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少女の処遇
しおりを挟む“さて、どうするか……”
「……でも――」アリアはそこで言葉を切り、顔を上げた。
「アタッシュケース……私の周りに居た白衣を着た人達が大切そうに持っていた物だから、それなら何か分かるかも……しれない……」
「アタッシュケース、ねぇ……」
恐らく、いや百パーセントで白衣を着た連中のお仲間もアタッシュケースを回収に来るだろう。つまりアリアの事を知ろうとするならば、その白衣を着た連中のお仲間に遭遇する可能性があると言う事だ。
危険を承知でアタッシュケースを回収し詳しく調べるべきか、回収を諦めアリアが無害だと判断出来ない状況で見捨てるべきか、そもそもアタッシュケースが未だに残っているのか、定かでは無い今どうするべきか。
ロギアは息を呑んだ。人に対する見方がどんなに残酷な物になっていたとしても真実を確認する事なく見過ごす事は、後々惨い結末になるかもしれない。なぜなら平気で人体実験を実行し続ける連中が居る事だけは確定しているのだから。
今は希望を抱くよりも殺人の方が容易に実行出来るこの世界なのだから。
“少なくとも俺は、まだそこまでイカレて無い……もう殺戮者では無い”
また相方の顔が浮かび、ロギアは覚悟を決め頷くとアリアを真っ直ぐに見つめた。
「分かった……取り敢えず明日にでもそのアタッシュケースを取りに行く、でその後はアタッシュケースの中身を見て、お前が無害だと確認出来た時にはコロニー迄連れて行ってやる。あそこは放浪者集団の溜まり場だからな、服装さえ何とかすれば上手く紛れ込めるだろう。それに少し変わり者だが俺の知り合いも居るからな。事情を説明すれば生活出来る程には手助けしてくれるだろう」
「こ、コロニー……」
「避難所、みたいな物で大勢の人が住んでる。そしてコロニーの大半は元々あった施設を利用して作ってるんだ。で、行く予定のコロニーだが元々地下鉄だった所を色々といじくって作った所だ。もう使われていた頃とは大分違うけどな」
「そ、そう、なんだ……」
「……まぁ、そんな事はどうでもいいか」
「あ……で、でも地下鉄って……安全なの?」
「ああ、一応今は安全だ。出入口は多くあるが、その一つ一つに防壁が作られていて内側からしか開かないようになってる、それに常に見張り役が、交代制で必ず人がいる事になってるし、ちゃんとお互いの連絡が取れるよう無線まであるからなぁ。余程の事が無い限り大丈夫だろうな。ちなみに今までそんな事一度だって起きた事は無いが……」
「そう……なんだ……でも、その……私は――――」
「コロニーだとかえって危険かもしれないか?」
「う、うん……それに……」アリアは小さく頷いて見せる。
「まぁ……確かにそうなるかもしれないが、今この状態の様にコロニーの外で活動する方がよっぽど危険だぞ? 寄生された動物以外にも、ハンターとかいう平気で人を喰う人間もいるからな。最悪そう言う輩からは身を守れる、俺も偶々コロニーによる予定があってな、そのついでだ」
ロギアはアリアの後ろにある部屋の方を見据えた。
「だが、残酷な事だと思うがアタッシュケースが無かったり、お前が有害だと分かった場合は――此処まで散々話をしたが、悪いがそうさせて貰う」
「……う、うん」表情は引き締まった様に感じたが、やはりアタッシュケースが無かった場合の事が頭に過っているのか安心するよりもその緊張で身体が震えている事が分かった。
“確かに、今は不安で一杯何だろうが時間ならたっぷりとある。それ迄に物事を冷静に考えられる様に頭の中を整理すれば良い”
そう考えた時、外から物がぶつかり擦れあう音や、咆哮、唸り声、悲鳴のような叫び声が聞こえてきた。「――ッ!!」アリアは外の音を聞き不安を感じたのかこちらを見てくる。
「大丈夫だ、きっと誰かが襲われているんだろうな。残酷だがこれは助けられない。かなり距離もあるからな、静かにして灯りを消せば奴等も直ぐにどこかに行く」
そう言うとロギアは少女に懐中電灯を渡した。
「二階にある寝室っぽい所を使ってくれ。俺は使った事がないから埃まみれだろうが、無いよりはマシだと思うぞ」
「……ありがと」
懐中電灯を受け取り階段の方向へと行こうとするとロギアが後ろから声をかけた。
「こんな状況で他人に安心しろって言っても無理だとは思うが、今は休憩はしてくれ。夜更かしは面倒な事になる。さっきの……詳しい話は明日にでもする、無いとは思うが、もし何かあったら呼んでくれ」
「……うん、分かった」
アリアは頷くと階段を上がり始めた。
「……ありがとう」
階段を上る最中に再度ポツリと漏らした言葉がロギアの耳に残った。
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