ルームメイトが釣り系男子だった件について

perari

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俺って、仁野のことが好きなんだろうか?
今まで、一度もそんなことを考えたことがなかった。
自分の性癖についても、ちゃんと向き合ったことはない。
BL小説を書き始めたのだって、ただのルームメイトの何気ない一言がきっかけだったし、
自分自身に強いこだわりがあったわけでもない。
「お前の書いたやつ、読んだけどさ。本当に気持ちがこもってるよな、あれ」
なんか嫌な予感がする。
「……どの話のこと?」
「ほら、R-18のやつとか」
「……」
「認めろよ。お前、仁野のこと、好きなんだよ」
胸の中が、ずしんと沈む。
俺はぽつりとつぶやいた。
「じゃあ……仁野が俺を避けてるのって、俺が彼をモデルにしてたからじゃなくて……」
「俺の、いやらしい気持ちに気づいたから……それで嫌になったってことなのかな」
「それは……」
ふたりとも、言葉が出ない。
俺は思わず苦笑いした。
「はは、慰めようとしても無理だよな、さすがに」
西山が静かに言った。
「でも、もうここまで来たら、ちゃんと向き合った方がいいんじゃないか?」
「今さらだとしてもさ、今より悪くなることなんて、もう無いだろ」
そう、最悪はもう迎えた。
だったら、話すしかない。
「……うん、行ってくる。ちゃんと話してくるよ」
仁野を見つけたとき、彼は岩永と体育館横で話していた。
何を言ったのか知らないけど、岩永は鉄柵を拳で思い切り叩いていた。
怒りを露わにする岩永とは対照的に、仁野は淡々としていた。
「お前、俺のこと四回も振っといてさ。今度は何が理由だよ」
岩永の声が大きくなる。
仁野は冷静に言った。
「変わらないよ。好きじゃないだけ」
「じゃあ誰が好きなんだよ。あのヒョロガリで小説書いてるやつか?」
……誰がヒョロガリだ。
カチンときたけど、それより仁野の返答が気になって、つい近づいてしまった。
──ドンッ!
突然、排球が俺の頭に直撃した。
「大丈夫!?」
バレーをしていた同級生が駆け寄ってくる。
その声に反応したのか、岩永と仁野も振り返って、頭を押さえて立っている俺を見つけた。
岩永はすかさず皮肉っぽく言った。
「やるじゃん、お前。盗み聞きまでしに来るとはな」
俺はバツが悪くて、仁野をチラッと見る。
仁野は少し顔をこわばらせながら、それでも歩み寄ってきた。
「大丈夫?」
……その一言に、俺の中の何かが決壊した。
「痛い……」
と、わざとらしく苦しそうな表情をして、仁野の肩に頭をもたれかけた。
仁野は小さくため息をついて、少し体を寄せてくれた。
肩にちゃんと、俺の頭が乗っかった。
──この作戦、効いた……!
これまでのグリーンティー(緑茶婊)的展開、無駄じゃなかった……!
岩永は信じられないという顔で、俺を指さす。
「ちょ、仁野!? こいつ、演技してんだって!ただのバレーボールだぞ!鉛球じゃあるまいし!」
俺は彼に睨みを効かせる。
岩永がすかさず告げ口するように言う。
「ほら見ろよ、睨んだ!ね?今の見た?」
仁野が俺に目を落とす。
俺はすかさず、また痛そうな顔に戻す。
「ほんとに、痛いんだって……」
「保健室、行こうか」
そう言って、仁野は俺を支えて教師に説明した後、堂々と岩永の目の前で連れていってくれた。
──岩永、ざまぁ。
少し離れたところで、俺はようやく仁野の肩から頭を外した。
「仁野、やっと話してくれるんだね」
仁野は俺をちらりと見て、からかうように言った。
「……痛くないんだ?」
バレた。
「……うん、バレてたよね。いや、ちゃんと話がしたかっただけ」
彼は俺を軽く支える手を外し、立ち止まってくれた。
「仁野、ごめん。許可も取らずに君をモデルにあんな小説書いて、本当にごめん」
仁野はしばらく黙っていたが、ぽつりと聞いてきた。
「聡太、聞くけどさ……君、俺に近づいたのって、ほんとにネタ探しのためだったの?」
この数日、何度も自分に問いかけた。
そして、ようやく出した答え。
「……違う。全部が素材ってわけじゃなかった」
「俺、気づいたんだ」
「俺、君のことが……好きだ」
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