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・22-2.自分の隣にいる人は②
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一瞬、言葉の意味が分からず、クロエは首を傾げた。
ラルドビア留学の枠は埋まっているはずだ。なのに、なぜクロエもラルドビアに行けるのだろうか?
その疑問が顔に表れていたようで、ダニエルは説明の言葉を口にした。
「留学には家族も同行することが可能だ。だから、僕の妻になって一緒にラルドビアに行ってほしい」
ダニエルの突然の言葉に、クロエは息が止まった。
目を見開いたまま言葉を発せないでいるクロエを真っ直ぐに見つめ、ダニエルはさらに続ける。
「これはプロポーズのつもりだ。まだ恋人になって間もないのにこんなに焦って言うつもりはなかった。でも僕は君と一生共に過ごしたいと思っている」
確かにラルドビア留学はクロエの夢であり、その夢を叶えてくれる男性と結婚したいと思っていた。
だが、漠然と思い描いていた夢がこんな風に現実味を帯びたことに、実感が伴っていないというのが正直な気持ちだった。
しかも、突然結婚の申し込みまでされたのだ。
遠い将来の話だと思っていたことが、突然具体化して、この状況にどう答えを出していいのか分からなかった。
以前の自分であれば、夢が叶うと言って小躍りしたのだろうか?
だが、今は心が躍らない。
結婚——
ダニエルはクロエの結婚相手としては申し分が無い男性だ。
魔術科学研究という共通の話題もあるし、クロエと対等に話せる能力のある稀有な存在でもある。
一緒に出かけることも嫌だとは思わない。
加えてラルドビア留学の夢も叶えてくれる。
なのに、嬉しいと思えないのは何故なのか。
ダニエルは言った。『一生共に過ごしたい』と。
(……私が一生共に過ごしたいのは本当にダニエル様?)
クロエがダニエルの妻として隣に立つことを想像しようとしてもできなかった。
代わりに頭の中に浮かんだのはフレッドの姿だった。
(私が一生隣に居たいのは、お兄様だわ)
その時、クロエはようやく自分の気持ちに気づいた。
違和感の正体、胸が苦しかったのも、嫉妬してしまったのも、フレッドの事が好きだからなのだ。
それは『兄』でも『幼馴染』として好きなのではなく、一人の男性としてフレッドの事が好きだったのだ。
「私……は……」
あまりにも色々な感情がクロエの中で目まぐるしく動き、それ以上は言葉にできなかった。
「混乱するのも分かる。でも、クロエ嬢が悩んでいるのはそれだけじゃないんじゃないか?」
「え?」
「フレッド様がまだ忘れられないからだろう?」
まさに図星だった。
気持ちを言い当てられたクロエは、そのまま声を失ってしまう。
「そうか、やっぱりか」
ダニエルは一旦言葉を区切ると、切なげに瞳を細めた。
「君は気づいていないかもしれないけど、時折何かを考えている。最初はまた研究の事を考えてトリップしているのかとも思ったけど、そうじゃない。フレッド様の事を考えていたんだろう?」
「ごめんなさい……」
「それでもいいから僕のプロポーズを受けてはくれないかな?」
クロエに寄り添ってくれたダニエルには、ただ感謝しかない。
いつもクロエを気遣ってくれたし、フレッドから受けた傷を癒そうとしてくれていた。
だが、これ以上甘えることは、ダニエルを利用しているようで、クロエの良心がそれを許さなかった。
自分の気持ちを確かめるように、ゆっくりと口を開いた。
「私はずっとお兄様への気持ちが分からなかったんです。だけど、今、自分の気持ちを自覚してしまいました。それなのに、こんな気持ちのままダニエル様の想いを受け入れるのは不誠実だと思うんです。だから、ごめんなさい」
「フレッド様には恋人がいる。君の気持ちは報われないと分かっていても?」
「ええ。それでも、自分の気持ちを誤魔化してダニエル様のプロポーズを受けることはやっぱりできません」
「……やっぱり、フレッド様には勝てなかったか」
ダニエルは、小さく呟いた。
それからダニエルに促されてカフェを出ると、共に無言のまま大通りまで歩いた。
辻馬車を止めると、クロエは促されてそれに乗ったが、ダニエルは同車することはなかった。
「本当は送ってあげるべきだろうけど……正直今の僕には無理そうだ。だから、ここで失礼するよ」
夕焼けに照らされたダニエルは静かにそう告げた。
いつもの精悍な顔立ちだったが、同時に憂いを帯びたものに見えるのは気のせいだろうか。
「ありがとうございました」
唇を引き結び、何かを堪えている表情のダニエルに、クロエはなんと言っていいのか分からず、ただそれだけを口にした。
そしてゆっくりと馬車が動き始めた。
ダニエルとの距離が遠くなっていく。
それが、二人の距離を表しているように思えた。
今、張り裂けそうなほど胸が苦しい。
自分がフレッドへの恋心を自覚し、同時に失恋した。胸が張り裂けんばかりに痛み、ズキズキと鋭い痛みが襲う。
だが同じ痛みを自分がダニエルに与えてしまったことに、自責の念が激しく迫った。
(私の心が弱いせいで優しいダニエル様を巻き込んで、振り回してしまった……)
ダニエルを深く傷つけてしまったことに、後悔と罪悪感で胸がいっぱいになり、涙が溢れて止まらない。
自分には泣く資格などない。
そう思うクロエだったが、頬を濡らす涙を止めることはできなかった。
「ごめんなさい、ダニエル様……ごめんなさい」
クロエは馬車の中で、何度もダニエルへの謝罪の言葉を口にしながら屋敷まで帰った。
ラルドビア留学の枠は埋まっているはずだ。なのに、なぜクロエもラルドビアに行けるのだろうか?
その疑問が顔に表れていたようで、ダニエルは説明の言葉を口にした。
「留学には家族も同行することが可能だ。だから、僕の妻になって一緒にラルドビアに行ってほしい」
ダニエルの突然の言葉に、クロエは息が止まった。
目を見開いたまま言葉を発せないでいるクロエを真っ直ぐに見つめ、ダニエルはさらに続ける。
「これはプロポーズのつもりだ。まだ恋人になって間もないのにこんなに焦って言うつもりはなかった。でも僕は君と一生共に過ごしたいと思っている」
確かにラルドビア留学はクロエの夢であり、その夢を叶えてくれる男性と結婚したいと思っていた。
だが、漠然と思い描いていた夢がこんな風に現実味を帯びたことに、実感が伴っていないというのが正直な気持ちだった。
しかも、突然結婚の申し込みまでされたのだ。
遠い将来の話だと思っていたことが、突然具体化して、この状況にどう答えを出していいのか分からなかった。
以前の自分であれば、夢が叶うと言って小躍りしたのだろうか?
だが、今は心が躍らない。
結婚——
ダニエルはクロエの結婚相手としては申し分が無い男性だ。
魔術科学研究という共通の話題もあるし、クロエと対等に話せる能力のある稀有な存在でもある。
一緒に出かけることも嫌だとは思わない。
加えてラルドビア留学の夢も叶えてくれる。
なのに、嬉しいと思えないのは何故なのか。
ダニエルは言った。『一生共に過ごしたい』と。
(……私が一生共に過ごしたいのは本当にダニエル様?)
クロエがダニエルの妻として隣に立つことを想像しようとしてもできなかった。
代わりに頭の中に浮かんだのはフレッドの姿だった。
(私が一生隣に居たいのは、お兄様だわ)
その時、クロエはようやく自分の気持ちに気づいた。
違和感の正体、胸が苦しかったのも、嫉妬してしまったのも、フレッドの事が好きだからなのだ。
それは『兄』でも『幼馴染』として好きなのではなく、一人の男性としてフレッドの事が好きだったのだ。
「私……は……」
あまりにも色々な感情がクロエの中で目まぐるしく動き、それ以上は言葉にできなかった。
「混乱するのも分かる。でも、クロエ嬢が悩んでいるのはそれだけじゃないんじゃないか?」
「え?」
「フレッド様がまだ忘れられないからだろう?」
まさに図星だった。
気持ちを言い当てられたクロエは、そのまま声を失ってしまう。
「そうか、やっぱりか」
ダニエルは一旦言葉を区切ると、切なげに瞳を細めた。
「君は気づいていないかもしれないけど、時折何かを考えている。最初はまた研究の事を考えてトリップしているのかとも思ったけど、そうじゃない。フレッド様の事を考えていたんだろう?」
「ごめんなさい……」
「それでもいいから僕のプロポーズを受けてはくれないかな?」
クロエに寄り添ってくれたダニエルには、ただ感謝しかない。
いつもクロエを気遣ってくれたし、フレッドから受けた傷を癒そうとしてくれていた。
だが、これ以上甘えることは、ダニエルを利用しているようで、クロエの良心がそれを許さなかった。
自分の気持ちを確かめるように、ゆっくりと口を開いた。
「私はずっとお兄様への気持ちが分からなかったんです。だけど、今、自分の気持ちを自覚してしまいました。それなのに、こんな気持ちのままダニエル様の想いを受け入れるのは不誠実だと思うんです。だから、ごめんなさい」
「フレッド様には恋人がいる。君の気持ちは報われないと分かっていても?」
「ええ。それでも、自分の気持ちを誤魔化してダニエル様のプロポーズを受けることはやっぱりできません」
「……やっぱり、フレッド様には勝てなかったか」
ダニエルは、小さく呟いた。
それからダニエルに促されてカフェを出ると、共に無言のまま大通りまで歩いた。
辻馬車を止めると、クロエは促されてそれに乗ったが、ダニエルは同車することはなかった。
「本当は送ってあげるべきだろうけど……正直今の僕には無理そうだ。だから、ここで失礼するよ」
夕焼けに照らされたダニエルは静かにそう告げた。
いつもの精悍な顔立ちだったが、同時に憂いを帯びたものに見えるのは気のせいだろうか。
「ありがとうございました」
唇を引き結び、何かを堪えている表情のダニエルに、クロエはなんと言っていいのか分からず、ただそれだけを口にした。
そしてゆっくりと馬車が動き始めた。
ダニエルとの距離が遠くなっていく。
それが、二人の距離を表しているように思えた。
今、張り裂けそうなほど胸が苦しい。
自分がフレッドへの恋心を自覚し、同時に失恋した。胸が張り裂けんばかりに痛み、ズキズキと鋭い痛みが襲う。
だが同じ痛みを自分がダニエルに与えてしまったことに、自責の念が激しく迫った。
(私の心が弱いせいで優しいダニエル様を巻き込んで、振り回してしまった……)
ダニエルを深く傷つけてしまったことに、後悔と罪悪感で胸がいっぱいになり、涙が溢れて止まらない。
自分には泣く資格などない。
そう思うクロエだったが、頬を濡らす涙を止めることはできなかった。
「ごめんなさい、ダニエル様……ごめんなさい」
クロエは馬車の中で、何度もダニエルへの謝罪の言葉を口にしながら屋敷まで帰った。
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