1 / 18
001
しおりを挟む
ネットで流行っている「口の動きだけで会話を返す口パクチャレンジ」を見たのは、ちょうどバスケットコートにいた時だった。
理光はユニフォーム姿で、全身汗に濡れながらドリブルをついてこちらに歩み寄ってくる。
そして、なんの遠慮もなく俺の身体に体重を預け、顔をぴたりと俺の頬に寄せて、携帯の画面を覗き込んだ。
「なに見てんの?」
熱を帯びた肌が妙に熱くて、思わず笑いながら彼を押し返そうとしたが、びくともしない。結局、そのまま受け入れるしかなかった。
「最近一番人気の口パクチャレンジ。面白そうだろ」
「どこが面白いんだよ」
理光はさらに顔を近づけ、吐息が首筋にかかる。くすぐったくて、思わず身を縮めた。
横目で彼を見やると、距離が近すぎて慌てて一歩退く。
「まあ、ちょっとは笑えるかな」
「ふん。お前の彼女より面白いか?」
その言葉に、思わず固まった。顔を向ければ、理光は眉を軽く上げ、物憂げにボールを地面に二度ほど弾ませていた。
「なんだよ? 兄貴に彼女ができたら、文句でもあるのか?」
理光は俺より二つ年下だ。俺は体調を崩して二年遅れたせいで、大学では同じ学年になった。
性格のせいか友達は少なかったから、まさか理光――学校一の人気者と親友になるなんて思ってもみなかった。
「俺に文句なんてあるわけないだろ。……文句あるのは、お前の彼女のほうじゃないのか?」
彼の声音は淡々として、どこか退屈そうに聞こえた。
正直、俺も困っていた。理光と愛子は、なぜか犬猿の仲で、俺と彼女が付き合い始めて半月――会うたびに火花を散らしてばかりだった。
愛子は言う。
『あんたってほんと鈍感! 今どきどこもかしこもゲイだらけなんだから、あの理光は絶対に企んでる!』
理光は言う。
『ふん、あの女の顔を見ればわかる。こいつを都合のいい男としか思ってない。』
俺はただ沈黙するしかなかった。
「愛子はまだ子どもだろ。お前が本気で相手する必要ないだろう」
そう言っても、理光は答えない。ただ気だるそうに後ろへもたれかかり、まるで世の中全部が面倒だと言わんばかりだった。
俺はため息をこぼす。
「……もう帰るか? 寮まで一緒に」
二人の関係をどうにかする方法を探さなきゃ――そんな思いを抱えたまま、理光と並んで歩いた。
彼はバッグを肩にかけ、バスケットボールを抱えながら、ふいに俺の横顔をじっと見つめ、足を止める。
「なあ、兄貴。俺、さっきのチャレンジ……急に面白そうに思えてきた。やってみない?」
「お前、さっきはつまんないって言ってただろ」
「今は面白い気がするんだ。……そうだな、相手は……お前の彼女にしようぜ」
「は?」
なんでそうなるんだ。若いって本当に気まぐれだな……。
だが、ふと思った。もしかすると、これが二人の関係を改善するきっかけになるかもしれない。
「……わかった、やってみるか。」
理光はユニフォーム姿で、全身汗に濡れながらドリブルをついてこちらに歩み寄ってくる。
そして、なんの遠慮もなく俺の身体に体重を預け、顔をぴたりと俺の頬に寄せて、携帯の画面を覗き込んだ。
「なに見てんの?」
熱を帯びた肌が妙に熱くて、思わず笑いながら彼を押し返そうとしたが、びくともしない。結局、そのまま受け入れるしかなかった。
「最近一番人気の口パクチャレンジ。面白そうだろ」
「どこが面白いんだよ」
理光はさらに顔を近づけ、吐息が首筋にかかる。くすぐったくて、思わず身を縮めた。
横目で彼を見やると、距離が近すぎて慌てて一歩退く。
「まあ、ちょっとは笑えるかな」
「ふん。お前の彼女より面白いか?」
その言葉に、思わず固まった。顔を向ければ、理光は眉を軽く上げ、物憂げにボールを地面に二度ほど弾ませていた。
「なんだよ? 兄貴に彼女ができたら、文句でもあるのか?」
理光は俺より二つ年下だ。俺は体調を崩して二年遅れたせいで、大学では同じ学年になった。
性格のせいか友達は少なかったから、まさか理光――学校一の人気者と親友になるなんて思ってもみなかった。
「俺に文句なんてあるわけないだろ。……文句あるのは、お前の彼女のほうじゃないのか?」
彼の声音は淡々として、どこか退屈そうに聞こえた。
正直、俺も困っていた。理光と愛子は、なぜか犬猿の仲で、俺と彼女が付き合い始めて半月――会うたびに火花を散らしてばかりだった。
愛子は言う。
『あんたってほんと鈍感! 今どきどこもかしこもゲイだらけなんだから、あの理光は絶対に企んでる!』
理光は言う。
『ふん、あの女の顔を見ればわかる。こいつを都合のいい男としか思ってない。』
俺はただ沈黙するしかなかった。
「愛子はまだ子どもだろ。お前が本気で相手する必要ないだろう」
そう言っても、理光は答えない。ただ気だるそうに後ろへもたれかかり、まるで世の中全部が面倒だと言わんばかりだった。
俺はため息をこぼす。
「……もう帰るか? 寮まで一緒に」
二人の関係をどうにかする方法を探さなきゃ――そんな思いを抱えたまま、理光と並んで歩いた。
彼はバッグを肩にかけ、バスケットボールを抱えながら、ふいに俺の横顔をじっと見つめ、足を止める。
「なあ、兄貴。俺、さっきのチャレンジ……急に面白そうに思えてきた。やってみない?」
「お前、さっきはつまんないって言ってただろ」
「今は面白い気がするんだ。……そうだな、相手は……お前の彼女にしようぜ」
「は?」
なんでそうなるんだ。若いって本当に気まぐれだな……。
だが、ふと思った。もしかすると、これが二人の関係を改善するきっかけになるかもしれない。
「……わかった、やってみるか。」
50
あなたにおすすめの小説
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。
或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。
自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい!
そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。
瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。
圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって……
̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶
【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ
番外編、牛歩更新です🙇♀️
※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。
少しですが百合要素があります。
☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました!
第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!
この僕が、いろんな人に詰め寄られまくって困ってます!〜まだ無自覚編〜
小屋瀬
BL
〜まだ無自覚編〜のあらすじ
アニメ・漫画ヲタクの主人公、薄井 凌(うすい りょう)と、幼なじみの金持ち息子の悠斗(ゆうと)、ストーカー気質の天才少年の遊佐(ゆさ)。そしていつもだるーんとしてる担任の幸崎(さいざき)teacher。
主にこれらのメンバーで構成される相関図激ヤバ案件のBL物語。
他にも天才遊佐の事が好きな科学者だったり、悠斗Loveの悠斗の実の兄だったりと個性豊かな人達が出てくるよ☆
〜自覚編〜 のあらすじ(書く予定)
アニメ・漫画をこよなく愛し、スポーツ万能、頭も良い、ヲタク男子&陽キャな主人公、薄井 凌(うすい りょう)には、とある悩みがある。
それは、何人かの同性の人たちに好意を寄せられていることに気づいてしまったからである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
【超重要】
☆まず、主人公が各キャラからの好意を自覚するまでの間、結構な文字数がかかると思います。(まぁ、「自覚する前」ということを踏まえて呼んでくだせぇ)
また、自覚した後、今まで通りの頻度で物語を書くかどうかは気分次第です。(だって書くの疲れるんだもん)
ですので、それでもいいよって方や、気長に待つよって方、どうぞどうぞ、読んでってくだせぇな!
(まぁ「長編」設定してますもん。)
・女性キャラが出てくることがありますが、主人公との恋愛には発展しません。
・突然そういうシーンが出てくることがあります。ご了承ください。
・気分にもよりますが、3日に1回は新しい話を更新します(3日以内に投稿されない場合もあります。まぁ、そこは善処します。(その時はまた近況ボード等でお知らせすると思います。))。
本気になった幼なじみがメロすぎます!
文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。
俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。
いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。
「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」
その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。
「忘れないでよ、今日のこと」
「唯くんは俺の隣しかだめだから」
「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」
俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。
俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。
「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」
そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……!
【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
幼なじみの友達に突然キスされました
光野凜
BL
『素直になれない、幼なじみの恋』
平凡な俺、浅野蒼にはイケメンでクラスの人気者な幼なじみ、佐伯瑛斗がいる。
家族ぐるみの付き合いのせいか、瑛斗は昔から距離感がおかしくて、何かと蒼にベッタリ。けれど、蒼はそれを“ただの友情”だと思っていた。
ある日、初めての告白に浮かれていると、瑛斗から突然キスされて......!?
「蒼のことが好きだ」
「お前が他の奴と付き合うのは耐えられない」
友達だと思っていた関係が一気に変わり、戸惑いながらも瑛人の一途で甘い想いに少しずつ心が揺れていく。
しかし、素直になれない蒼は最後の一歩が踏み出せずにいた。
そんなとき、ふたりの関係に”あるトラブル”が訪れて......。
じれったくて、思わず応援したくなるふたりのピュアな青春ラブストーリー。
「......蒼も、俺のこと好きになってよ」
「好きだ。好きだよ、蒼」
「俺は、蒼さえいればいい」
どんどん甘く、独占欲を隠さなくなる瑛斗に、戸惑いながらも心が揺れていく。
【一途で独占欲強めな攻め × 不器用で素直になれない受け】
坂木兄弟が家にやってきました。
風見鶏ーKazamidoriー
BL
父子家庭のマイホームに暮らす|鷹野《たかの》|楓《かえで》は家事をこなす高校生。ある日、父の再婚話が持ちあがり相手の家族とひとつ屋根のしたで生活することに、再婚相手には年の近い息子たちがいた。
ふてぶてしい兄弟に楓は手を焼きながら、しだいに惹かれていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる