治療と称していただきます

茜菫

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第一部

心を支える言葉(6)*

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 レイモンドは薄布を左右に開き、胸の少し下に唇を寄せる。軽い音をたてながら何度も唇を寄せ、時に手は脇腹をなでて腿へと伝わせた。

 下腹部にキスをしたレイモンドはエレノーラの両脚をぐっと押し開く。もう十分すぎるほどにぬれていて、下着は透けてあってないようなものになっていた。

「……やらしい」

「レイモンド、好きでしょう?」

「別に」

 レイモンドは曖昧に返すと、躊躇なく下着の上から舌をはわせた。

「んっ」

 あってないようなものとはいいつつも、下着越し故にもどかしい刺激にエレノーラは体がうずいた。レイモンドは下着をずらして秘裂を指でなぞり、ゆっくりと中に入りこむ。

「は、ん……」

 レイモンドのふしくれだった指が奥へと入り込み、中をこする。エレノーラは外の蕾を指で押しつぶされて喘いだ。その反応をよしとしてか、レイモンドは指を増やし、エレノーラの反応を見ながら好いところを何度もこする。

「レイモンド、もう、はやく……!」

 気持ちいいけれど物足りない。エレノーラはがまんしかねて声を上げた。レイモンドを押し倒しそうになったが、必死にがまんする。秘裂に先端が触れ、エレノーラは自らそれを咥え込みそうになった。

(だめ……がまん!)

 エレノーラは腰を動かしそうになるのをなんとかこらえる。ようやく望んでいた剛直が挿入され、恍惚に息を吐いた。レイモンドは短く息を吐きながら眉根を寄せて快感に耐えていた。その表情がたまらなく、満ち足りた気持ちになる。

「あぁ……レイモンド……!」

「っ……エレノーラ……」

 エレノーラはゆっくりと抽送され、レイモンドの背に手をはわせる。吐く息と共にもれるレイモンドの声にぞくぞくしながら、おたがいに深く求めあった。

 しばらくはゆっくりな動きだったが、レイモンドの余裕は少しずつなくなり、エレノーラの腰をつかんで激しく腰をうちつけ始める。それに合わせて締めつけると、小さく喘いだレイモンドがぐっと奥を突いた。中に収まっている陰茎がびくびくと震え、最奥に吐精する。エレノーラはこのまま最後の一滴まで逃さないと、脚を絡めて抱きついた。

 夫婦になって、はじめて。エレノーラはそう思うだけでしあわせな気持ちがあふれる。そのまま余韻にひたって抱き合っていると、レイモンドは唇に軽くキスをして離れた。

「エレノーラ、がまんしなくていい」

「え……」

「好きにしているエレノーラも……僕は、好きだし」

 最後の方の声はとても小さくなっていたが、エレノーラには確かに聞こえた。目をしばたたかせてレイモンドを見つめると、彼は少し目をそらす。顔を赤くしているレイモンドを見つめながら、エレノーラはにやりと笑んだ。

「そうね、がまんはよくないわよね!」

 エレノーラは起き上がり、座り込んでいるレイモンドの股ぐらに顔を寄せる。力をなくしている陰茎を指でつついて顔を上げると、ごくりと息を呑むレイモンドと目が合った。

「私、なめちゃいたいなあ」

「エレノーラの好きに……」

「でも、レイモンドがしてほしくないってことは、したくないし」

「えっ」

「ね、レイモンド……なめてほしい?」

 エレノーラがじっと見つめると、レイモンドは視線をさまよわせる。そんなかわいい姿を見たら、意地でも言わせてみたくなるものだ。

「別に、そういう訳じゃ……」

「なめてほしくないんだ? じゃあ、やめておこうかしら」

「えっ……いや、でも」

 にやにや眺めていると、レイモンドは顔を赤くしてエレノーラをにらみつけた。そんな顔は、エレノーラを余計に興奮させるだけだ。

「……!」

「ねえ、レイモンド。なめてほしい? ほしくない? どっちなの?」

 悔しそうにしているレイモンドの陰茎をやさしくなで、少しだけ舌を出す。エレノーラの舌にしっかり目を向けて少し反応しているレイモンドは、恐らく長くは持たない。レイモンドはしばらく視線をさまよわせたが、小さくうなってうなだれた。

「……なめてほしい」

「ふふっ……じゃあ、いただきまーす」

 レイモンドは陥落した。エレノーラは嬉々として陰茎に舌をはわせ、舌先で余すことなくなめ尽くした。勃ちあがり始めた陰茎を根元から先までなめてあげ、陰嚢をてのひらで包んでなでる。

「う……っ」

 裏筋を攻めると、レイモンドは声をもらした。その様子に満足しつつ、先に軽くキスをして吸いつく。

「あっ……」

「ん……咥えちゃおうかな」

 エレノーラがつぶやくと、レイモンドが少し期待したように見る。あまり意地悪するのもかわいそうかと思い、ぱくりと先を咥え込んだ。わざと水音をたてつつ、なめて吸って根元を扱くと、レイモンドの腰が少し揺れる。

「は、……っ」

 レイモンドは必死に声を抑えた。そのさまががたまらない。何度も攻めているうちに、レイモンドの腹筋に少し力が入る。

 エレノーラはしっかり勃ち上がった陰茎に一度キスをし、レイモンドの体を押してベッドに寝かせた。その上に跨り、陰茎に手を添えて自身の秘裂をあてがう。少し腰を落としてすぐに持ち上げて、焦らすとレイモンドが腰をつかんだ。

「エレノーラ……!」

 求めるように名を呼ばれ、エレノーラは腰を落として根元まで咥え込んだ。恍惚としながら息を吐き、ゆるゆると腰を振って快感を求める。

「レイモンド、あ、っ……気持ちいい……っ」

「はあっ……エレノーラ……っ」

 エレノーラは剛直に奥を突かれ、気持ちのよさに背を反らして身をよじらせた。甘い声をもらしながら痴態を晒すと、下から見上げるレイモンドの目が彼女に釘づけになっていた。

「レイモンド、もっと……ね、もっと、旦那さま……!」

「……!」

 エレノーラの言葉にレイモンドはさらに力強さを増し、動きに合わせて下から突き上げる。エレノーラは容赦ないその攻めに喘ぎ、深く交じり合いながらぐいぐいと腰を押しつけ、絶頂に上りつめた。同時にレイモンドもびくびくと震えながら奥に精を吐き出す。

「あ……っ」

 汗が谷間を流れ落ち、髪が肌に張りつく。絶頂の余韻に浸りながらエレノーラが最後の一滴まで搾り取ると、レイモンドは彼女の腰から手を離した。息を整えながら彼女を見上げたレイモンドは、抗議の声を上げる。

「エレノーラ……いまのは、反則だろ……!」

「えっ、なにが?」

「だっ、旦那さまって……」

「ええ? 私たち、ちゃんと夫婦になったじゃない」

「それは……そうだな」

「ね、旦那さま?」

 エレノーラが甘えた声でそう呼びかけると、中におさまったままのレイモンド自身が力を取り戻しはじめた。呼び方一つ変えただけで、興奮するようだ。

「今夜はたくさん、できそうね! 旦那さま?」

 エレノーラがにやりと笑うと、レイモンドは少し恥ずかしそうに顔をそらした。不思議に首をかしげると、少しして向き直ったレイモンドが小さく笑う。

「そうだな。……僕の、奥さん」

 エレノーラは呼び方一つと侮ったことを内心で謝罪した。

「うぁっ」

 ぐっときたエレノーラは中をきゅっと締めつける。達したばかりで敏感になっていたからか、レイモンドが喘いだ。

「レイモンドぉ……!」

「エレノーラ、ちょっと待……あぁっ」

 それからまたなめて吸って挟んだりしつつ、体位を変えて何度も交わり、長い長い初夜を楽しみあった。
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