44 / 78
もう引き返せない選択
しおりを挟む
やがて一行は目指していたビルへと辿り着いた。汚れている箇所は多く見受けられるが建物自体は立派な作りで、この地域では一番高い高級感のあるビルらしい。
ただロギアの見解ではこういった場所には明かりが建物内迄届かず感染者が多く潜んでいる可能性がある為、立ち寄る事すらはばかられていた事もありそれが唯一の心配事だった。
「此処はお嬢ちゃん等を捜索する最中に発見したんだが、どうやら感染者の気配が他よりも少なくてな。外で他の連中と合流をするよりも、こっちの方がтермит(サーマイト)(白蟻)に襲われずに遥かに安全でうってつけって事だな」
橘の発言に水琶とユズルも不安に感じたのか互いの顔を見合わせ表情を引き攣らせている。
「――なに、油断さえしなければ大丈夫だ」
橘は鍵が壊れて開かなくなった硝子ドアに近付く。ノブも回せずユズルが行ったピッキングでも、もろともしていない。「ちょ、ちょっと待って下さいよ」ユズルが手こずっている後ろ姿を見て橘は自身の端末で時間を確認する。
そしてロギアとアリア、水琶に離れる様指示をし、硝子ドアその中央を一蹴りをいれた。いくら硝子ドアが頑丈な作りになっていても鉄板入りの蹴りには耐えられなかったのか大きい音を立て硝子が粉砕し地面へと落ちる。余りにも大胆な開け方にアリアは周囲を見回す。ユズルが口をあんぐりと開けて橘を見上げる。
「悪い、時間がない」
橘はそのドアを跨いで中へと入って行くが今の音でも誰も顔を出す気配すらない。
「よし、行くぞ」橘の声と共に一行は足を進めて行く。
原形を留めていない机や椅子、壁に飛び散った血で会社のポスター等はすっかり目立たなくなっている。そう言った景色を尻目に受付を通り抜け非常階段がある方へと向かって行く。その間にも少なからず抵抗したであろう生存者だった者達の痕跡が幾つも視界に入る。
蠅が集り強烈な腐敗集を漂わせている死骸も幾つか発見した。
「大丈夫か?」
そう言った光景を見る度にロギアはアリアに身体の調子を確認し、「うん……大丈夫」アリアもそう答えた。
しかしアリアの落ち着かない様子に引っかかる様な物を感じロギアは非常口の扉を抉じ開ける橘達から目を離しアリアの方へと顔を向ける。
「――どうした?」
顔が真っ青で大粒の汗が流れている。口元も微かに震わせており尋常じゃない事は見ていて歴然だった。
「――ご、ごめん。 私の身体……ね、燃費が悪過ぎるかも……」
反応するその様子も落ち着きが無く目が泳いで見える。
「それはしょうがない、そう言う身体って事は何と無く推測は出来たからな」
「う、うん……我慢はしてるけど――――やっぱり自分じゃあどうしようもないみたい」
自身の腹を擦り暗い顔を浮かべる。
「数個程、簡単に食べられる携帯食料でも貰っておくべきか」
「それだと助か――――」アリアが声を発しようと口を開きかけた時、前方で非常階段への扉を抉じ開ける大きな音がした。
「手を貸してくれないか?」橘が後方をやたらと気にしていたユズルに声をかけ二人がかりで扉をこじ開けた瞬間、カチカチと嫌な音が聞こえ橘が身構え様とする間に真横から感染者が跳びかかって来た。
「ッ!?」「た、橘隊長!」
感染者に押し倒され取っ組み合いになる橘を助け出そうとするが、上の階からペタペタと不気味な足音と共に子供と大人の女性の感染者が姿を現した。
「――――いっ!?」
二体の感染者は橘がずれた事により視線が真っすぐユズルに向けられる。反応するよりも早くその感染者二体はユズル目掛けて跳びかかった。女性の感染者はユズルに掴みかかり、子供の方の感染者は動きが遅かった為水琶が割り込み頭部を銃で撃ち抜く。
その間にも橘に襲い掛かった感染者はあっけなくやられ動かなくなった。
「ユズル!」水琶はそれを見るとすぐさまユズルから感染者を引き剥がすのに協力し、感染者を大きく押し退ける。
「糞があぁぁぁっ!」
そのおかげもあってか余裕が出来たユズルは手に持つ鉄パイプで感染者の頭、脇腹を叩きその衝撃で感染者の身体が折曲がる。
その拍子に丁度いい位置に来た頭に向かい思いっきしスイングした。多少腐敗していたせいか感染者の頭部は粉々に粉砕し残りの身体は力無くその場で崩れ落ちビクビクと痙攣を始める。
「ッシャ――――ッ!! 仕留めたぜ!」
ユズルは一息つくと自分達が倒した痙攣を続ける感染者へと視線を落とす。少年と女性。
「――ったく、スンゲ―後味悪ぃいなあ。」
「そうね、でも彼等は既に人じゃ無くなってる……こうして動きを停止させるのも救いって形になるのかもしれない。少なくとも彼等を駆、除しなければ被害が増えてしまうから……」
水琶は使い慣れていない言葉のせいか若干詰まらせた様な喋り方でユズルの愚痴に応じると自らの後ろを歩く二人へと合図を送る。
「悪いな、参戦出来なくて」
ロギアが痙攣する感染者三体に目を落とし淡々と言うと「別に構わねぇよ、俺等だけでもやれっから」ユズルが鼻を鳴らし強がって見せている。その横で水琶は呆れかえっていた。
「そこのお二人さんも話す事は済んだろうし、もうちょいスピードを上げて行くとするか、なぁに此処からはただ階段を上がってくだけだ。感染者が集まって来る前には余裕で辿り着く」
橘は下の階から感染者が来ないか確認し上へと上がって行く。元々白だったであろう壁も今では汚れ、所々に血痕が残っている。
最上階まで来ると流石にアリアもクタクタで橘と水琶、ユズルの三人も息が上がり肩が大きく上下していた。
橘を先頭に扉を開けるとそこには既に離陸準備を終えたヘリコプターと武装した男が待機しており橘達を視界に捉えると険しい顔つきが一気に笑顔へと変貌する。
「随分と遅かったじゃないか」
「色々とあってな」
橘がそう応じ二人で何やら話をした後その男はロギアとアリアに視線を送る。その直後に扉の向こう側が騒がしくなり始め全員の視線が扉の方へと移った。
「よし、じゃあ此処からとっとと行こうか」
一行は橘の後に続きヘリコプターへと乗り込んでいく。
ヘリコプターが離陸し、アリアは徐々に遠くなる景色を眺め視線を景色から機内に向けた時ロギアと目が合った。
「……ロギ?」
「アリア……もう引き返せないぞ、後悔するなよ」確認を取る様にそう告げた。
「……うん、これは――私が選んだ事だから」
ロギアはアリアの答えに短く応じると肩の力を抜き大きく息を吐き出しながら背もたれにもたれ掛かる。
“一時とは言え終わらないと思っていた悪夢からようやく解放された。アリアにとってそれは気が遠くなる程長く耐えがたい物だっただろう。だが俺の親父に苦しめられたのはアリア一人だけでは無い。資料を見る限りでも何十人と被害者は存在し、今の世界もそうだ。もはや被害者は全世界に居ると言っても過言ではない。アリアの話ではセルゲイ・オルバース、親父は研究所が感染者に襲われた時には既に姿が見当たらなかったらしい。この後その件も含め深く訊かれるかもしれないな。だが今はそんな些細な事は考えなくていい。今最も重要なのは過去を乗り越え歩み出そうとしているアリアの邪魔はさせない事だ“
そんな風に思考を巡らせながら外の景色を眺めるアリアに視線を向けたり、自らも外の景色をみたりとしているとあっという間に数十分程経過していた。
窓から顔を戻しロギアは前に座る橘や水琶、ユズルに視線を走らせる。橘と目が合い「安心して欲しい。約束は守る」そう言われロギアはどう返そうか考えた時、肩に何かがぶつかりそちらに目を向けると今迄の移動で限界がきたのかアリアは身体を倒し、もたれ掛かる様な形で寝息立てていた。
アリアの寝息で暖かく湿った服の感触がくすぐったく、外の景色も雨で何処か妙に懐かしさを覚える雰囲気だった。
ただロギアの見解ではこういった場所には明かりが建物内迄届かず感染者が多く潜んでいる可能性がある為、立ち寄る事すらはばかられていた事もありそれが唯一の心配事だった。
「此処はお嬢ちゃん等を捜索する最中に発見したんだが、どうやら感染者の気配が他よりも少なくてな。外で他の連中と合流をするよりも、こっちの方がтермит(サーマイト)(白蟻)に襲われずに遥かに安全でうってつけって事だな」
橘の発言に水琶とユズルも不安に感じたのか互いの顔を見合わせ表情を引き攣らせている。
「――なに、油断さえしなければ大丈夫だ」
橘は鍵が壊れて開かなくなった硝子ドアに近付く。ノブも回せずユズルが行ったピッキングでも、もろともしていない。「ちょ、ちょっと待って下さいよ」ユズルが手こずっている後ろ姿を見て橘は自身の端末で時間を確認する。
そしてロギアとアリア、水琶に離れる様指示をし、硝子ドアその中央を一蹴りをいれた。いくら硝子ドアが頑丈な作りになっていても鉄板入りの蹴りには耐えられなかったのか大きい音を立て硝子が粉砕し地面へと落ちる。余りにも大胆な開け方にアリアは周囲を見回す。ユズルが口をあんぐりと開けて橘を見上げる。
「悪い、時間がない」
橘はそのドアを跨いで中へと入って行くが今の音でも誰も顔を出す気配すらない。
「よし、行くぞ」橘の声と共に一行は足を進めて行く。
原形を留めていない机や椅子、壁に飛び散った血で会社のポスター等はすっかり目立たなくなっている。そう言った景色を尻目に受付を通り抜け非常階段がある方へと向かって行く。その間にも少なからず抵抗したであろう生存者だった者達の痕跡が幾つも視界に入る。
蠅が集り強烈な腐敗集を漂わせている死骸も幾つか発見した。
「大丈夫か?」
そう言った光景を見る度にロギアはアリアに身体の調子を確認し、「うん……大丈夫」アリアもそう答えた。
しかしアリアの落ち着かない様子に引っかかる様な物を感じロギアは非常口の扉を抉じ開ける橘達から目を離しアリアの方へと顔を向ける。
「――どうした?」
顔が真っ青で大粒の汗が流れている。口元も微かに震わせており尋常じゃない事は見ていて歴然だった。
「――ご、ごめん。 私の身体……ね、燃費が悪過ぎるかも……」
反応するその様子も落ち着きが無く目が泳いで見える。
「それはしょうがない、そう言う身体って事は何と無く推測は出来たからな」
「う、うん……我慢はしてるけど――――やっぱり自分じゃあどうしようもないみたい」
自身の腹を擦り暗い顔を浮かべる。
「数個程、簡単に食べられる携帯食料でも貰っておくべきか」
「それだと助か――――」アリアが声を発しようと口を開きかけた時、前方で非常階段への扉を抉じ開ける大きな音がした。
「手を貸してくれないか?」橘が後方をやたらと気にしていたユズルに声をかけ二人がかりで扉をこじ開けた瞬間、カチカチと嫌な音が聞こえ橘が身構え様とする間に真横から感染者が跳びかかって来た。
「ッ!?」「た、橘隊長!」
感染者に押し倒され取っ組み合いになる橘を助け出そうとするが、上の階からペタペタと不気味な足音と共に子供と大人の女性の感染者が姿を現した。
「――――いっ!?」
二体の感染者は橘がずれた事により視線が真っすぐユズルに向けられる。反応するよりも早くその感染者二体はユズル目掛けて跳びかかった。女性の感染者はユズルに掴みかかり、子供の方の感染者は動きが遅かった為水琶が割り込み頭部を銃で撃ち抜く。
その間にも橘に襲い掛かった感染者はあっけなくやられ動かなくなった。
「ユズル!」水琶はそれを見るとすぐさまユズルから感染者を引き剥がすのに協力し、感染者を大きく押し退ける。
「糞があぁぁぁっ!」
そのおかげもあってか余裕が出来たユズルは手に持つ鉄パイプで感染者の頭、脇腹を叩きその衝撃で感染者の身体が折曲がる。
その拍子に丁度いい位置に来た頭に向かい思いっきしスイングした。多少腐敗していたせいか感染者の頭部は粉々に粉砕し残りの身体は力無くその場で崩れ落ちビクビクと痙攣を始める。
「ッシャ――――ッ!! 仕留めたぜ!」
ユズルは一息つくと自分達が倒した痙攣を続ける感染者へと視線を落とす。少年と女性。
「――ったく、スンゲ―後味悪ぃいなあ。」
「そうね、でも彼等は既に人じゃ無くなってる……こうして動きを停止させるのも救いって形になるのかもしれない。少なくとも彼等を駆、除しなければ被害が増えてしまうから……」
水琶は使い慣れていない言葉のせいか若干詰まらせた様な喋り方でユズルの愚痴に応じると自らの後ろを歩く二人へと合図を送る。
「悪いな、参戦出来なくて」
ロギアが痙攣する感染者三体に目を落とし淡々と言うと「別に構わねぇよ、俺等だけでもやれっから」ユズルが鼻を鳴らし強がって見せている。その横で水琶は呆れかえっていた。
「そこのお二人さんも話す事は済んだろうし、もうちょいスピードを上げて行くとするか、なぁに此処からはただ階段を上がってくだけだ。感染者が集まって来る前には余裕で辿り着く」
橘は下の階から感染者が来ないか確認し上へと上がって行く。元々白だったであろう壁も今では汚れ、所々に血痕が残っている。
最上階まで来ると流石にアリアもクタクタで橘と水琶、ユズルの三人も息が上がり肩が大きく上下していた。
橘を先頭に扉を開けるとそこには既に離陸準備を終えたヘリコプターと武装した男が待機しており橘達を視界に捉えると険しい顔つきが一気に笑顔へと変貌する。
「随分と遅かったじゃないか」
「色々とあってな」
橘がそう応じ二人で何やら話をした後その男はロギアとアリアに視線を送る。その直後に扉の向こう側が騒がしくなり始め全員の視線が扉の方へと移った。
「よし、じゃあ此処からとっとと行こうか」
一行は橘の後に続きヘリコプターへと乗り込んでいく。
ヘリコプターが離陸し、アリアは徐々に遠くなる景色を眺め視線を景色から機内に向けた時ロギアと目が合った。
「……ロギ?」
「アリア……もう引き返せないぞ、後悔するなよ」確認を取る様にそう告げた。
「……うん、これは――私が選んだ事だから」
ロギアはアリアの答えに短く応じると肩の力を抜き大きく息を吐き出しながら背もたれにもたれ掛かる。
“一時とは言え終わらないと思っていた悪夢からようやく解放された。アリアにとってそれは気が遠くなる程長く耐えがたい物だっただろう。だが俺の親父に苦しめられたのはアリア一人だけでは無い。資料を見る限りでも何十人と被害者は存在し、今の世界もそうだ。もはや被害者は全世界に居ると言っても過言ではない。アリアの話ではセルゲイ・オルバース、親父は研究所が感染者に襲われた時には既に姿が見当たらなかったらしい。この後その件も含め深く訊かれるかもしれないな。だが今はそんな些細な事は考えなくていい。今最も重要なのは過去を乗り越え歩み出そうとしているアリアの邪魔はさせない事だ“
そんな風に思考を巡らせながら外の景色を眺めるアリアに視線を向けたり、自らも外の景色をみたりとしているとあっという間に数十分程経過していた。
窓から顔を戻しロギアは前に座る橘や水琶、ユズルに視線を走らせる。橘と目が合い「安心して欲しい。約束は守る」そう言われロギアはどう返そうか考えた時、肩に何かがぶつかりそちらに目を向けると今迄の移動で限界がきたのかアリアは身体を倒し、もたれ掛かる様な形で寝息立てていた。
アリアの寝息で暖かく湿った服の感触がくすぐったく、外の景色も雨で何処か妙に懐かしさを覚える雰囲気だった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる