、紡ぐ。
「……じゃあ……俺も……言います」
花厳が、それに黙して応じると、一呼吸置き、桔流は続けた。
「――……俺も、――……俺も……花厳さんが………………好きです……」
花厳は、それに、ひとつ瞳を揺らがせると、目を細め、微かに眉根を寄せて微笑んだ。
花厳は、桔流からその言葉をもらえる日は未来永劫訪れないかもしれない、という覚悟もしていた。
だが、その覚悟は、たった今。
その役目を終えた。
桔流は、黙したままの花厳に、さらに紡ぎ、軽く頭を下げた。
「――あの日。――花厳さんの話を最後まで聞かずに……出ていったりして……本当に、ごめんなさい」
そんな桔流に、花厳は愛おしげに眉根を寄せて笑むと、その髪を、優しく撫でた。
「謝らなくていいんだよ。桔流君は何も悪くない。――あの日は、君に勘違いさせるような事をした、俺が悪かったんだ」
桔流はそれに首を振り、声なく、花厳に紡いだ。
その桔流の手元をふと見れば、そこには数滴の雫が落ちていた。
花厳は、その大きな手で桔流の手をそっと包むようにすると、桔流を優しく抱き寄せた。
「ごめんね。――また、泣かせちゃって」
今度こそ、涙する桔流をその腕に抱く事ができた花厳に、桔流は、未だ震える声で、しばし不満げに言う。
「――花厳さんのせいで……最近……俺の涙腺……めちゃくちゃ緩くなった気がします……。――花厳さんの事になると……すぐこうなる……」
腕の中で文句を紡ぐ桔流の髪を撫でると、花厳は、桔流の耳元で言う。
「それは――、喜んでいい話?」
すると、桔流は、その花厳の胸元にぐいと顔を埋め、声をくぐもらせては、むすりとこぼした。
「……どうでしょうね」
花厳は、それにおかしそうに笑うと、言った。
「――あぁ。そういえば、桔流君」
「なんですか?」
そんな花厳に、桔流は相変わらず顔を埋めて言う。
花厳は、その様子も愛らしく思いながら、続けた。
「桔流君はさ、あの日に俺が出した贈り物を、さっきまでは、“前にお店に忘れた物と同じ物”だと思ってたんだよね?」
「ですね……」
それに桔流が頷くと、花厳は本題を紡ぐ。
そんな桔流に、ゆっくりと近付くと、手を伸ばせば触れられるほどの距離で、花厳は言った。
「――“君でいい”じゃなくて、君じゃないと駄目なんだよ。桔流君。――桔流君は、俺の前の恋人の事も知ってるから、この言葉を信じてもらうには、時間がかかるかもしれない。――でも、俺は、君に告白したあの日よりも前から、ずっと君の事が好きだった。――君を好きになったその時から、俺は、君以外見えなくなった。――俺にはもう、君しか見えないんだ。――だから、俺には、君じゃないと駄目なんだ」
桔流は、それに、問う。
「……それ、本当に……信じて……いいですか?」
花厳は、明瞭に紡ぐ。
「もちろん」
桔流は、さらに問う。
「後悔……しないですか?」
花厳は、揺らぎない声で紡ぐ。
「しないよ」
桔流は、その花厳の言葉を噛みしめるようにすると、ひとつ、震えた息を吐いた。
そして、恐る恐る、紡ぐ。
「……じゃあ……俺も……言います」
花厳が、それに黙して応じると、一呼吸置き、桔流は続けた。
「――……俺も、――……俺も……花厳さんが………………好きです……」
花厳は、それに、ひとつ瞳を揺らがせると、目を細め、微かに眉根を寄せて微笑んだ。
花厳は、桔流からその言葉をもらえる日は未来永劫訪れないかもしれない、という覚悟もしていた。
だが、その覚悟は、たった今。
その役目を終えた。
桔流は、黙したままの花厳に、さらに紡ぎ、軽く頭を下げた。
「――あの日。――花厳さんの話を最後まで聞かずに……出ていったりして……本当に、ごめんなさい」
そんな桔流に、花厳は愛おしげに眉根を寄せて笑むと、その髪を、優しく撫でた。
「謝らなくていいんだよ。桔流君は何も悪くない。――あの日は、君に勘違いさせるような事をした、俺が悪かったんだ」
桔流はそれに首を振り、声なく、花厳に紡いだ。
その桔流の手元をふと見れば、そこには数滴の雫が落ちていた。
花厳は、その大きな手で桔流の手をそっと包むようにすると、桔流を優しく抱き寄せた。
「ごめんね。――また、泣かせちゃって」
今度こそ、涙する桔流をその腕に抱く事ができた花厳に、桔流は、未だ震える声で、しばし不満げに言う。
「――花厳さんのせいで……最近……俺の涙腺……めちゃくちゃ緩くなった気がします……。――花厳さんの事になると……すぐこうなる……」
腕の中で文句を紡ぐ桔流の髪を撫でると、花厳は、桔流の耳元で言う。
「それは――、喜んでいい話?」
すると、桔流は、その花厳の胸元にぐいと顔を埋め、声をくぐもらせては、むすりとこぼした。
「……どうでしょうね」
花厳は、それにおかしそうに笑うと、言った。
「――あぁ。そういえば、桔流君」
「なんですか?」
そんな花厳に、桔流は相変わらず顔を埋めて言う。
花厳は、その様子も愛らしく思いながら、続けた。
「桔流君はさ、あの日に俺が出した贈り物を、さっきまでは、“前にお店に忘れた物と同じ物”だと思ってたんだよね?」
「ですね……」
それに桔流が頷くと、花厳は本題を紡ぐ。
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