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蠍ノ 丘

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田緻本 完爾(たちもと かんじ)

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 そんな話をしている内に田緻本 完爾(たちもと かんじ)の居る大きな日本屋敷へと辿り着いた。

「大きい……」アリアの口から声が漏れ、屋敷を見上げる。

 車から降り門衛をいている兵士に桐ケ谷尊信が用向きを伝えると、門兵は緊張を解き、無線で連絡を取ったのちそのまま中へと案内される。

「お役目ご苦労様です」
 桐ケ谷尊信が声をかけ門を潜り、そのまま屋敷には入らずロギア達は中庭へと通される。

「中庭?」

 アリアの頭にそんな疑問が浮かび首を傾げ桐ケ谷尊信へと顔を向ける。すると離れた所から勇ましい掛け声が聞こえた。

 見れば広い敷地で大勢の兵士が一人の指揮官っぽい男の号令に合わせ体力錬成を行っていた。統制が取れており、若干遅れている動きをしている者が二人程見える。そして度々その二人に激がとぶ。

 余りにも厳しく、見ているこちらがキツイ印象を受ける。

 アリア達がその光景から目を離さずに居ると、令を発していた指揮官っぽい男がこちらに気付き、「そのまま続けていろ」大勢の兵士に鋭く言い放つ。

 ピリピリした空気感が伝わりアリアも背筋が伸びる。

 そしてその男は兵達に背を向けこちらへとやって来た。

「ぅう……」
 端末通りの顔、鋭い眼光。アリアは若干眉間に皺が出来る。

「桐ケ谷尊信か、久しいな」

「お久しぶりです。田緻本さん」

 こうして正面に立たれるとその身体の大きさから感じる威圧感。

「この二人が例の?」

「はい、今回は顔合わせ、と言う事になります」

 「田緻本 完爾だ、此処マザーの管轄地域での兵士の鍛錬をしている者だ。色々と五月蠅いとは思うが生憎今は稽古の最中。そこは我慢して貰いたい」
 そう言った後じっくりと訪問して来た二人を眺める。

「ロギア・オルバースだ」

「あ、アリア・イェリネック・エンシェント……です」

 平然と返事を返すロギアとは違いアリアは慌てて気圧されない様言葉を発する。

 鋭い目付きを向けられるだけでアリアは少し腰が引いていたが、ロギアは淡々と答え男に目を合わせた。

「ほう……」
 田緻本 完爾は動じないロギアに感心しつつも、アリアを一目見てその表情が益々固くなる。

「……そうか、資料には目は通したが――――」

 田緻本 完爾の顔がアリアに固定される。

「な、なんです……か?」
 不安になりながらもそう質問すると田緻本 完爾の声のトーンが一瞬真剣な物へと変わり――――

「お前は……感染者だな、それも純粋に近い高濃度の」小声だがその台詞は二人が耳を疑う様に響き残った。

「「――――ッ!?」」

 田緻本 完爾の放った一言にアリア本人だけでなくロギアも凍り付く。

「確かに……何故そこまで汚染して症状が無いんだ? もしや――――」
 アリアとロギア、桐ケ谷尊信に聞くではなく、自問自答し何やら思索し始めた。

 ロギアは咄嗟にアリアの前に出て田緻本 完爾の目を見た。この男も橘 和倻(たちばな かずや)同様の異質な何かを感じとり、そこが異様な怖さを感じさせる。

 二人が田緻本 完爾を睨む光景にこちらの様子をチラチラと遠巻きに伺っていた兵士達も動揺し声を上げている。

「純粋に近いってどういう事ですか?」

「ぬぅ?」アリアのその問いに田緻本 完爾が顔を上げ目が細まる。

「初対面の相手に、流石に失礼じゃないか?」
 どの口が、脳裏に浮かんだ言葉を無視してロギアはアリアを庇う様に前へと進み田緻本の眼前へと迫る。

「失礼した、お前が怒るのも判る。だが此処がグリーンエリアである以上、私の反応は当然と言うべきではないのか? お前達二人の事は確かに書類には目を通した、理由も大体は把握している。しかし此処の安全を守る事こそ私の仕事だ。どんな些細な事でも警戒せねばならん」

「確かに……アンタの事情は分かる。だが俺達が聞きたい事が出来たのは確かだ」
 ロギアのその言葉にアリアも頷き前へと出る。

 二人の様子を伺い田緻本 完爾は後方で動揺している兵士達の方へと顔を向ける。

「死語は慎め。鍛錬に集中しろ」
 空気が震える程、厳しく言い放つとロギアとアリアの二人に視線を戻す。

「ここでは話しづらい、奥の部屋へ」
 田緻本 完爾は踵を返し歩き出す。

「……行こう」

「うん……」
 ロギアはアリアに寄り添う様に屋敷内へと向かう田緻本 完爾の後をついていく。

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