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休息
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アリアを先に休ませその後の橘との話し合いの結果、出発は明日の早朝へと決まった。ヘリポートを備えたビルがこの近くにあるらしくそこで自分達を回収すると橘は言っていたが、「正直、そこまで安全とは言い切れない事になったな……」
最初はその案に反対しもっと安全な道を探す様申し出たロギアだったが、アリアを追って来ているかもしれない『термит(サーマイト)(白蟻)』との遭遇を考えると不本意ながらにも納得しざる負えなかった。
ロギアが二階へ上がると冷たい風が肌に当たり風の出どころへと向かうとベランダが開いている事に気付いた。
触り心地から元々は結構な値打ちだったかもしれないカーテンは経年劣化で酷い色をしていた。部屋を見回すと部屋の隅にある化粧棚の足元に自分の持っていたバッグが置いてあり、そして窓際にある一人掛けソファに膝を抱える様に座り外の景色を眺めているアリアの姿が目に入る。
「アリア、仮眠は取らないのか?」
ロギアの声に驚いたのか身体を跳ね上げ慌てて顔を向ける。
「う……うん、中々寝付けなくて――ロ、ロギも?」
「ああ、まぁ俺も眠れなくてな」
「そ、そっか――」
アリアの顔は再び窓の外へと向けられ、ロギアの足音を聞き「こんなにも変わっちゃうんだね……」そう呟き街灯の光も無くただ雨音だけが残る暗くどことなく寂しげな景色を眺める。
ロギアはアリアの隣迄来ると同じ様に廃墟と化した街へと視線を送った。
いつの間にか空は雨雲で黒一色で塗り潰されており、街頭などは勿論点いておらず二人の不安感を煽るように辺りからは光が失われていく。最近は天気の変わりようが早く、朝雲一つ無くても昼頃には雨になるというケースが頻繁にあった。
ロギアと同じく外を見ていたアリアは囁くように告げた。
「荒れそうだね……天気……」
「……おお」
ロギアは黒一色の空を眺める。風が強いのか雲の流れが速い。
ふと視線を感じ顔をそちらに向けるとアリアと視線がぶつかりアリアは気まずそうに俯いた。
「――少し話そうか」何か言いたい事が有り気なその雰囲気にどう反応するか迷ったもののそう声を掛ける。
「――うん……」小さく頷いた後アリアは膝を抱えるのを止め両足を床へと付ける。
自身から話をしようと言ってみたものの何から話せば良いのか結論が出ず黙っていると「……ロギは、大丈夫?」そうアリアから声をかけてきた。
「――何が?」
相手から話題を振って来た事に感謝しつつも質問の意図が掴めず小首を傾げると。
「け、怪我してる、し……」
そう言ってアリアは自分の頭をさする。アリアはこんな状況でも他人の事を優先、自身を気遣うロギアに向け困惑した面持ちで言った。
「ああ、それなら心配ない荒いが応急処置はしてある様だからな……」
ロギアは自らの頭に巻かれている包帯を軽く触れながら答えた。そして傍にある椅子に腰を掛ける。
疲労からか「ふぅ……」と声が自然と漏れ、気が抜けた直後――ガタン? という大きな音を立て椅子の後足が派手に壊れた。
「うおぉ!?」
体重を殆ど乗せていた事もあり、そのまま椅子が勢いよく真後ろへと傾いていく。ロギアは咄嗟に手を伸ばし何かに掴まろうとしたものの、伸ばした手はむなしく空中で空振り、自分でも驚く程情けない悲鳴を上げながら頭から床へと突っ込んだ。
「ぐほっ!!」
頭を床に打ち付けた際鈍い音が響き、あまりの痛みでロギアはその場で身悶え、ぶつけた時の衝撃で先程の戦闘で受けた傷口から出血し始めた。
「あ……」
アリアはその一部始終を目撃し一瞬頭の思考回路が停止したが。
「ぷっ……くく……くくくく……」
今この瞬間まで一度も奇声を上げず、クールという印象を崩さなかったであろう男が、目の前で椅子に座った状態で情けない悲鳴を上げながら倒れていく珍しい光景を見てついに笑いを堪える事が出来なかったらしく、それでもロギアには気を遣っているのかアリアは声を殺す様に笑った。
理不尽な実験を受けていた時よりか少しは精神的に安定したのか、安全な場所に来た事もあってか今までの緊張が一気にほぐれたせいなのかは分からないが出会ってから一度も笑わなかった少女が硬い表情が解けているを見て、ロギアほっと胸を撫で下ろした。
アリアが思ったよりもそこまで壊れてはいなかった事に。
しかし直ぐに今の自分の滑稽な姿が脳裏に浮かび、顔色が不覚にも一気に真っ赤に染まり反射的に身体を起こそうとする。
「そんなに笑う事はないだろ……」
顔を真っ赤にしながら弱々しく呟きながら身体を起こそうとするが傷口が開いたせいか視界が激痛で歪み、手が思うように動かない。しかしアリアはそんなロギアに対し顔を反らし笑い続けている。
「あはは……ご、ごめんなさい……今、手、貸すから……」
“いや……壊れたから感情が制御出来ないのかもしれない”その余りのアリアの笑いっぷりに戸惑いつつも動揺を悟られない様、思考を違う方向へと持って行く。
「~~ッ、こけた位で流石に笑い過ぎだ、それに感情の起伏が激しいな、お前」
ロギアはアリアのさし延ばす手を掴みながら、照れている事を感付かれまいと頭に思い浮かんだ限りの皮肉めいた言葉を放つ。
「だ、だって……あんなこけ方をするの、パ――――昔見た、テレビ番組とかでしか見た事無かったから、可笑しくて、つい」
「そうかよ、そりゃ良かったな」
楽しそうに笑う中に一瞬表情が固まった様な違和感を感じたものの、そこには触れずに何気なく答えた。
最初はその案に反対しもっと安全な道を探す様申し出たロギアだったが、アリアを追って来ているかもしれない『термит(サーマイト)(白蟻)』との遭遇を考えると不本意ながらにも納得しざる負えなかった。
ロギアが二階へ上がると冷たい風が肌に当たり風の出どころへと向かうとベランダが開いている事に気付いた。
触り心地から元々は結構な値打ちだったかもしれないカーテンは経年劣化で酷い色をしていた。部屋を見回すと部屋の隅にある化粧棚の足元に自分の持っていたバッグが置いてあり、そして窓際にある一人掛けソファに膝を抱える様に座り外の景色を眺めているアリアの姿が目に入る。
「アリア、仮眠は取らないのか?」
ロギアの声に驚いたのか身体を跳ね上げ慌てて顔を向ける。
「う……うん、中々寝付けなくて――ロ、ロギも?」
「ああ、まぁ俺も眠れなくてな」
「そ、そっか――」
アリアの顔は再び窓の外へと向けられ、ロギアの足音を聞き「こんなにも変わっちゃうんだね……」そう呟き街灯の光も無くただ雨音だけが残る暗くどことなく寂しげな景色を眺める。
ロギアはアリアの隣迄来ると同じ様に廃墟と化した街へと視線を送った。
いつの間にか空は雨雲で黒一色で塗り潰されており、街頭などは勿論点いておらず二人の不安感を煽るように辺りからは光が失われていく。最近は天気の変わりようが早く、朝雲一つ無くても昼頃には雨になるというケースが頻繁にあった。
ロギアと同じく外を見ていたアリアは囁くように告げた。
「荒れそうだね……天気……」
「……おお」
ロギアは黒一色の空を眺める。風が強いのか雲の流れが速い。
ふと視線を感じ顔をそちらに向けるとアリアと視線がぶつかりアリアは気まずそうに俯いた。
「――少し話そうか」何か言いたい事が有り気なその雰囲気にどう反応するか迷ったもののそう声を掛ける。
「――うん……」小さく頷いた後アリアは膝を抱えるのを止め両足を床へと付ける。
自身から話をしようと言ってみたものの何から話せば良いのか結論が出ず黙っていると「……ロギは、大丈夫?」そうアリアから声をかけてきた。
「――何が?」
相手から話題を振って来た事に感謝しつつも質問の意図が掴めず小首を傾げると。
「け、怪我してる、し……」
そう言ってアリアは自分の頭をさする。アリアはこんな状況でも他人の事を優先、自身を気遣うロギアに向け困惑した面持ちで言った。
「ああ、それなら心配ない荒いが応急処置はしてある様だからな……」
ロギアは自らの頭に巻かれている包帯を軽く触れながら答えた。そして傍にある椅子に腰を掛ける。
疲労からか「ふぅ……」と声が自然と漏れ、気が抜けた直後――ガタン? という大きな音を立て椅子の後足が派手に壊れた。
「うおぉ!?」
体重を殆ど乗せていた事もあり、そのまま椅子が勢いよく真後ろへと傾いていく。ロギアは咄嗟に手を伸ばし何かに掴まろうとしたものの、伸ばした手はむなしく空中で空振り、自分でも驚く程情けない悲鳴を上げながら頭から床へと突っ込んだ。
「ぐほっ!!」
頭を床に打ち付けた際鈍い音が響き、あまりの痛みでロギアはその場で身悶え、ぶつけた時の衝撃で先程の戦闘で受けた傷口から出血し始めた。
「あ……」
アリアはその一部始終を目撃し一瞬頭の思考回路が停止したが。
「ぷっ……くく……くくくく……」
今この瞬間まで一度も奇声を上げず、クールという印象を崩さなかったであろう男が、目の前で椅子に座った状態で情けない悲鳴を上げながら倒れていく珍しい光景を見てついに笑いを堪える事が出来なかったらしく、それでもロギアには気を遣っているのかアリアは声を殺す様に笑った。
理不尽な実験を受けていた時よりか少しは精神的に安定したのか、安全な場所に来た事もあってか今までの緊張が一気にほぐれたせいなのかは分からないが出会ってから一度も笑わなかった少女が硬い表情が解けているを見て、ロギアほっと胸を撫で下ろした。
アリアが思ったよりもそこまで壊れてはいなかった事に。
しかし直ぐに今の自分の滑稽な姿が脳裏に浮かび、顔色が不覚にも一気に真っ赤に染まり反射的に身体を起こそうとする。
「そんなに笑う事はないだろ……」
顔を真っ赤にしながら弱々しく呟きながら身体を起こそうとするが傷口が開いたせいか視界が激痛で歪み、手が思うように動かない。しかしアリアはそんなロギアに対し顔を反らし笑い続けている。
「あはは……ご、ごめんなさい……今、手、貸すから……」
“いや……壊れたから感情が制御出来ないのかもしれない”その余りのアリアの笑いっぷりに戸惑いつつも動揺を悟られない様、思考を違う方向へと持って行く。
「~~ッ、こけた位で流石に笑い過ぎだ、それに感情の起伏が激しいな、お前」
ロギアはアリアのさし延ばす手を掴みながら、照れている事を感付かれまいと頭に思い浮かんだ限りの皮肉めいた言葉を放つ。
「だ、だって……あんなこけ方をするの、パ――――昔見た、テレビ番組とかでしか見た事無かったから、可笑しくて、つい」
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