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空腹状態でのデメリット
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ロギアが眠りに付いたのを確認すると、気が付くとまた家の中を歩き回っていた。休憩しろとは言われたが新しい環境で、しかも状況が状況なだけに落ち着いて休む事が出来る筈も無く、いつもの癖が出てしまう。
小さい頃からそうだったかもしれない。
今の状況とあの時とでは状況が全く違うのだが、家族と行った旅行先でも落ち着く事が出来ず、そんな時はとにかく歩いては気を落ち着かせていたのだ。
何かと環境が変わってしまうとどうしても落ち着かず、あの頃は両親にはかなり迷惑をかけて心配させたに違いない。
「パパ、ママ……私……これからどうなるの……」
地面に散らばっている大きなガラスの破片に向かって一人呟く。
暗い部屋、割れた窓ガラスから漏れる冷たい風、次第に全てに恐怖を感じアリアは小さく腕を組み、自らの身体を抱いた。振り返ると壁に寄りかかって寝ているロギアが見える。
「何で……」
ロギアの見た書類の中には実験の内容と担当した研究者の名前が記載されている。普通、不気味がり離れていくか、自身の安全を考え何か起きる前に殺すという選択肢を選ぶのではないか。
だがロギアにはそんな事など全く気にしている様子はなく、治癒能力の事もマイナスとしか捉えていない自分に反対し、何かと気遣っている所さえ見える。
「……有り得ないよ」
それもそうだがロギアに対して一番違和感と言うべき物を抱くのは、どんな事でもある一定以上の事は深くは聞いてこない事だ。
――何故簡単に他人を受け入れられるのか、自分ではどうしても考えられない。
「――くっ」
突然頭に痛みが走り、アリアは半ば強制的に思考を停止させた。歯を食いしばりふらつく身体を壁に手を付け支える。
いつもと同じ症状だった。身体が傷付きしばらくすると頭痛、めまい等の症状が起き。それと同時に身体の傷が徐々に塞がっていく。傷が大きければそれだけ症状が酷くなる。
“それに――――ロギアから流れ出ている血にゾワゾワする……”
視線をロギアの怪我の辺りに持って行くが直ぐに目を逸らし頭を振る。
「……はぁ、はぁはぁ……ん」
大きく深呼吸をし呼吸を整えるとゆっくりと顔を上げる。
ガラスに映る自分の顔には滝の様に結構な汗が流れていて酷い顔をしていた。
ガラスから視線をずらすと視界の端にロギアのバッグが目に入る。
アリアは出来るだけ物音を立てずにそのバッグに近付くと先程までロギアが見ていた実験書類を取り出した。
今の自分が一体どういう状態なのか、どんな風に書かれているのか。それを少しでも把握はしておきたい、自分自身の目で確認しておきたい。そんな思いがあった。ロギアの顔を伺った後その傍で腰を下ろし書類の束へと視線を落とす。
書類は途中まで読んであるのか紙の端っこをボロボロのクリップで止めてある。
書類に目を通して見るものの小さい文字や図等がびっしり書かれており一枚読み切り、理解するのには数分以上かかりそうだ。
アリアはクリップを外し、後ろの方のページ、まだロギアが読んでいない部分へと目を通す。
実験内容 被検体に絶食をさせ続け、身体がどう変化していくか、『寄生虫の細胞』は栄養を取らずにいるとどうなるか、死滅するのか等を調べる。
期間 被検体が死亡又は身体に変化が現れる迄。
その一文だけでアリアの顔を驚愕に染め、背筋が凍った。
「これ、正気……なの……」
ロギアに気付かれないようなるべく静かに書類を読み進めていると、途中から文体が変わり、走り書きの様な雑な字に変わったのを見てヘリコプター内で付け加えられた物だと気付いた。
そして探していた一文が目に入る。もしやと思っていた事で、出来れば違って欲しいと願っていた事だったがその思いは残酷にも打ち消された。
『イブ』の『寄生虫の細胞』は空腹を感じると同種を引き寄せる匂――
途中で文章は途切れ記入者が何を書きたかったのかが最後まで見る事が出来なかったが、その未完成の文章からでも簡単に予想出来る物だった。
恐らく、というより確実に自分の中にあるその細胞は空腹状態が続くと同種を誘き寄せるフェロモンを出し、それから捕食し空腹を満たす性質を持っている。
「フェ、フェロモンって……」アリアは頭に浮かんだ単語を振り払う。
空腹になると寄って来るなら今は? そんな疑問が湧き自らのお腹をさする。
“まだ大丈夫……まだ、一緒にいても大丈夫……”
まだ空腹状態では無い事にホッとし一息つくと、自身を安心させる為にまるで何かの呪文を唱えいるかのように同じ言葉を繰り返し自らに言い聞かせた時、小さな物音がしアリアは慌てて振り向く。ロギアが単に寝相で身体をずらしただけだと判るとホッと胸をなでおろし、それからロギアの顔をじっと見据える。
“これを知られてしまったら自分はどうなるのだろうか……下に居る人に付いて行ったら実験としてやらされるのかもしれない。でもその後は? 此処でロギアを起こして交渉事を裏切ったとしても死ねない身体なのに感染者に捕まったら? 追いかけられて捕まったらさっきの交渉事通りにはなる筈がない――“
何度もその考えが頭を巡り"――嫌だ――"咄嗟にその最後のページだけ書類の束から抜き取った。
“これが無ければこういった性質がある事自体下に居る人達は気付かないかもしれない。でもロギに嘘をついてしまう事になるかもしれない……でもロギにはもっと状況が落ち着いた時にでも――ロギに話して……もし……お腹が空く前になったら離れればいい。自らの考えが自分勝手で迷惑な話だとしても今はまだ――怖い”
そう自分に言い聞かせたが、その愚かな行為に罪悪感が消えずアリアはロギアから距離をとる為、背を向け反対方向の壁に向かう。
「ごめん……なさ――――」
独り言の様に呟いた言葉が何者かによって手首を掴まれた事で、その続きと身体が止まる。
「その行為が何を意味するか、分かっているよな?」
唐突に投げかけられたその言葉にアリアは息を呑み声の主へと顔を向ける。
「ロギ――――っ」
真剣なその顔つきに怖気付きアリアは罪悪感からか目を反らす。
「わ、私はロ、ロギアについて行きたい――っでも、私――――」
後退り、その拍子に手から最後のページが滑り落ちる。
「あっ――」
ロギアはかがみその紙を取り上げると軽く息を吐く。
「ついて行きたい、それがお前の――アリアの答えなんだろ? 俺もその書類に記載されている事は把握してる」
その返事に理解出来ずに固まってしまう。
「知っているの‥‥で、でも‥‥じゃあどうして?」弱々しいその問いにロギアも優しく応じる。
「ショッピングセンターを抜けた後でもこうして一緒にいる――――それがアリアの中である疑問に関する俺の答えだ」
確かにロギアがあの書類を読んで危険と感じたならアリアを見放す機会なんてものはいつでもあった。
「わ、私――――」
「ああ、そんな事は分かってる。俺はただアリアを守る、そう決めたから今もこれからも――その様にするだけだ」
「ロギ‥‥」
誰が見ても頑固ともとれるその言葉と行動は普通なら避けられてしまう物だが、今のアリアにとっては暖かく安らげる唯一と言っていい物だった。
小さい頃からそうだったかもしれない。
今の状況とあの時とでは状況が全く違うのだが、家族と行った旅行先でも落ち着く事が出来ず、そんな時はとにかく歩いては気を落ち着かせていたのだ。
何かと環境が変わってしまうとどうしても落ち着かず、あの頃は両親にはかなり迷惑をかけて心配させたに違いない。
「パパ、ママ……私……これからどうなるの……」
地面に散らばっている大きなガラスの破片に向かって一人呟く。
暗い部屋、割れた窓ガラスから漏れる冷たい風、次第に全てに恐怖を感じアリアは小さく腕を組み、自らの身体を抱いた。振り返ると壁に寄りかかって寝ているロギアが見える。
「何で……」
ロギアの見た書類の中には実験の内容と担当した研究者の名前が記載されている。普通、不気味がり離れていくか、自身の安全を考え何か起きる前に殺すという選択肢を選ぶのではないか。
だがロギアにはそんな事など全く気にしている様子はなく、治癒能力の事もマイナスとしか捉えていない自分に反対し、何かと気遣っている所さえ見える。
「……有り得ないよ」
それもそうだがロギアに対して一番違和感と言うべき物を抱くのは、どんな事でもある一定以上の事は深くは聞いてこない事だ。
――何故簡単に他人を受け入れられるのか、自分ではどうしても考えられない。
「――くっ」
突然頭に痛みが走り、アリアは半ば強制的に思考を停止させた。歯を食いしばりふらつく身体を壁に手を付け支える。
いつもと同じ症状だった。身体が傷付きしばらくすると頭痛、めまい等の症状が起き。それと同時に身体の傷が徐々に塞がっていく。傷が大きければそれだけ症状が酷くなる。
“それに――――ロギアから流れ出ている血にゾワゾワする……”
視線をロギアの怪我の辺りに持って行くが直ぐに目を逸らし頭を振る。
「……はぁ、はぁはぁ……ん」
大きく深呼吸をし呼吸を整えるとゆっくりと顔を上げる。
ガラスに映る自分の顔には滝の様に結構な汗が流れていて酷い顔をしていた。
ガラスから視線をずらすと視界の端にロギアのバッグが目に入る。
アリアは出来るだけ物音を立てずにそのバッグに近付くと先程までロギアが見ていた実験書類を取り出した。
今の自分が一体どういう状態なのか、どんな風に書かれているのか。それを少しでも把握はしておきたい、自分自身の目で確認しておきたい。そんな思いがあった。ロギアの顔を伺った後その傍で腰を下ろし書類の束へと視線を落とす。
書類は途中まで読んであるのか紙の端っこをボロボロのクリップで止めてある。
書類に目を通して見るものの小さい文字や図等がびっしり書かれており一枚読み切り、理解するのには数分以上かかりそうだ。
アリアはクリップを外し、後ろの方のページ、まだロギアが読んでいない部分へと目を通す。
実験内容 被検体に絶食をさせ続け、身体がどう変化していくか、『寄生虫の細胞』は栄養を取らずにいるとどうなるか、死滅するのか等を調べる。
期間 被検体が死亡又は身体に変化が現れる迄。
その一文だけでアリアの顔を驚愕に染め、背筋が凍った。
「これ、正気……なの……」
ロギアに気付かれないようなるべく静かに書類を読み進めていると、途中から文体が変わり、走り書きの様な雑な字に変わったのを見てヘリコプター内で付け加えられた物だと気付いた。
そして探していた一文が目に入る。もしやと思っていた事で、出来れば違って欲しいと願っていた事だったがその思いは残酷にも打ち消された。
『イブ』の『寄生虫の細胞』は空腹を感じると同種を引き寄せる匂――
途中で文章は途切れ記入者が何を書きたかったのかが最後まで見る事が出来なかったが、その未完成の文章からでも簡単に予想出来る物だった。
恐らく、というより確実に自分の中にあるその細胞は空腹状態が続くと同種を誘き寄せるフェロモンを出し、それから捕食し空腹を満たす性質を持っている。
「フェ、フェロモンって……」アリアは頭に浮かんだ単語を振り払う。
空腹になると寄って来るなら今は? そんな疑問が湧き自らのお腹をさする。
“まだ大丈夫……まだ、一緒にいても大丈夫……”
まだ空腹状態では無い事にホッとし一息つくと、自身を安心させる為にまるで何かの呪文を唱えいるかのように同じ言葉を繰り返し自らに言い聞かせた時、小さな物音がしアリアは慌てて振り向く。ロギアが単に寝相で身体をずらしただけだと判るとホッと胸をなでおろし、それからロギアの顔をじっと見据える。
“これを知られてしまったら自分はどうなるのだろうか……下に居る人に付いて行ったら実験としてやらされるのかもしれない。でもその後は? 此処でロギアを起こして交渉事を裏切ったとしても死ねない身体なのに感染者に捕まったら? 追いかけられて捕まったらさっきの交渉事通りにはなる筈がない――“
何度もその考えが頭を巡り"――嫌だ――"咄嗟にその最後のページだけ書類の束から抜き取った。
“これが無ければこういった性質がある事自体下に居る人達は気付かないかもしれない。でもロギに嘘をついてしまう事になるかもしれない……でもロギにはもっと状況が落ち着いた時にでも――ロギに話して……もし……お腹が空く前になったら離れればいい。自らの考えが自分勝手で迷惑な話だとしても今はまだ――怖い”
そう自分に言い聞かせたが、その愚かな行為に罪悪感が消えずアリアはロギアから距離をとる為、背を向け反対方向の壁に向かう。
「ごめん……なさ――――」
独り言の様に呟いた言葉が何者かによって手首を掴まれた事で、その続きと身体が止まる。
「その行為が何を意味するか、分かっているよな?」
唐突に投げかけられたその言葉にアリアは息を呑み声の主へと顔を向ける。
「ロギ――――っ」
真剣なその顔つきに怖気付きアリアは罪悪感からか目を反らす。
「わ、私はロ、ロギアについて行きたい――っでも、私――――」
後退り、その拍子に手から最後のページが滑り落ちる。
「あっ――」
ロギアはかがみその紙を取り上げると軽く息を吐く。
「ついて行きたい、それがお前の――アリアの答えなんだろ? 俺もその書類に記載されている事は把握してる」
その返事に理解出来ずに固まってしまう。
「知っているの‥‥で、でも‥‥じゃあどうして?」弱々しいその問いにロギアも優しく応じる。
「ショッピングセンターを抜けた後でもこうして一緒にいる――――それがアリアの中である疑問に関する俺の答えだ」
確かにロギアがあの書類を読んで危険と感じたならアリアを見放す機会なんてものはいつでもあった。
「わ、私――――」
「ああ、そんな事は分かってる。俺はただアリアを守る、そう決めたから今もこれからも――その様にするだけだ」
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