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5 海外のダンジョン情報
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総理会見の日を境に、日本国内では〝ダンジョン化現象〟が広く知られることになった。
だが肝心の詳細なダンジョンについての情報は、不足していた。
まず、国内唯一のダンジョンである北海道の「宗谷ダンジョン」は、国の管理下で入場が厳密に規制されている。
さらに、ダンジョンの内部では電子機器が故障するのだ。
動画配信者が宗谷ダンジョンに無許可で侵入するケースが何件か発生した。しかしいずれもダンジョン配信は数分で途絶えてしまうのだ。
そこで弔木を含めた多くの人々は、翻訳サイトを使いながら、海外の情報を漁った。
以前までは言語の壁や「生成AIによるガセネタ」と言った疑念から、国内での注目度はかなり低かった。
しかし海外では既に「ダンジョン化現象」に対して、様々な対策が取られていたのだ。
例えば――
・ダンジョン攻略情報の整備
・ダンジョン攻略者のコミュニティ――ギルドの設置
・武器や防具の製造、販売を行う企業の進出
・ダンジョンで採れた資源を売買するマーケット
・ダンジョンや魔法、魔物を研究する組織
海外では国家や企業、そして個人レベルでダンジョン探索の動きが活発化していた。
海外のフォーラムでは、
「おいおい、俺たちまるでおとぎ話の中にいるみたいじゃないか」
「いいやジャパニーズアニメーションだ。イセカイテンセイ!」
などの声があがっていた。
そして実際、魔力を有する「海外ニキ」たちはこぞってダンジョンに潜ろうとしていた。
「ダンジョンで一儲けしようぜ!」
と。
ダンジョンによって、世界は大きく形を変わろうとしていた。その波は遠からず、日本国内にも波及することになるのは明らかだった。
そして日本の片隅、東京のはずれのアパートの一室で、その大波に乗ろうとする男がいた。
「これ、完全に〝レイルグラント〟だろ……」
無味乾燥な現実が、かつて冒険していた剣と魔法の世界〝レイルグラント〟のようになろうとしている。
弔木は毎日の日課のように、政府広報サイトにアクセスしていた。
「くそ、総理の会見以来、何の情報も出てこないじゃないか……早くしてくれよ……」
築20年のアパートの一室で、弔木はため息を漏らす。
海外では既にダンジョン関連の経済圏が出現している。
そう、ダンジョンは金になるのだ。
異世界で魔物と戦ってきた弔木の力を持ってすれば、ホームセンターでレジを打つよりも容易く金が稼げる。
煩わしい自称エリートの井桐とも顔を合わせずにすむ――。
弔木の頭の中は、この数日ダンジョンで持ちきりだった。
「やった……!」
金曜日の夕方六時、政府が用意したサイトの表示が変わった。
ダンジョン探索隊の募集内容が明らかになった。
弔木は夢中でページの内容を読み込んだ。
スマホを弄る弔木の手が止まった。
応募の方法が、あまりにも無茶苦茶だったのだ。
「な、何だと……? 多数の応募者が殺到されることが予想されるため、第一次のダンジョン探索隊の選考は現地、つまり北海道の宗谷ダンジョン周辺の、国定公園で行なう……? 無茶苦茶だ!」
政府としては、国民の安全を守るため、魔力を持つ者だけをダンジョンに入れたい。
だが魔力を測定する計器はつい最近になって数個ほど、ダンジョンから発見されたばかりだった。
そこで広大な北海道にダンジョンが出現したのを良いことに、志願者を一気に集めて片っ端から魔力の測定をしよう、ということらしい。
「あの総理、検討するって連呼してたけど……本当に検討してたんだな」
他国では既に、ダンジョンの開発や魔石の研究解析が進められていた。
ダンジョンという新たな可能性を前にして、他国に遅れを取りたくはないのだろう。
総理は検討し、決断した。
そして今、弔木にも決断の時が迫っていた。
「北海道か……遠いな」
預金残高は、十万円ほど。
今月の家賃や光熱費の支払いは、まだ終わっていない。
だが高速バスやローカル線などの金がかからない方法を使えば、どうにかなりそうだ。
弔木の決断は速かった。
「でも行くしかないな」
元勇者の弔木は、旅立ちの準備を始めた。
だが肝心の詳細なダンジョンについての情報は、不足していた。
まず、国内唯一のダンジョンである北海道の「宗谷ダンジョン」は、国の管理下で入場が厳密に規制されている。
さらに、ダンジョンの内部では電子機器が故障するのだ。
動画配信者が宗谷ダンジョンに無許可で侵入するケースが何件か発生した。しかしいずれもダンジョン配信は数分で途絶えてしまうのだ。
そこで弔木を含めた多くの人々は、翻訳サイトを使いながら、海外の情報を漁った。
以前までは言語の壁や「生成AIによるガセネタ」と言った疑念から、国内での注目度はかなり低かった。
しかし海外では既に「ダンジョン化現象」に対して、様々な対策が取られていたのだ。
例えば――
・ダンジョン攻略情報の整備
・ダンジョン攻略者のコミュニティ――ギルドの設置
・武器や防具の製造、販売を行う企業の進出
・ダンジョンで採れた資源を売買するマーケット
・ダンジョンや魔法、魔物を研究する組織
海外では国家や企業、そして個人レベルでダンジョン探索の動きが活発化していた。
海外のフォーラムでは、
「おいおい、俺たちまるでおとぎ話の中にいるみたいじゃないか」
「いいやジャパニーズアニメーションだ。イセカイテンセイ!」
などの声があがっていた。
そして実際、魔力を有する「海外ニキ」たちはこぞってダンジョンに潜ろうとしていた。
「ダンジョンで一儲けしようぜ!」
と。
ダンジョンによって、世界は大きく形を変わろうとしていた。その波は遠からず、日本国内にも波及することになるのは明らかだった。
そして日本の片隅、東京のはずれのアパートの一室で、その大波に乗ろうとする男がいた。
「これ、完全に〝レイルグラント〟だろ……」
無味乾燥な現実が、かつて冒険していた剣と魔法の世界〝レイルグラント〟のようになろうとしている。
弔木は毎日の日課のように、政府広報サイトにアクセスしていた。
「くそ、総理の会見以来、何の情報も出てこないじゃないか……早くしてくれよ……」
築20年のアパートの一室で、弔木はため息を漏らす。
海外では既にダンジョン関連の経済圏が出現している。
そう、ダンジョンは金になるのだ。
異世界で魔物と戦ってきた弔木の力を持ってすれば、ホームセンターでレジを打つよりも容易く金が稼げる。
煩わしい自称エリートの井桐とも顔を合わせずにすむ――。
弔木の頭の中は、この数日ダンジョンで持ちきりだった。
「やった……!」
金曜日の夕方六時、政府が用意したサイトの表示が変わった。
ダンジョン探索隊の募集内容が明らかになった。
弔木は夢中でページの内容を読み込んだ。
スマホを弄る弔木の手が止まった。
応募の方法が、あまりにも無茶苦茶だったのだ。
「な、何だと……? 多数の応募者が殺到されることが予想されるため、第一次のダンジョン探索隊の選考は現地、つまり北海道の宗谷ダンジョン周辺の、国定公園で行なう……? 無茶苦茶だ!」
政府としては、国民の安全を守るため、魔力を持つ者だけをダンジョンに入れたい。
だが魔力を測定する計器はつい最近になって数個ほど、ダンジョンから発見されたばかりだった。
そこで広大な北海道にダンジョンが出現したのを良いことに、志願者を一気に集めて片っ端から魔力の測定をしよう、ということらしい。
「あの総理、検討するって連呼してたけど……本当に検討してたんだな」
他国では既に、ダンジョンの開発や魔石の研究解析が進められていた。
ダンジョンという新たな可能性を前にして、他国に遅れを取りたくはないのだろう。
総理は検討し、決断した。
そして今、弔木にも決断の時が迫っていた。
「北海道か……遠いな」
預金残高は、十万円ほど。
今月の家賃や光熱費の支払いは、まだ終わっていない。
だが高速バスやローカル線などの金がかからない方法を使えば、どうにかなりそうだ。
弔木の決断は速かった。
「でも行くしかないな」
元勇者の弔木は、旅立ちの準備を始めた。
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