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合流
しおりを挟む二人が進んて行くと奥で何やら弱々しく呻く声と唸る様な音と咀嚼音が聞こえ、血生臭い匂いが辺りに漂っていた。
アリアに止まる様に指示を出しロギアは物音をたてない様細心の注意をはらいながら、その音源へと足を運ぶ。
建物の影に身を隠しながら覗くと四~五人の白い防護服を着た男達が倒れており、それに覆いかぶさる様に感染者が四体いた。
その近くには事故を起こしたのか建物に頭から突っ込んでいる車両があり、その中でも一人の死骸が確認出来た。改めて周囲を見回し状況を観察する。本来ならば此処を遠回りしてでも避けるべきだろうがロギアは自身の傷口を触る。
自分達が持っている治療道具では応急処置と言っても中途半端な状態で満足に出来ていなかった。それにもう数もかなり消費している。
ロギアの視線は車両の中のバッグに目が留まった。
感染者が四体、腐りかけで動きが遅そうな個体が三体。この現場以外は静かで、視覚や音に意識を集中させても他の感染者が居る様な形跡は見られない。
「ふぅ……」
深呼吸をし、ロギアは覚悟を決めると行動が早かった。
物陰から飛び出ると同時にボウガンで手前にいる腐りかけていない感染者の頭を容赦なく打ち抜いた。続け様に二射目を近くに居た感染者。三射目をロギアに気付き起き上がった感染者に命中させ、最後にこれまでの事を全く気にせずに食事している感染者の後頭部ごと打ち抜いた。
それが終わるとロギアは矢の回収と確実に仕留めたのか一体ずつ仰向けになるよう足で押し確認して行く。
食事中だった感染者の所まで来ると「た、助けてくれ……」弱々しく懇願している男が聞こえ、そちらに顔を向けると一人だけ男が生き残っていた。首から肩にかけて大量出血しており、誰の目から見ても既に助からない。
ロギアが近付くと男は、口から血を吐きながらパクパクさせ、涙を流しながらロギアを見上げた。
「オレに、は……産まれ、たばかりの子……供がいるん、だ」
今にも消え入りそうな弱々しい声でそう自らの事情を主張するが、ロギアの心には全く響いてこなかった。
термит(サーマイト)(白蟻)噂では他人の子供、自身に関係の無い者の命は平気で軽く考えている連中。そんな奴等が死に際になって【情】を理由に命乞いをする行為に多少なりの嫌悪感が沸いたが流石にこれから行う事はアリアには見せられない。
「悪いな、今の俺にはこれでしかお前を救ってやれない」
ロギアはそう言うと男がこれ以上苦しまない様、手に持つナイフに力を込める。
「た、頼む……じ、死にたく……ない……」
男はそう言うと最後の力を込め抵抗しようとゆっくりと拳銃を持ち上げる。
「悪い、許してくれ……」
既に引き金を引く力がない指から拳銃を取り上げると、男の首へと刃先を深々と刺し込み介錯した。
気分のいい物ではない。ただこれは助かり様のない怪我だった。苦しまず楽になれる方法はこの状況では見付からない。
自身にそう言い聞かせながらもロギアは男の両眼を閉じさせた。
「アリア、もう出てきていいぞ」
その一言を聞きアリアは物陰から顔を出す。
「誰も助からなかったの……?」
「ああ、その様だな。自分を狙って来ている相手の心配をしてるのか?」
「いや‥‥何となく――――もうあんな目に遭いたくないけど……だからって恨みがあっても私は……そこまで残酷には出来ないと思って……思い出したくないから多分そういう事を避けてるんだと思う――――」
「そう――――か……」
ロギアはその答えを聞き視線を一瞬だけ先程の男に向け「取り敢えず使える物は今の内にでも頂戴するとしようか」そう言うと直ぐに車内の物資を確認する。
アリアもその言葉に頷きロギアの元まで駆け寄って行く。
車両のバッグを漁ると予想通りの物が手に入った。ロギアは治療道具を自分達のバッグに移すと他の兵士の死骸も漁る。
二人は使える物資をしまい終えるとロギアは車両にもたれかかり、大きく息を吸い込む。
「その傷口……」
「ああ、何と……か」
ロギアが腹部に受けた傷を手で押さえているのが目に入る。先程軽い応急処置はしたもののこれだけ動いていたらそれはこうなって当たり前だ。
「ちょっと待ってて」
アリアはバッグを下ろし、先程入手した治療道具で続きを始める。血が流れ出ているロギアの傷に出来るだけ綺麗なタオルを押し付け、その周囲を包帯で強く巻く。
「――痛ッ!」
ロギアの身体が反射的に跳ねるが痛みを堪え、アリアの手当の間にも周囲へと視線を走らせ、感染者が来た時にいつでも対処出来る態勢をとる。
顔を周囲にキョロキョロしながらも手が早く動き再度応急処置を行っていくアリア。
「心配しなくたっていい」
ロギアはそんな手際の良さに感心しつつもアリアを焦らせない様に声をかけるが、自分の傷の余りにも酷い惨状に溜息が零れる。
処置が終わりロギアは自身に巻かれた包帯を触り、「ありがとう」そう礼を述べるとアリアも固かった表情も直り頷いた。
「……ど、どういたしまして」
対人が苦手な自分がアリアと上手い具合にコミュニケーションがとれている事にホッと胸を撫でおろすも、唐突に建物の陰から微かな音が聞こえ二人は警戒しその方向へとボウガンと銃口を向けた――――――
「あ、あいつら‥‥ターゲットのアリア、だよなぁ‥‥」
白い防護服を着込んだ男は物陰から仲間達の惨劇を目にし、その後に起こった出来事に怖気づいていたが、目の前に目標が現れた事で男の頭がフル回転する。
自身の功績よりも男は無線機に手を伸ばす「い、今はと、とにかく他の奴ら――――ッ!?」
突然何者かに腕を掴まれた事で男の手が止まり、背筋が凍り冷汗が滝の様に流れ落ちる。
「余計な事せんでもらっていいか?」
唐突に現れた男によって手を回され関節を外され悲鳴すら上げる間も無く地べたに叩きつけられる。
「おごぉっ!?」
男の視界にチカチカと暗転する中、とどめと言わんばかりの一撃を受け男はあっという間に意識を手放した。
唐突に現れた男は倒れている男の装備を剝ぎ取るとポッケ等を確認していく。必要な物を漁り終えるとその直ぐ後ろに周囲を警戒しながらも付いてくる男女に合図を送る。
「よぉ、お二人さん無事でなにより」
聞き慣れた声にロギアとアリアの緊張が一気に解ける。
橘は早い再開に安堵の表情を浮かべ、自身の選択が最悪のケースを引く事がなかった事に感謝した。
「よかった!」
「一時はどうなるかと思ったぜ……」
橘の後ろから水琶がアリアを見て駆け寄って来るのとユズルが何やら男を抱えているのが見えた。
「アンタ等も無事で何よりだ」そうロギアが呟いた。
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