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第一部
夢だったのなら(3)
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レイモンドはマシュマロをエレノーラに渡そうと思い立ち、残った食事を平らげ、すぐに部屋へ向かう。人気のない通路を歩いて部屋にたどり着き、その扉をノックしたところではっとした。
(あっ、いま何時だ!?)
こんな時間に女性の部屋を訪れるのはまずいのではないかと気づいたが、すでに扉を叩いた後だった。中からは部屋の主が扉に向かってきている足音がする。このまま立ち去る訳にもいかず、どうしたらと焦っていると、扉が少し開いた。
「やっぱりレイモンドだった」
現れたエレノーラはゆったりとした部屋着に着替え、いつもは後ろに流している長い髪をゆるく束ねている。エレノーラはレイモンドの姿を確認すると、にこりと笑って扉を大きく開いた。
「なぜ、私だと」
「だって、私の部屋に護衛以外の理由で訪ねてくるのはレイモンドくらいだもの。でも、どうしたの? こんな時間に」
(うっ、……やっぱり、こんな時間に訪れたのは失敗だった)
すでに扉が開かれてしまったのだから、開き直るしかない。レイモンドが手にしていた小さな袋を差し出すと、エレノーラは首をかしげる。
「えっ……私に?」
「先ほど、いただいたものですが」
レイモンドは気はずかしさにエレノーラを直視できず、目をそらしながら手渡す。エレノーラはその態度から、ますます不思議に思ったようだ。
「ここで開けてみてもいい?」
「ご自由に」
エレノーラは袋を受け取り、断りを入れてその場で袋の紐をといた。
「あら、マシュマロ?」
レイモンドにはなにかさっぱりわからなかったが、エレノーラは知っていたようで、菓子の名前を言い当てる。
「一つだけ食べましたが……おいしかったと思います」
「これをわざわざ、私に持ってきてくれたの?」
「か……っ」
レイモンドはまた、先ほど言わなければよかったと思った言葉を言いそうになって、ぐっとこらえた。同じ轍は踏んでなるものかと、そらしていた目をエレノーラに向ける。
「レイモンド?」
エレノーラはマシュマロから視線を外し、目を大きく見開いてレイモンドを見ていた。顔を見てしまうと恥ずかしさに目をそらしたくなってしまうが、次こそはエレノーラを励まさなければと踏ん張る。
「……そう、です。今日は色々ありましたから……その、甘いものでも食べれば、少しは元気になると」
「レイモンド……」
エレノーラはさらに目を大きく見開き、みるみる間に笑顔になっていく。レイモンドはエレノーラの笑顔に心臓がばくばくと高鳴るが、必死で表に出ないようにこらえた。
「やだ、もう、すごく……すっごくうれしい! ありがとう、レイモンド!」
「元気が出たのなら、よかったです」
「すごく出たわ! レイモンド、一緒に食べよう? ね、入って!」
「えっ」
レイモンドはそう言って扉から少し身を引いたエレノーラを、三度ほど見返した。
「エレノーラ……いま、何時だと」
「あれ。それ、レイモンドが言っちゃう?」
「うっ……で、ですが、私は男ですよ。この時間に、男を部屋に招き入れるのは」
「私の体裁のことならもうすでに地に落ちてるし、気にしないわ」
「そっ……」
レイモンドはそんなことはないと言いたかったが、享楽の魔女の元にいた事実はエレノーラの体裁に大きな影響を与えていた。それはエレノーラ自身が一番よく、身をもって知っているだろう。
「あ……ごめんなさい」
なにも言えずに黙り込んでしまったレイモンドに、エレノーラは謝った。しかし、その謝罪がなおのことレイモンドを落ち込ませる。
(そんなことを言わせたい訳ではなかったのに……どうして、僕はいつもこう、失敗ばっかり)
目に見えて落ち込んでしまったレイモンドに、エレノーラは悩ましげに首をかしげた。本人は当然のこととして受け止めているからか、レイモンドが思うほどに深刻には考えていないようだ。
「あー……ええっと、レイモンドは私のことを襲うつもり?」
「なっ……襲いません!」
「なら、いいじゃない。あ、別に襲ってもいいわよ」
「襲っ……よくないでしょう!」
人の気持ちも知らないでと思ったが、伝えてないのだから、エレノーラが知る訳がなかった。レイモンドにも、好きな女性を抱きたいという欲求はある。だが、エレノーラにむり強いは絶対にしたくなかった。
(そういったことは、ちゃんとエレノーラに僕を意識してもらって、……相思相愛になってから、彼女の傷をゆっくり癒しつつ、順序だてて進めていくべきだろ!)
「レイモンド……やっぱり、だめ?」
レイモンドはつい妄想に入っていたが、エレノーラに声をかけられて意識を引き戻した。エレノーラは少しかなしそうな表情で、そんな表情をされるととても断れなかった。
「……わかりました、少しだけですからね」
「うんうん!」
かなしそうな表情から一転して笑顔になったエレノーラは、レイモンドが部屋の中に入るのを待った。仮に、レイモンドがやはり帰りますと言っていまここで踵を返して去っても、エレノーラは彼を追いかけられない。レイモンドが一歩でも足を踏み入れない限り、彼の手を引いて誘うこともできない。この扉はエレノーラ一人では越えることができないのだから、すべてはレイモンドの意思次第だ。
レイモンドが一歩足を踏み入れると、エレノーラはほっとした様子を見せた。扉を閉めてレイモンドに椅子をすすめ、戸棚からティーポットとカップを二つ取り出す。魔法であっという間に水を生み出し、あたためてハーブティをいれると、先ほどのマシュマロを小さな器にうつし替えた。
「レイモンド、今日一日お疲れさま」
「ありがとうございます」
レイモンドは思わぬ形で、エレノーラの部屋で、彼女と共に向かい合って会話をする機会を得られた。
(ニコラスには、お礼しないとな……)
時間が時間なだけに長居はできないものの、しっかり感謝しておかなければならないと、レイモンドはぼんやり思った。
◆
ふと気がつけば、レイモンドはベッドに寝転がり、部屋は明かりが落ちて真っ暗だった。エレノーラに部屋に招き入れてもらい、マシュマロとハーブティを飲みながら色々と話をしたところまでは覚えている。
(それから……どうしたんだったか)
話の流れでエレノーラが持っていたワインを開けて、二人で飲んだ。そこまでは思い出したが、そこからは記憶がなかった。
(酔いが回って、そのまま寝入ってしまったのか?)
レイモンドは少し違和感を覚えながら天井を眺め、寝返りを打って、変な声を出しそうになって飲み込んだ。
「っ……!?」
レイモンドの隣には、エレノーラが寝ていた。ばっと上体を起こして辺りを見回し、ここが自分の部屋ではないことに気づく。慌てて自分の体に目をやり、服を着ていることを確認し、ほっと胸をなで下ろした。襲わないと言っておきながら襲っていたら、合わせる顔がないだろう。
「んん、……レイモンド……?」
エレノーラはレイモンドの動きに目を覚ましてしまったようで、目をこすりながらごろりと寝返りを打った。先ほどの部屋着ではなく、薄いネグリジェを身にまとっている。レイモンドはぎりぎり見えそうで見えないその豊満な胸の谷間につい目がいってしまって、慌ててばっと顔を背けた。
(ま、まずい……)
レイモンドはこのままでは非常にまずいとベッドから降りようとしたが、彼の動きを阻止するようにエレノーラが体を起こして寄りかかる。
「なっ……えっ」
「ねえ、レイモンド……」
エレノーラの手が伸びてレイモンドの手を絡めとった。華奢な指が自分の指に絡められ、びくりと体を震わす。
「っ、エレノーラ……」
「レイモンド、お願い……このままここにいて」
エレノーラは眉尻を下げ、不安そうな表情ですがるように声をかけてくる。そのままレイモンドの腕に自分の腕を絡め、胸を押し当てた。
「はっ……!?」
レイモンドは、これは都合のいい夢だろうかと思い、思い切り自分の頬をつねった。痛くなかった。
「夢かよ!?」
いまの流れは痛くて夢じゃないことを確認できるところだろう。大きな声にエレノーラは反応しないことから、やはりこれは夢のようだ。レイモンドは非常に残念に感じつつも、少しほっとしていた。
「……エレノーラ、離してください」
「レイモンド、お願い……怖いの……」
エレノーラの言葉に、レイモンドはかなしいくらいに夢だと自覚する。エレノーラはけっして、こんな弱音を吐かなかった。いつでも困ったように笑うだけで、レイモンドにその心の内をなかなか明かしはしない。
「僕は、あなたが好きです。だから、……知りたいのに」
夢ならばこんなにも簡単に言えるのに、現実はさまざまなことが絡み、うまく言葉にできなかった。レイモンドの言葉に、彼が生み出したエレノーラはうれしそうに笑った。
(あっ、いま何時だ!?)
こんな時間に女性の部屋を訪れるのはまずいのではないかと気づいたが、すでに扉を叩いた後だった。中からは部屋の主が扉に向かってきている足音がする。このまま立ち去る訳にもいかず、どうしたらと焦っていると、扉が少し開いた。
「やっぱりレイモンドだった」
現れたエレノーラはゆったりとした部屋着に着替え、いつもは後ろに流している長い髪をゆるく束ねている。エレノーラはレイモンドの姿を確認すると、にこりと笑って扉を大きく開いた。
「なぜ、私だと」
「だって、私の部屋に護衛以外の理由で訪ねてくるのはレイモンドくらいだもの。でも、どうしたの? こんな時間に」
(うっ、……やっぱり、こんな時間に訪れたのは失敗だった)
すでに扉が開かれてしまったのだから、開き直るしかない。レイモンドが手にしていた小さな袋を差し出すと、エレノーラは首をかしげる。
「えっ……私に?」
「先ほど、いただいたものですが」
レイモンドは気はずかしさにエレノーラを直視できず、目をそらしながら手渡す。エレノーラはその態度から、ますます不思議に思ったようだ。
「ここで開けてみてもいい?」
「ご自由に」
エレノーラは袋を受け取り、断りを入れてその場で袋の紐をといた。
「あら、マシュマロ?」
レイモンドにはなにかさっぱりわからなかったが、エレノーラは知っていたようで、菓子の名前を言い当てる。
「一つだけ食べましたが……おいしかったと思います」
「これをわざわざ、私に持ってきてくれたの?」
「か……っ」
レイモンドはまた、先ほど言わなければよかったと思った言葉を言いそうになって、ぐっとこらえた。同じ轍は踏んでなるものかと、そらしていた目をエレノーラに向ける。
「レイモンド?」
エレノーラはマシュマロから視線を外し、目を大きく見開いてレイモンドを見ていた。顔を見てしまうと恥ずかしさに目をそらしたくなってしまうが、次こそはエレノーラを励まさなければと踏ん張る。
「……そう、です。今日は色々ありましたから……その、甘いものでも食べれば、少しは元気になると」
「レイモンド……」
エレノーラはさらに目を大きく見開き、みるみる間に笑顔になっていく。レイモンドはエレノーラの笑顔に心臓がばくばくと高鳴るが、必死で表に出ないようにこらえた。
「やだ、もう、すごく……すっごくうれしい! ありがとう、レイモンド!」
「元気が出たのなら、よかったです」
「すごく出たわ! レイモンド、一緒に食べよう? ね、入って!」
「えっ」
レイモンドはそう言って扉から少し身を引いたエレノーラを、三度ほど見返した。
「エレノーラ……いま、何時だと」
「あれ。それ、レイモンドが言っちゃう?」
「うっ……で、ですが、私は男ですよ。この時間に、男を部屋に招き入れるのは」
「私の体裁のことならもうすでに地に落ちてるし、気にしないわ」
「そっ……」
レイモンドはそんなことはないと言いたかったが、享楽の魔女の元にいた事実はエレノーラの体裁に大きな影響を与えていた。それはエレノーラ自身が一番よく、身をもって知っているだろう。
「あ……ごめんなさい」
なにも言えずに黙り込んでしまったレイモンドに、エレノーラは謝った。しかし、その謝罪がなおのことレイモンドを落ち込ませる。
(そんなことを言わせたい訳ではなかったのに……どうして、僕はいつもこう、失敗ばっかり)
目に見えて落ち込んでしまったレイモンドに、エレノーラは悩ましげに首をかしげた。本人は当然のこととして受け止めているからか、レイモンドが思うほどに深刻には考えていないようだ。
「あー……ええっと、レイモンドは私のことを襲うつもり?」
「なっ……襲いません!」
「なら、いいじゃない。あ、別に襲ってもいいわよ」
「襲っ……よくないでしょう!」
人の気持ちも知らないでと思ったが、伝えてないのだから、エレノーラが知る訳がなかった。レイモンドにも、好きな女性を抱きたいという欲求はある。だが、エレノーラにむり強いは絶対にしたくなかった。
(そういったことは、ちゃんとエレノーラに僕を意識してもらって、……相思相愛になってから、彼女の傷をゆっくり癒しつつ、順序だてて進めていくべきだろ!)
「レイモンド……やっぱり、だめ?」
レイモンドはつい妄想に入っていたが、エレノーラに声をかけられて意識を引き戻した。エレノーラは少しかなしそうな表情で、そんな表情をされるととても断れなかった。
「……わかりました、少しだけですからね」
「うんうん!」
かなしそうな表情から一転して笑顔になったエレノーラは、レイモンドが部屋の中に入るのを待った。仮に、レイモンドがやはり帰りますと言っていまここで踵を返して去っても、エレノーラは彼を追いかけられない。レイモンドが一歩でも足を踏み入れない限り、彼の手を引いて誘うこともできない。この扉はエレノーラ一人では越えることができないのだから、すべてはレイモンドの意思次第だ。
レイモンドが一歩足を踏み入れると、エレノーラはほっとした様子を見せた。扉を閉めてレイモンドに椅子をすすめ、戸棚からティーポットとカップを二つ取り出す。魔法であっという間に水を生み出し、あたためてハーブティをいれると、先ほどのマシュマロを小さな器にうつし替えた。
「レイモンド、今日一日お疲れさま」
「ありがとうございます」
レイモンドは思わぬ形で、エレノーラの部屋で、彼女と共に向かい合って会話をする機会を得られた。
(ニコラスには、お礼しないとな……)
時間が時間なだけに長居はできないものの、しっかり感謝しておかなければならないと、レイモンドはぼんやり思った。
◆
ふと気がつけば、レイモンドはベッドに寝転がり、部屋は明かりが落ちて真っ暗だった。エレノーラに部屋に招き入れてもらい、マシュマロとハーブティを飲みながら色々と話をしたところまでは覚えている。
(それから……どうしたんだったか)
話の流れでエレノーラが持っていたワインを開けて、二人で飲んだ。そこまでは思い出したが、そこからは記憶がなかった。
(酔いが回って、そのまま寝入ってしまったのか?)
レイモンドは少し違和感を覚えながら天井を眺め、寝返りを打って、変な声を出しそうになって飲み込んだ。
「っ……!?」
レイモンドの隣には、エレノーラが寝ていた。ばっと上体を起こして辺りを見回し、ここが自分の部屋ではないことに気づく。慌てて自分の体に目をやり、服を着ていることを確認し、ほっと胸をなで下ろした。襲わないと言っておきながら襲っていたら、合わせる顔がないだろう。
「んん、……レイモンド……?」
エレノーラはレイモンドの動きに目を覚ましてしまったようで、目をこすりながらごろりと寝返りを打った。先ほどの部屋着ではなく、薄いネグリジェを身にまとっている。レイモンドはぎりぎり見えそうで見えないその豊満な胸の谷間につい目がいってしまって、慌ててばっと顔を背けた。
(ま、まずい……)
レイモンドはこのままでは非常にまずいとベッドから降りようとしたが、彼の動きを阻止するようにエレノーラが体を起こして寄りかかる。
「なっ……えっ」
「ねえ、レイモンド……」
エレノーラの手が伸びてレイモンドの手を絡めとった。華奢な指が自分の指に絡められ、びくりと体を震わす。
「っ、エレノーラ……」
「レイモンド、お願い……このままここにいて」
エレノーラは眉尻を下げ、不安そうな表情ですがるように声をかけてくる。そのままレイモンドの腕に自分の腕を絡め、胸を押し当てた。
「はっ……!?」
レイモンドは、これは都合のいい夢だろうかと思い、思い切り自分の頬をつねった。痛くなかった。
「夢かよ!?」
いまの流れは痛くて夢じゃないことを確認できるところだろう。大きな声にエレノーラは反応しないことから、やはりこれは夢のようだ。レイモンドは非常に残念に感じつつも、少しほっとしていた。
「……エレノーラ、離してください」
「レイモンド、お願い……怖いの……」
エレノーラの言葉に、レイモンドはかなしいくらいに夢だと自覚する。エレノーラはけっして、こんな弱音を吐かなかった。いつでも困ったように笑うだけで、レイモンドにその心の内をなかなか明かしはしない。
「僕は、あなたが好きです。だから、……知りたいのに」
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