57 / 60
第二部
見た目も大事よね(2)
しおりを挟む
◆
日が暮れ、仕事を終えたエレノーラはニコラスに連れられて部屋に戻る。施錠された部屋でしばらくのんびりしていると、いつもの時間通りにメイドが食事を運んできた。ほどなくして、夫であるレイモンドが戻ってくる。仕事を終えてすぐ戻ってきたようで、制服のままだ。
「レイモンド、おつかれさま。食事、もう持ってきてもらっているわよ」
「そっか。じゃあ、先に夕食にしよう」
「着替えてくる?」
「いや、このままでいい」
(……制服を脱がないわね)
ワゴンから用意された料理を手に取り、テーブルに並べる。グラスにワインを注ぎ、エレノーラはレイモンドと向かい合わせに座って乾杯した。
今日はなにをしていたかと雑談しながら、共に食事を囲む。話に区切りがついたところで、レイモンドがそういえばと話を切りかえた。
「エレノーラ、三日後なんだが」
「デートの日のこと?」
「ああ。どこか行きたいところはあるか? 事前にしらべておくから」
エレノーラは目をしばたたかせて少し考え込んだ後、計画のために一つお願いすることにした。
「私、服がほしいな」
「服?」
「うんうん、おしゃれな服をね。デート、これからもっとできるかもしれないでしょう? だから、手持ちを増やしたいなあって」
いままでエレノーラが王宮の外に出るのは素材の採取くらいだった。王宮内も行動範囲が部屋か職場である薬草庭園のみで、人と会うことがほとんどない。
人前に出るとしても、罪人のような立場だと自覚していたエレノーラは着飾ることに気が引けていた。色味は落ち着いたもの、形はつつましやかに見えるもの、そう心がけていたからか、いつの間にか持っている服は似たり寄ったりばかりになっていた。
(でも、デートの時くらいはきれいにしたいな)
エレノーラも好きな人の前ではきれいにしていたい、きれいだとほめられたい、そんな気持ちがあった。その結果、他人には見られない、レイモンドにしか見せない下着姿に力を入れていたわけだ。だが、これからは仕事以外で外出する機会を得られる可能性があるのだから、おしゃれな服がほしい。
「わかった、探しておく。ほかには?」
「あともう一つ、行きたいお店があるんだけれど……予約はいらないし、当日にお願いするわ」
「……? わかった」
レイモンドは不思議そうに首をかしげたが、それ以上は追求しなかった。エレノーラは胸をなで下ろしつつ、ここからが計画の要だと気を取り直す。
「ありがとう! あ、ねえねえ、レイモンドも一緒に服をそろえない?」
「え?」
エレノーラの提案にレイモンドは目を丸くした。自分の服を見繕うついでに彼の服を見繕う、これがエレノーラの作戦だ。これならレイモンドの自尊心を傷つけることなく自然に誘える。着飾るための服がほしいのは本心だが、ニコラスからの頼まれごとも忘れてはいない。
「夫婦で服を合わせるの。色とか、柄とか、小物とか、そういうのがあるって聞いたの。ねっ、すてきじゃない?」
「それは……そう、だな?」
「でしょう?」
「まあ、エレノーラがよろこぶなら……」
レイモンドは少し顔を赤くしながらうなずく。どうやら、エレノーラの目論見は悟られずに済んだようだ。もちろん、レイモンドと合わせた服がほしいというのも本心だ。
「すっごく、楽しみだわ!」
「僕も」
エレノーラが心からよろこぶと、レイモンドは笑った。
◆
迎えたデート当日、レイモンドはニコラスに整えられたと思われる服を身にまとっていた。清潔感あふれる白地のシャツの上に黒のベストを着こなし、長いアッシュブロンドの髪は後頭部の少し高めの所でまとめてある。騎士の制服とはまた違うきっちりとした印象を受けて、エレノーラは思わず惚れ惚れしてしまった。
「レイモンド、今日の服装、すてきだわ! 似合っている、格好いい!」
「そうか?」
少し照れくさそうに笑うレイモンドを、いますぐ飛びついて押し倒したい気分だ。
「エレノーラも……すごく、きれいだ」
「ふふ、ありがとう! 目一杯、気合い入れちゃった」
エレノーラはほんのりと化粧を施し、髪は気合を入れて三つ編みにしてまとめた。服もいつもよりは明るめの色合いを選んだが、青いロングスカートは前回のデートの時にも着ていたものだ。手持ちの中で鮮やかな色合いのものはこれしかない。服の組み合わせを変えているからか、レイモンドは気づいていないようで、エレノーラは少し安心したような、不満のような、複雑な気分だった。
「それじゃあ、行くか」
「うんうん」
いつもの魔法薬を飲むと、人目を避けた道を選んで馬車へと向かい、たどり着くとすぐに乗り込んだ。そのまま馬車を走らせ王宮内から出たところで、エレノーラはふっと肩の力を抜く。王宮から出てしまえば、エレノーラを薬草の魔女だと知っているものはほとんどいなかった。
「人に会わなくてよかったわ」
「そうだな」
薬草庭園以外へ向かう間の人目につく道を歩く際は、少し緊張してしまう。今日のように着飾っている時は、特にだ。
(着飾っているといっても、王宮で見かけるご夫人やご令嬢に比べれば大したことはないけれどね)
彼女らのきれいな色の華やかなドレスは、一生無縁のものだとエレノーラは思う。幼少の記憶はほとんど思い出せないものの、元は農家の娘だったことは覚えている。さらには、捨てられた身の上だ。
(でも、憧れていたなあ……)
エレノーラは幼い頃に彼女の母が聞かせてくれた童話を思い出し、小さく笑った。悪い魔女に拐われ、魔法をかけられたお姫さまを王子さまが助け出してくれる、そんな童話が好きだった。
「ふふ」
「どうしたんた?」
「小さい頃は、童話のお姫さまに憧れていたなあって、思い出しちゃった」
お姫さまはきっときれいなドレスを身にまとい、頭の上にはきれいなティアラが、胸元にはきれいなネックレスがきらきらと輝いているに違いない。そして、助けてくれたすてきな王子さまとすてきなキスをして、末永くしあわせに暮らしたのだ。幼いエレノーラはいつか、彼女の王子さまが迎えにきてお姫さまになれる、そんなことを疑うことなく信じていた。
(お姫さまにはなれなかったけれど、私の王子さまはちゃんと迎えに来てくれたのよね)
たかが童話、されど童話、この話が後にエレノーラの心の支えとなった。
(レイモンドは、私を悪い魔女から助け出してくれた、私の王子さま)
エレノーラはその王子さまと結婚してしあわせに暮らしているのだから、夢はほとんどが叶ったと言っても過言ではない。
「どんな童話なんだ?」
「よくある話よ。悪い魔女に拐われたお姫さまを、王子さまが助け出す話。あら、レイモンドは私の王子さまね」
「かっ……からかうなよ」
エレノーラがくすりと笑いながらそう言うと、レイモンドは目を丸くして顔を赤くした。顔の赤みをごまかすようにぱたぱたと手で仰いでいる。
(私には、きれいなドレスやきれいなティアラはないけれど……)
エレノーラは胸元に手を伸ばす。そこにはレイモンドからもらった結婚記念のネックレスがあった。エレノーラはこのネックレスで、ほんの少しだけお姫さまになれた気がした。
「じゃあ、エレノーラは……」
「うん?」
レイモンドの声に顔を上げると、先ほどよりも顔を赤くした彼の顔が目に映る。口を魚のようにぱくぱくと開いているが、そこから音は出ない。エレノーラがその様子に首をかしげると、レイモンドはようやく、勢い任せのように言葉を発した。
「僕の、お、お姫さま、だ……って、うぇ、あっ……なんでもない!」
緊張していたのか、最後の方はかんでしまったようだ。レイモンドは顔から湯気でも出そうなくらいに真っ赤になり、そのままうつむく。
(おひめさま……!)
エレノーラはレイモンドがうつむいてくれてよかったと思う。エレノーラも同じくらい、いやそれ以上に真っ赤になっていた。そのまま、馬車の中には顔を真っ赤にした男女が向かい合ってうつむいているという、不思議な光景になった。
日が暮れ、仕事を終えたエレノーラはニコラスに連れられて部屋に戻る。施錠された部屋でしばらくのんびりしていると、いつもの時間通りにメイドが食事を運んできた。ほどなくして、夫であるレイモンドが戻ってくる。仕事を終えてすぐ戻ってきたようで、制服のままだ。
「レイモンド、おつかれさま。食事、もう持ってきてもらっているわよ」
「そっか。じゃあ、先に夕食にしよう」
「着替えてくる?」
「いや、このままでいい」
(……制服を脱がないわね)
ワゴンから用意された料理を手に取り、テーブルに並べる。グラスにワインを注ぎ、エレノーラはレイモンドと向かい合わせに座って乾杯した。
今日はなにをしていたかと雑談しながら、共に食事を囲む。話に区切りがついたところで、レイモンドがそういえばと話を切りかえた。
「エレノーラ、三日後なんだが」
「デートの日のこと?」
「ああ。どこか行きたいところはあるか? 事前にしらべておくから」
エレノーラは目をしばたたかせて少し考え込んだ後、計画のために一つお願いすることにした。
「私、服がほしいな」
「服?」
「うんうん、おしゃれな服をね。デート、これからもっとできるかもしれないでしょう? だから、手持ちを増やしたいなあって」
いままでエレノーラが王宮の外に出るのは素材の採取くらいだった。王宮内も行動範囲が部屋か職場である薬草庭園のみで、人と会うことがほとんどない。
人前に出るとしても、罪人のような立場だと自覚していたエレノーラは着飾ることに気が引けていた。色味は落ち着いたもの、形はつつましやかに見えるもの、そう心がけていたからか、いつの間にか持っている服は似たり寄ったりばかりになっていた。
(でも、デートの時くらいはきれいにしたいな)
エレノーラも好きな人の前ではきれいにしていたい、きれいだとほめられたい、そんな気持ちがあった。その結果、他人には見られない、レイモンドにしか見せない下着姿に力を入れていたわけだ。だが、これからは仕事以外で外出する機会を得られる可能性があるのだから、おしゃれな服がほしい。
「わかった、探しておく。ほかには?」
「あともう一つ、行きたいお店があるんだけれど……予約はいらないし、当日にお願いするわ」
「……? わかった」
レイモンドは不思議そうに首をかしげたが、それ以上は追求しなかった。エレノーラは胸をなで下ろしつつ、ここからが計画の要だと気を取り直す。
「ありがとう! あ、ねえねえ、レイモンドも一緒に服をそろえない?」
「え?」
エレノーラの提案にレイモンドは目を丸くした。自分の服を見繕うついでに彼の服を見繕う、これがエレノーラの作戦だ。これならレイモンドの自尊心を傷つけることなく自然に誘える。着飾るための服がほしいのは本心だが、ニコラスからの頼まれごとも忘れてはいない。
「夫婦で服を合わせるの。色とか、柄とか、小物とか、そういうのがあるって聞いたの。ねっ、すてきじゃない?」
「それは……そう、だな?」
「でしょう?」
「まあ、エレノーラがよろこぶなら……」
レイモンドは少し顔を赤くしながらうなずく。どうやら、エレノーラの目論見は悟られずに済んだようだ。もちろん、レイモンドと合わせた服がほしいというのも本心だ。
「すっごく、楽しみだわ!」
「僕も」
エレノーラが心からよろこぶと、レイモンドは笑った。
◆
迎えたデート当日、レイモンドはニコラスに整えられたと思われる服を身にまとっていた。清潔感あふれる白地のシャツの上に黒のベストを着こなし、長いアッシュブロンドの髪は後頭部の少し高めの所でまとめてある。騎士の制服とはまた違うきっちりとした印象を受けて、エレノーラは思わず惚れ惚れしてしまった。
「レイモンド、今日の服装、すてきだわ! 似合っている、格好いい!」
「そうか?」
少し照れくさそうに笑うレイモンドを、いますぐ飛びついて押し倒したい気分だ。
「エレノーラも……すごく、きれいだ」
「ふふ、ありがとう! 目一杯、気合い入れちゃった」
エレノーラはほんのりと化粧を施し、髪は気合を入れて三つ編みにしてまとめた。服もいつもよりは明るめの色合いを選んだが、青いロングスカートは前回のデートの時にも着ていたものだ。手持ちの中で鮮やかな色合いのものはこれしかない。服の組み合わせを変えているからか、レイモンドは気づいていないようで、エレノーラは少し安心したような、不満のような、複雑な気分だった。
「それじゃあ、行くか」
「うんうん」
いつもの魔法薬を飲むと、人目を避けた道を選んで馬車へと向かい、たどり着くとすぐに乗り込んだ。そのまま馬車を走らせ王宮内から出たところで、エレノーラはふっと肩の力を抜く。王宮から出てしまえば、エレノーラを薬草の魔女だと知っているものはほとんどいなかった。
「人に会わなくてよかったわ」
「そうだな」
薬草庭園以外へ向かう間の人目につく道を歩く際は、少し緊張してしまう。今日のように着飾っている時は、特にだ。
(着飾っているといっても、王宮で見かけるご夫人やご令嬢に比べれば大したことはないけれどね)
彼女らのきれいな色の華やかなドレスは、一生無縁のものだとエレノーラは思う。幼少の記憶はほとんど思い出せないものの、元は農家の娘だったことは覚えている。さらには、捨てられた身の上だ。
(でも、憧れていたなあ……)
エレノーラは幼い頃に彼女の母が聞かせてくれた童話を思い出し、小さく笑った。悪い魔女に拐われ、魔法をかけられたお姫さまを王子さまが助け出してくれる、そんな童話が好きだった。
「ふふ」
「どうしたんた?」
「小さい頃は、童話のお姫さまに憧れていたなあって、思い出しちゃった」
お姫さまはきっときれいなドレスを身にまとい、頭の上にはきれいなティアラが、胸元にはきれいなネックレスがきらきらと輝いているに違いない。そして、助けてくれたすてきな王子さまとすてきなキスをして、末永くしあわせに暮らしたのだ。幼いエレノーラはいつか、彼女の王子さまが迎えにきてお姫さまになれる、そんなことを疑うことなく信じていた。
(お姫さまにはなれなかったけれど、私の王子さまはちゃんと迎えに来てくれたのよね)
たかが童話、されど童話、この話が後にエレノーラの心の支えとなった。
(レイモンドは、私を悪い魔女から助け出してくれた、私の王子さま)
エレノーラはその王子さまと結婚してしあわせに暮らしているのだから、夢はほとんどが叶ったと言っても過言ではない。
「どんな童話なんだ?」
「よくある話よ。悪い魔女に拐われたお姫さまを、王子さまが助け出す話。あら、レイモンドは私の王子さまね」
「かっ……からかうなよ」
エレノーラがくすりと笑いながらそう言うと、レイモンドは目を丸くして顔を赤くした。顔の赤みをごまかすようにぱたぱたと手で仰いでいる。
(私には、きれいなドレスやきれいなティアラはないけれど……)
エレノーラは胸元に手を伸ばす。そこにはレイモンドからもらった結婚記念のネックレスがあった。エレノーラはこのネックレスで、ほんの少しだけお姫さまになれた気がした。
「じゃあ、エレノーラは……」
「うん?」
レイモンドの声に顔を上げると、先ほどよりも顔を赤くした彼の顔が目に映る。口を魚のようにぱくぱくと開いているが、そこから音は出ない。エレノーラがその様子に首をかしげると、レイモンドはようやく、勢い任せのように言葉を発した。
「僕の、お、お姫さま、だ……って、うぇ、あっ……なんでもない!」
緊張していたのか、最後の方はかんでしまったようだ。レイモンドは顔から湯気でも出そうなくらいに真っ赤になり、そのままうつむく。
(おひめさま……!)
エレノーラはレイモンドがうつむいてくれてよかったと思う。エレノーラも同じくらい、いやそれ以上に真っ赤になっていた。そのまま、馬車の中には顔を真っ赤にした男女が向かい合ってうつむいているという、不思議な光景になった。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる