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アリアの過去
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「孫娘……」
過去に拷問の様な研究に携わっていて心を入れ替えた者の一人かこんな世界になる前の知り合いだろうと大雑把に考えていたロギアだったが、それよりも遥かに距離の近い孫娘と言う言葉には驚いた。
「――アリア本人は知らなかったみたいだったが?」
「……余りの悲劇の連続で自らを守る為にその悪い記憶ごと消去してしまった、或いは昔の事は考えない様にしている、のかもしれません。そうでしか正気を保てなかったのでしょう。人間はそう脳で思い込む事で辛い現状から離れ、何とか耐え凌ぐ事が出来ると訊きますから」
「――そう言う事例も無い訳じゃないからな……」
「アリアが私の事を忘れてしまっていると言うのは覚悟は出来ていました……いや――――貴方もアリアに出会った時にそう感じたのではないでしょうか?」
「ああ……俺にはアンタがアリアの祖母だと断定は出来ないが、だがもしアンタが祖母だと言うのならそしてアリアがその事も忘れているのなら、こうして会えている今こそそれを直接本人に伝えてやっても良いんじゃないか?」
「そうですね……」
大きく息を吐きながらそう一言だけ呟くと部屋の奥にある机へと向かって行きマザーは机の引き出しから一冊の本を取り出し机の上、ロギアが手に取りやすい位置へと置いた。
「――けれど、あの子にそれを伝えたとしても……あの子にとっては良い事何て一つとしてありません」
ロギアはマザーの話を訊きながらその顔を伺い机の上に差し出された本をめくる。
世界が崩壊する前のまだアリアの瞳も髪色の毛の色も、寄生虫の細胞によって変えられていない頃の姿がそこにはあった。幸せな家族写真。幼いアリアの傍で微笑む女性とマザーの姿。ロギアはそこでマザーが言った事が決して嘘などではないとハッキリと認識し、マザーもそんなロギアの様子を見て言葉を続ける。
「私達はあの子を守れなかった。それについ最近まで私はこのパンデミックで既にあの子は死んでしまったものと考えていました。貴方が水美夏夜にしている事とは反対に私達はあの子を探す事さえせず諦め只々悲観していただけなのです。それに――今回の貴方達の事も確信を持っていた訳じゃないのです。最初こそハンター達が流していた噂話程度の情報だから……本当にロギア、貴方と直接話し、あの子の声を訊く迄は私も疑っていたわ」
「……そんな人間が今更あの子の祖母だと、さんざん裏切られ傷付いてきたあの子に言える立場だと思いますか? もう察しているとは思いますがあの子の両親は既に亡くなっています。そして私の旦那も……そんな情報をあの子が今更知ってまた深く傷付く必要は無いと、私は考えています。『そうですか』と簡単に受け入れられないこの状況で、ましてや只でさえ現状の目まぐるしい変化に追いつけていないかも知れないのに――――忘れているのならば敢えて此処で知る事にならなくても良いのではありませんか?」
マザーは大きく息を吸い込む。
「頭でも処理出来ない様なくらい世界は変革し続けて次から次へと問題が減らずに、逆に発生して行くこの状況に……私ならとてもじゃないけれど耐えられません……」
「俺も、そうだろうな……」
「私達は――これ以上あの子を混乱させたくはないのです」
「だが、此処で言わなかったとしても失った記憶はいずれ思い出すだろ?」
本当に失った記憶がいずれ思い出すなんて確証も無い事を言い出す自身に驚きつつもロギアはマザーの次の言葉を待つ。
「……」
「怖いんですよ、私も貴方と同じ臆病者なんですよ。今でこそ大勢の者達に指示を出し、残酷な決断をした事も一度や二度何て数ではありません……内心は酷い物です。こんな事を訊いたらほとほと呆れ返るかも知れませんが――私もそんな事を耐え切るだなんて図太い神経は持ってません。旦那の死も娘の死も仕事を無理にでもしてその現実から何処か目を離していた所もあります。」
「無理をせざるを得ない……か」
マザーのこの思考にロギアは何処か自分と似た様な物を感じた。エゴだと言われてしまえばこっちとしても反論出来ず仕方ない事なのだが。
「ええ、そうですね……私にはそれしか出来ません。今更あの子を私の孫娘として接したい、そんな欲等――あの子の為を思えばこそ出す訳にはいかないのです――だからこそ、ありがとう。ロギア・オルバース……あの子、アリアを救ってくれて」
「……」
二人の間に沈黙が続いた。
過去に拷問の様な研究に携わっていて心を入れ替えた者の一人かこんな世界になる前の知り合いだろうと大雑把に考えていたロギアだったが、それよりも遥かに距離の近い孫娘と言う言葉には驚いた。
「――アリア本人は知らなかったみたいだったが?」
「……余りの悲劇の連続で自らを守る為にその悪い記憶ごと消去してしまった、或いは昔の事は考えない様にしている、のかもしれません。そうでしか正気を保てなかったのでしょう。人間はそう脳で思い込む事で辛い現状から離れ、何とか耐え凌ぐ事が出来ると訊きますから」
「――そう言う事例も無い訳じゃないからな……」
「アリアが私の事を忘れてしまっていると言うのは覚悟は出来ていました……いや――――貴方もアリアに出会った時にそう感じたのではないでしょうか?」
「ああ……俺にはアンタがアリアの祖母だと断定は出来ないが、だがもしアンタが祖母だと言うのならそしてアリアがその事も忘れているのなら、こうして会えている今こそそれを直接本人に伝えてやっても良いんじゃないか?」
「そうですね……」
大きく息を吐きながらそう一言だけ呟くと部屋の奥にある机へと向かって行きマザーは机の引き出しから一冊の本を取り出し机の上、ロギアが手に取りやすい位置へと置いた。
「――けれど、あの子にそれを伝えたとしても……あの子にとっては良い事何て一つとしてありません」
ロギアはマザーの話を訊きながらその顔を伺い机の上に差し出された本をめくる。
世界が崩壊する前のまだアリアの瞳も髪色の毛の色も、寄生虫の細胞によって変えられていない頃の姿がそこにはあった。幸せな家族写真。幼いアリアの傍で微笑む女性とマザーの姿。ロギアはそこでマザーが言った事が決して嘘などではないとハッキリと認識し、マザーもそんなロギアの様子を見て言葉を続ける。
「私達はあの子を守れなかった。それについ最近まで私はこのパンデミックで既にあの子は死んでしまったものと考えていました。貴方が水美夏夜にしている事とは反対に私達はあの子を探す事さえせず諦め只々悲観していただけなのです。それに――今回の貴方達の事も確信を持っていた訳じゃないのです。最初こそハンター達が流していた噂話程度の情報だから……本当にロギア、貴方と直接話し、あの子の声を訊く迄は私も疑っていたわ」
「……そんな人間が今更あの子の祖母だと、さんざん裏切られ傷付いてきたあの子に言える立場だと思いますか? もう察しているとは思いますがあの子の両親は既に亡くなっています。そして私の旦那も……そんな情報をあの子が今更知ってまた深く傷付く必要は無いと、私は考えています。『そうですか』と簡単に受け入れられないこの状況で、ましてや只でさえ現状の目まぐるしい変化に追いつけていないかも知れないのに――――忘れているのならば敢えて此処で知る事にならなくても良いのではありませんか?」
マザーは大きく息を吸い込む。
「頭でも処理出来ない様なくらい世界は変革し続けて次から次へと問題が減らずに、逆に発生して行くこの状況に……私ならとてもじゃないけれど耐えられません……」
「俺も、そうだろうな……」
「私達は――これ以上あの子を混乱させたくはないのです」
「だが、此処で言わなかったとしても失った記憶はいずれ思い出すだろ?」
本当に失った記憶がいずれ思い出すなんて確証も無い事を言い出す自身に驚きつつもロギアはマザーの次の言葉を待つ。
「……」
「怖いんですよ、私も貴方と同じ臆病者なんですよ。今でこそ大勢の者達に指示を出し、残酷な決断をした事も一度や二度何て数ではありません……内心は酷い物です。こんな事を訊いたらほとほと呆れ返るかも知れませんが――私もそんな事を耐え切るだなんて図太い神経は持ってません。旦那の死も娘の死も仕事を無理にでもしてその現実から何処か目を離していた所もあります。」
「無理をせざるを得ない……か」
マザーのこの思考にロギアは何処か自分と似た様な物を感じた。エゴだと言われてしまえばこっちとしても反論出来ず仕方ない事なのだが。
「ええ、そうですね……私にはそれしか出来ません。今更あの子を私の孫娘として接したい、そんな欲等――あの子の為を思えばこそ出す訳にはいかないのです――だからこそ、ありがとう。ロギア・オルバース……あの子、アリアを救ってくれて」
「……」
二人の間に沈黙が続いた。
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