【完結】天才令嬢は時戻りを繰り返す~溺愛してくる幼馴染の年上伯爵に伝えたいこと~

イトカワジンカイ

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・21-2.フレッド視点:分かたれた二人②

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「クロエ……どうしてここに?」

今日のパーティーはラルドビア交流会の関係者しか呼ばれていない。

なのに何故クロエがここにいるのか?

思わずそう漏らしたフレッドに対し、クロエは瞠目したまま小さく体を震わせ、一歩一歩フレッドから距離を取った。

「ちょっとご挨拶しようと思っただけ……です。それでは失礼します」

走って逃げようとするクロエを追って、フレッドは手を伸ばし、その手を掴んだ。

「クロエ、待ってくれ!」
「! 触らないで!」

クロエはフレッドが今まで聞いたことの無いほどの激しい言葉でそう言った。
最初、何を言われているのか理解できず、頭が真っ白になる。

拒絶された。

そう理解すると同時に、目の前のクロエはフレッドを鋭く冷たい目で見据えていた。

「恋人でもない男性に気軽に触れられたくありません。お兄様も、ロザリー様という恋人がいらっしゃるのですから、軽率な真似はおやめください」

クロエが何を言っているのか?
拒絶された動揺をしていると、現れたのは以前夜会でクロエと共にいた男だった。

「クロエ嬢? ……と、フレッド様」

戸惑いの表情を浮かべるダニエルを見たフレッドは、クロエに拒絶されて冷えた背中が、一瞬にして熱くなり、沸々とした怒りが湧いてきた。

「なんでこいつと一緒なんだ?」
「こいつなんて言い方やめてください。ダニエル様は、私の大切な方です」
「どういうことだ?」

「ダニエル様とお付き合いしているという話です。私にも恋人ができたことですし、私はお兄様がいなくても大丈夫です。お兄様はお兄様で幸せになってください……行きましょう、ダニエル様」

(どういうことだ? クロエが……付き合っている?)

クロエの言葉の意味が分からない。
いや、分かっているが、それはフレッドが到底受け入れられないものだった。

衝撃の余り言葉を発せずにいると、クロエはその場を立ち去ろうとしていた。

「待ってくれ、クロエ!」

二人で立ち去って行くクロエの後ろ姿を追いかけようとした。
だが、それは叶わなかった。

右腕をグイと引っ張られ、その場に押し止められたからだ。

「フレッド、絶対に行かせないわ!」
「ロザリー、いい加減放してくれ!」

乱暴に振り払うと、ロザリーはバランスを崩してたたらを踏んだ。
何とか転倒を堪えたロザリーだったが、先ほどの拍子で髪が乱れている。

そんな様子にも気づかないロザリーは、髪を振り乱し、半狂乱になって叫んだ。

「どうしてあの女の事を気にかけるのよ! あんな冴えない、化け物モグラ。貴方には相応しくないわ! ねぇ、私の方が何倍も綺麗でしょ? スタイルだっていいし、私と結婚すれば地位も名誉も、あなたの望むものは全部手にはいるのよ!」

「化け物だと?」

ロザリーの言葉に、フレッドは声を低くして言った。
地の底から湧き出る怒りを抑えつつフレッドは今までにないほど冷たい目でロザリーを睨んだ。

「お前ごときが、クロエを悪しざまに言う資格などない! 地位も名誉もいらない。俺が欲しいのはクロエだけだ。後にも先にも、愛するのはクロエだけだ」

静かに、だが苛烈なフレッドの怒りに、ロザリーは小さく悲鳴を上げて息を呑んだ。
それを一瞥したフレッドは、今度こそクロエの後を追いかける。

「クロエ! どこだ! クロエ!」

フレッドはホテルの周辺を探し回るが、愛しい妖精の姿は見えなかった。
どれほどの時間を探しただろうか。

ようやく足を止めたフレッドは、項垂れて苦悶の表情を浮かべた。

『恋人でもない男性に気軽に触れられたくありません。お兄様も、ロザリー様という恋人がいらっしゃるのですから、軽率な真似はおやめください』

クロエの言葉から、フレッドとロザリーが恋人同士だと勘違いしていることが分かった。

夜会に出席せず、社交界の噂に疎いクロエには、フレッドとロザリーが恋人同士だというデマなど耳に入らないだろうと高を括っていた。

ラルドビアの件があるとはいえ、もっと早くにロザリーを突き放していればよかったのか。
始めからクロエに噂は誤解だと告げていればよかったのか。
あの夜会の後にプロポーズをしておけばよかったのか。

自分の選択が誤っていたことに、後悔の念しか浮かばなかった。

今更クロエに真実を告げたとしても、あの男と恋人になってしまった今、もう手が届かない存在となってしまったことには変わりがない。

クロエを失ったら、生きていけない。
フレッドは途方に暮れたまま、夜の公園に佇むしかなかった。
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